ID システムの設定
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- ID システムの設定について説明する。
- ID システム内の基本的な ID 種別を確認する。
- Marketing Cloud Personalization の設定方法を説明する。
ID システムの設定
たとえば、あるユーザーがメールで見た商品を確認するためにサイトを訪れたとします。また、その際にメール内のリンクをクリックせず、自分で Web サイトのアドレスをブラウザーに入力してアクセスしたとします。そのユーザーは特定の商品を閲覧しますが、メールアドレスを入力するなど、本人確認に使える情報は入力しませんでした。サイトを離れる前に、ポップアップウィンドウが表示され、情報の入力を求められたため、名前、名字、そして後ほど連絡を受けるための電話番号を入力しました。このような場合、Marketing Cloud Personalization はどのようにしてプロファイルを統合するのでしょうか?
Marketing Cloud Personalization では、ID システムを使用します。これは、複数のデータセットにわたって一意のユーザープロファイルを定義するための仕組みです。このプロファイルは、選択された属性の集合で構成されており、いずれかの属性によって個人を識別できるようになっています。使用する属性の例としては、メールアドレス、Salesforce Marketing Cloud のコンタクトキー、Salesforce CRM の取引先責任者 ID などがあります。もちろん、ほかにもいろいろあります。イベントやインタラクションが検出されると、ID 属性によって、それがどの新規または既存のユーザープロファイルに記録されるか、またはどのプロファイルがマージされるかが決定されます。
誰が ID を実装するのか
Identity Studio で ID にアクセスして設定できるのは、テナント管理者のみです。ID システムは、設定に必要な 2 つの機能フラグでも構成されます。ご利用のアカウントによっては、このモジュールで紹介しているオプションのいくつかが利用できません。その場合は、Marketing Cloud Personalization サポートに連絡して、問題を解決してください。
ETL (抽出、変換、読み込み) やサイトマップからのデータ収集を始める前に、ID システムを設定しておく必要があります。すでにデータを収集している場合や、従来の ID システムを使用している場合は、システムの設定前に追加で考慮すべき点があります。それらの設定に関する詳細は、Salesforce ヘルプ記事の「ID 種別の作成」と「User Identity Mapping (ユーザー ID のマッピング)」をご覧ください。
ID の計画
ディスカバリープロセスにおいては、ID を計画的に考えることが重要です。最初に考えるべきことは、どのチャネルを有効化するかという点です。たとえば、Web やメールでデータを収集して有効化したいのか、あるいはオフラインのインタラクションも取り込みたいのかを検討します。すべての ID チャネルをカバーしつつ、実際に意味のある ID を選択するようにしましょう。また、ID 同士のリレーションを理解しておくことも大切です。すべてのシステムで使用できる顧客 ID やメールアドレスがありますか? その顧客 ID に複数のメールアドレスが紐付いている可能性はありますか? 複数の ID 値を有効化することの影響を理解するために、ドキュメント内のマージロジックも確認しておく必要があります。
ID 属性を構成する要素は、一意性、大文字と小文字の区別、属性データ型の 3 つです。
一意性
これは、ID 属性に対して設定する重要な要素です。一意性には 2 つの状態があります。まず、「一意ではない」という状態です。これは、同じデータセットで複数のユーザープロファイルが同じ値を持つことを許容するという意味です。
「一意でない」属性を選択した場合、プロファイル統合の際には、その属性値は使用されません。たとえば、Web からイベントを受信し、その中に「一意でない」ID 属性が含まれていた場合、その属性値は、新しいプロファイルか既存のプロファイルかを判断する基準にはなりません。結果として、プロファイルは分離されたままになります。
一意性の設定は、プラットフォーム内で特定のプロファイルを検索するためにも利用できます。検索とプロファイル統合の両方をサポートしたい場合は、ID 名前空間値を一意に設定する必要があります。これは、データセット内でその値を持つユーザープロファイルが 1 件のみ存在できるという意味です。したがって、複数の人が同じ電話番号を使っている可能性がある場合は、その値を ID 名前空間値として設定すべきではありません。このような場合は「一意でない」を選択しますが、その代わりにプロファイル統合には使用できないことを理解しておきましょう。
一意に設定された ID 名前空間値は、Marketing Cloud Personalization プラットフォームでの検索や、プロファイルのマージで使用できます。
大文字と小文字の区別
この設定には 2 つの値があります。
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False の場合は、一致判定の際に大文字と小文字が一致している必要はありません。
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True の場合は、すべての文字の大文字と小文字が一致している場合のみ、検索や統合が行われます。
いずれの設定値でも、UI 上での検索およびプロファイルの検索や統合は可能です。
属性データ型
これは、[Attributes (属性)] 画面で設定します。ID 値としてサポートされている唯一の型は string (文字列) です。つまり、その属性に少なくとも 1 つの値が入っている必要があります。string を選択することで、UI での検索や、プロファイルの照合、マージができるようになります。
