クラウドソーシングを利用した製品企画を理解する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 製品マネージャーの役割について説明する。
- Salesforce の製品計画プロセスについて説明する。
- 製品マネージャーが製品ロードマップを確定するために使用するクラウドソーシングやその他の意見の収集法について説明する。
優れたアイデアが優れたエクスペリエンスを生み出す
Jose Figueroa は、高級なカスタムスニーカーを扱う Cloud Kicks の営業マネージャーです。統括する営業担当チームの育成に熱心に取り組み、担当者が何かを達成すればその成功を称賛します。月に一度、新規商談を成立させたチームメンバーの活躍を称える時間を設けています。そんな中、メンバーが商談を成立させたそのときに称賛することはできないかと考え、あるアイデアを思い付きました。
Jose は Salesforce システム管理者である Linda に、Salesforce をカスタマイズして、営業担当が商談を「成立」に変更したときにハイタッチの画像が表示されるようにすることが可能かどうか尋ねました。Linda は、こうした称賛のやり方を簡単に実行する方法は思い付かないものの、素晴らしいアイデアだと考えます。そしてふと、Salesforce の他のお客様も名案と思うかどうかに関心を抱きます。Jose の代わりに自身で行うこともできたのですが、Linda は敢えて Jose に Salesforce IdeaExchange にこのアイデアを投稿し、他の Trailblazer や Salesforce 製品マネージャーがどのように反応するか見てみてはどうかと提案します。
どのアイデアを Salesforce 製品に採用するかは誰が決めるのか?
簡単に言うと、Salesforce 製品の方向性を決めるのはあなたです! ここでその方法について説明しますが、Salesforce で最終的な判断を下すのは誰かと言えば、製品マネージャーなど Salesforce の指定された従業員が決定します。
Salesforce 製品マネージャーの職務は Salesforce 製品を継続的に改良して進化させることで、その結果、お客様がプラットフォームを最大限に活用し、さらにはそのユーザーや顧客に満足してもらうことができます。製品チームは年間を通して Salesforce エクスペリエンスを刷新して向上させています。Salesforce 製品の大半は、年に 3 回新機能のバンドルがリリースされます。この 3 回のリリースは、北半球の対応する季節に合わせて Winter、Spring、Summer と呼ばれています。製品マネージャーは常に 3 回分のリリースを対象に、次の業務を行っています。
- 最新リリース (ここでは Winter とします) の機能に関する情報を伝える。
- ユーザーエクスペリエンスチームやエンジニアリングチームと協力して、次回のリリース (Spring) の機能を開発する。
- 次々回のリリース (Summer) に含める内容を計画する。
次から次へと作業をこなし、息つく暇もありません。
製品マネージャーは幅広い意見を検討したうえで、お客様のニーズを満たし、現在の性能を改善する画期的な機能を選び出します。対象のリリースに含める機能を選ぶときは、次の情報を考慮します。
- Salesforce の調査チームが収集したお客様のインサイト
- 製品の使用状況データ
- Salesforce カスタマーサクセスグループのフィードバック
- リーダーシップが定めた戦略的優先事項
- 技術的な実現可能性
- 競合製品に関する調査
製品マネージャーはリリースの計画を開始する時点で、あらゆる方面から得た意見に共通するテーマを見極めます。最初に製品の計画 (またはロードマップ) を定義して改良していきます。重視する点に優先順位を付けるときは、信頼とお客様の成功という Salesforce の上位 2 つのバリューを考慮します。
最優先されるのは、プラットフォームのセキュリティ、レジリエンス、可用性を確保する機能です。その次に、お客様の成功を実現する機能が続きます。膨大な意見やお客様が存在する中で、価値や使用頻度が最大となる機能を製品マネージャーはどのように判断するのでしょうか?
クラウドソーシング
夕食の席に着いた途端に電話が鳴ったとします。勧誘電話でしょうか? Salesforce 製品マネージャーからでした。製品に関するアイデアについてあなたの考えを聞きたいとのことです。感想を求められるのはありがたいことですが、このやり方には違和感を覚えるものと思われます。
第一に、夕食中の電話は好ましいものではありません。第二に、何十万ものお客様がいる中で、製品マネージャーがその 1 人ひとりに意見を聞くことは不可能です。Salesforce では製品マネージャーに、電話にかかりきりになるのではなく、機能の向上に取り組んでもらいたいと考えています。さらに、電話の会話は通話している 2 人の当事者にしか共有されません。第三者が参加して「名案ですね!」と賛同することがありません。
IdeaExchange を使用すれば、誰もが自在にアイデアを投稿や共有できるため、Salesforce 製品マネージャーがコミュニティの大勢からフィードバックを得ることができます。このしくみによって次のことが可能になります。
- コミュニティメンバーが他者のアイデアを膨らませたり、ユースケースを紹介したりする。
- アイデアが明瞭でない場合や、数通りに解釈される可能性がある場合に、コミュニティメンバーや Salesforce 製品マネージャーが元の投稿者にわかりやすく説明するよう求める。
- ポップコーン効果を期待できる。最初のうちはコーンの粒がなかなか弾けません。けれども、2 ~ 3 粒が弾けると、次々と弾け出し、気が付けばボール一杯のポップコーンが出来上がっています。アイデアもこのように作用します。公開されたアイデアに触発された人がさらなるアイデアを出し、次々とアイデアが生み出されます。最初の投稿を基盤に幅広い視点のアイデアが構築され、最終的に包括的なアイデアになることが少なくありません。
- コミュニティメンバーがプラス投票でアイデアへの支持を表明する。他のコミュニティメンバーや Salesforce 製品マネージャーは、この投票結果を基にどのアイデアによってコミュニティ全体に最大の価値がもたらされる可能性があるかを把握します。
- 優先度を付ける。各リリースサイクルの 2 週間は、コミュニティが [Prioritization (優先度設定)] に掲載されているアイデアのうち、気に入ったものに仮想コインを付与できます。この結果から、製品マネージャーがコミュニティにとって最も重要なのはどのアイデアかを把握し、製品ロードマップにどのアイデアを追加するか決定できるようになります。
何千ものお客様からアイデアを得たら、製品マネージャーは続いてコミュニティからの支持が最大であるアイデアを見極めることに取り組みます。IdeaExchange は、Salesforce のいつでも利用できるフィードバック (クラウドソーシング) プラットフォームです。
コミュニティの反応を見る
Jose は Linda のアドバイスに従って自身のアイデアを共有し、他の人々も名案と思うかどうか確認することにします。IdeaExchange にアクセスし、そこに表示されている内容に目を通します。