あらかじめ用意されている ID 種別
ID システムには、あらかじめ設定された ID 種別が用意されています。これらの属性は頻繁に使用され、ベストプラクティスに基づいて設定されています。以下の ID 種別は標準で利用できます。
- メールアドレス
- Salesforce Marketing Cloud のコンタクトキー
- Salesforce CRM のリード ID
- Salesforce CRM の取引先責任者 ID
- 顧客 ID
これらの ID 種別を正しく使用するには、属性画面でこれらを属性として紐付ける必要があります。データセットにこれらの定義が存在しない場合は、Marketing Cloud Personalization サポートチームに連絡してください。また、ベストプラクティスとして、あらかじめ用意された ID 種別を使用している場合は、独自の種別を新たに作成しないことが強く推奨されます。
ID の設定
Marketing Cloud Personalization にログインしたら、ID の設定を完了するために設定すべき画面と設定項目がいくつかあります。最初のステップは、[Identity Type (ID 種別)] ページの設定です。このページにアクセスするには、[Settings (設定)] の下にある [Account Setup (アカウントの設定)] までスクロールし、[Identity Type (ID 種別)] を選択します。この画面には、顧客 ID (Customer ID)、メールアドレス (Email Address)、Salesforce CRM の取引先責任者 ID (Contact ID)、Salesforce CRM のリード ID (Lead ID)、Salesforce Marketing Cloud のコンタクトキー (Contact Key) という 5 つのあらかじめ用意されている ID が表示されます。これらはすでに、ID 名前空間としての検索およびマージをサポートするための「一意性」設定や、ベストプラクティスに基づいた大文字小文字の区別が設定された状態になっています。追加の ID 種別が必要な場合は、Salesforce ヘルプ記事の「ID 種別の作成」を参照してください。
この [Identity Type (ID 種別)] 画面で一度保存した行を後から編集することはできませんので注意してください。そのため、画面を設定する前に、ID ソリューション全体を定義しておくのがベストプラクティスです。
必要な ID 種別が揃ったら、それぞれの ID 種別を対応するユーザー属性に紐付けます。この作業は、[Settings (設定)] で [Attributes (属性)] をクリックして行います。新規アカウントでは、5 つの標準属性のうち、顧客 ID (Customer ID)、メールアドレス (Email Address)、Salesforce Marketing Cloud のコンタクトキー (Contact Key) の 3 つがすでに設定され、ID 種別に紐付けられています。ほかのデフォルト ID を使用する場合は、新しい値を作成するのと同じように、ID 内で属性を作成する必要があります。
選択されているデフォルト値については、ID 種別の紐付けを解除することもできます。単にその属性を選択して編集し、ID 種別を削除するだけです。ただし、この設定を変更すると、その属性は読み取り不可となり、顧客 ID (Customer ID) などのデフォルト値に再び紐付けることもできなくなります。そのデフォルトの ID を使用しない予定であれば、その ID 種別を削除するか、顧客 ID を属性としてプラットフォームに送信せずに、その ID 種別を使用しないという選択もできます。
クライアント固有の ID 種別を属性として追加するには、次の手順を実行します。
-
[Add New Attribute (新しい属性を追加)] をクリックします。
- 属性に名前を付けます。
- 事前設定されたラベルを追加します。
- 唯一サポートされる型である [String (文字列)] を選択します。
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[Classification Value (分類値)] を選択します。
- 適切な ID 種別に紐付けます。
[Identity Type (ID 種別)] 画面を設定し、属性との紐付けを完了すれば、ID の設定は完了です。ただし、特定のチャネルで ID システムを正常に活用するには、いくつかの設定を理解してから処理しておく必要があります。まずは、Web でのトラッキングと有効化を行うために、いくつかの設定が必要です。
ID システムの設定
- メインナビゲーションから [Settings (設定)] を選択し、次に [General Setup (一般設定)] を選択します。
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[Advanced Options (詳細オプション)] を選択して展開します。
- [Web SDK Identity (Web SDK ID)] ドロップダウンから、ID 属性を選択します。メモ: 事前設定済みの [Customer ID (顧客 ID)] オプションを使用することもできますし、修正して別の値を選択することもできます。ここでは、マージに使用する主要な [webID] も選択します。
- ID 属性を選択したら [Save (保存)] をクリックします。
Web イベントで使用可能であれば、ほかの ID も検索と統合の対象として考慮されます。これには、プライマリ ID と、あなたが選択した値の両方が含まれ、サイトマップの設定方法に影響します。ID 属性を選択したら [Save (保存)] をクリックします。
どのサイトマップが選択されるかについては、プライマリ Web ID に何を選んだかによって左右されます。その選択に基づいて、さらに考慮すべき点もあります。デフォルトとして選択した ID を、サイトマップ内の名前付き項目にユーザー ID として送信するように設定する必要があります。Web 上で取得したほかの ID 種別も引き続き送信可能であり、user.attributes
として記録されます。つまり、ID システムを Web で使用する予定がある場合は、まずデフォルトの Web ID を設定し、その後、それらの値を取得できるようにサイトマップを適切に更新する必要があります。
ETL (抽出、変換、読み込み)
ID システムを ETL (抽出、変換、読み込み) で使用する予定がある場合、プラットフォームでは追加の設定は必要ありません。ETL の形式や構成は、ID システムに対応するように設計されています。ID を設定するための見出しや列は、attribute:identity name
の形式で記述する必要があります。これはユーザー向けのあらゆるフィードでも有効です。
複数のヘッダーを含めることも可能で、たとえばメールアドレスと顧客 ID の両方を送信する場合は、列の形式を attribute: customer ID
および attribute: email address
のように設定します。ID システムは、これらの列を自然に受け入れて照合に使用し、そのレコードが既存のプロファイルに結び付けられるべきか、新規プロファイルとして登録されるべきかを判断します。
開封時間メールの ID 属性
各顧客の統合カスタマープロファイルを作成するには、Personalization の ID システムを使用して、開封時間メールキャンペーンで使用する識別子を設定します。ID システムで開封時間メールを使用する予定がある場合は、追加の設定が必要です。
開封時間メールの ID 解決を設定するには、以下の手順を実行します。
- メインナビゲーションから [Settings (設定)] を選択し、次に [General Setup (一般設定)] を選択します。
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[Open Time Email Campaigns - Enable Identity Resolution (開封時間メールキャンペーン - ID 解決を有効化)] では、デフォルトで [email address (メールアドレス)] が選択されています。この値をそのまま使用することも、Marketing Cloud Personalization と ESP の間で照合キーとして別の値を選択することもできます。メモ: Marketing Cloud Personalization では、照合キーとして使用できる ID は 1 つだけです。たとえば、開封時間メールブロック内のコンテンツを決定するために、受信トレイにメールが配信された際に表示される開封時間メールのコードは、ESP および Marketing Cloud Personalization の両方でメールアドレスを検索するために使用されます。
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[Open Time Email Campaigns (開封時間メールキャンペーン)] のチェックボックスを選択します。このオプションでは、メールのユーザー ID タグと ESP 側のユーザー ID タグを指定できます。この設定により、トークンが HTML ブロック内に自動的に設定され、ブロック内に追加できるようになります。
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[Save (保存)] をクリックします。
イベントが割り当てられるプロファイル
ID システムは、任意の ID 属性の値に一致するすべてのユーザープロファイルを検索します。この際には、ID 名前空間が一意に設定されている ID 属性のみが対象となります。該当するプロファイルがマージされ、イベントはその統合されたプロファイルに記録されます。
マージロジック
イベントを受信すると、複数の既存ユーザーが 1 人のユーザーにマージされることがあります。たとえば、ユーザープロファイルがマージされると、最新の更新日を持つプロファイルに古いプロファイルがマージされます。このプロファイルには、すべてのイベント、トランザクション、インタラクションがマージされます。
属性 (ID 属性を含む) は、次のロジックに従って調整されます。
- ある属性が 1 つのユーザーにしか存在しない場合は、その属性が保持され、マージ先のユーザーに適用されます。
- 1 つの属性が複数のユーザーに存在する場合は、メタデータ内で最も新しいタイムスタンプを持つ属性が選択されます (Gear API で指定可能)。
- メタデータが存在しない、またはタイムスタンプが含まれていない場合は、属性そのものの最終更新タイムスタンプが最も新しいものが選択されます (これはプラットフォームによって制御されます)。
ID に関する考慮事項
ID については、以下の点に注意してください。
- 検索やマージに使用できるのは、一意の ID のみです。
- 既定の属性としてすでに存在しているものと同じカスタム ID 属性を作成しないでください。
- ID 属性は文字列 (string) 型の値のみ使用可能です。
- プライマリのメールアドレスとセカンダリのメールアドレスを組み合わせて検索したり、電話番号属性とメールアドレス属性を送信したりといった、複数の属性を組み合わせて 1 つの ID 属性を構成することはサポートされていません。メールアドレスとハッシュ化されたメールのように、相互に結び付いた 2 つの属性を保存しないでください。
- マージ時に不整合が発生する可能性があります。
メモ: 一度設定した ID 属性は、後から変更できないことを忘れないでください。特に理由がない限り、ID を追跡しないようにしましょう。また、ハッシュ化されたメールと通常のメールアドレスのように、相互に紐付く属性を保存しないでください。
これで、ID の設定、計画、ETL について理解できました。次はセグメント戦略を考えていきましょう。