メドテック向けの Life Sciences Cloud の概要を学ぶ
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- メドテック企業が直面している課題について説明する。
- メドテック向けの Life Sciences Cloud を使用するメリットを挙げる。
- Life Sciences Cloud のメドテック企業向けの主なコンポーネントを挙げる。
メドテックの営業上の課題
Evan Nguyen をご紹介します。Evan は Vance Laboratories というメドテック企業に勤める営業担当です。Vance Laboratories では特に、末梢静脈にアクセスしにくい患者や、化学療法などの治療のために静脈に頻繁にアクセスする必要がある患者に使用する埋め込み型の血管アクセス装置を扱っています。Evan は、医療機器を病院、診療所、老人ホーム、外科センターなどのヘルスケア提供者や医療機関に販売しています。Evan の職務は次のとおりです。
- Vance Laboratories とヘルスケア提供者の橋渡し役となり、Vance Laboratories の販売注文が確実に履行されるようにする。
- Vance Laboratories の商品を医師、医療機関の経営陣、その他の医療スタッフに紹介する。
- 医師や臨床スタッフに商品の特徴、メリット、安全性プロファイル、認可された薬剤についてきちんと説明し、患者に適切に使用されるようにする。
- 手術や処置が行われるときに、車載在庫の Vance Laboratories 商品をヘルスケア提供者の拠点に届ける。
従来より、ステントやリード線の不具合などの欠陥商品があると、Evan のような営業担当にサポートコールがかかってきます。連絡を受けた営業担当はテリトリー内にいる他の担当者に連絡して、すぐに商品を交換しに行けるかどうかを確認します。機器が故障した場合には、商品に関する苦情を記録するか、ヘルスケア提供者に適切な解決策を伝えます。
Evan は商品の循環棚卸でも定期的にお客様をサポートしています。お客様の多くは、手作業の在庫追跡プロセスに頼っています。手計算で数えているため、数え違いなどのミスが生じやすくなっています。複数の拠点の在庫数を正確に管理する場合、次のような課題に直面します。
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車載在庫を把握しきれていない。Evan の在庫は車内と自宅の両方に保管されています。車載在庫の認識が不正確であったり、認識していないことが少なくありません。
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流通センターの在庫状況がよくわからない。Evan は手元にある商品を把握している必要がありますが、適切な商品を遅滞なく届けるためには、生産不足に陥った場合に備えて同僚が抱えている在庫も認識している必要があります。
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委託した商品数が不明である。病院の在庫数は通常お客様が管理します。そのため、Evan がお客様に病院の在庫数を確認しなければなりません。
メドテックの在庫管理の課題
StayHealthy 病院の最高医療責任者である Kathryn Choi をご紹介します。Kathryn の責務の 1 つは、心臓外科用装置の供給、品質、付随コストを適切なレベルに維持することです。
Kathryn は医療機器の在庫によって病院のコストが押し上げられていると感じています。そのため、在庫プロセスを合理化してコストを削減する新たな在庫管理手法を模索しています。具体的には、在庫量を日頃から管理して、商品の期限切れと不足の両方を回避したいと考えています。重視している領域は次のとおりです。
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データに基づく販売業務の推進: テクノロジーが進化し続ける中、Kathryn は Life Sciences Cloud のデータ駆動型ツールを利用して、業務やケア実務を改善し、収益の取りこぼしを最小限に抑えたいと考えています。Kathryn が目指しているのは、組織がデータを効率的に統合して保存できるようにすることです。こうした取り組みにより、医師、そして StayHealthy の患者に対するエンゲージメントが向上すると考えています。Life Sciences Cloud では、費用対効果が高い高質のソリューションに関する高度にカスタマイズされた適切な推奨事項が適宜提示されます。つまり、適切なソリューションによって適切な成果がもたらされます。
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バーチャルと対面のエンゲージ: メドテックは最近まで顧客に直接対応する業界でした。現在では、Kathryn の病院スタッフとメドテックの営業担当のエンゲージメントはバーチャルやハイブリッドが主流になっています。
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患者ジャーニー全体に対応: 治療中心のエクスペリエンスから、予防、ウェルネス、診断、検出を重視するエクスペリエンスにシフトしています。こうした変化には、連続的なケアにおける患者中心のアプローチを目指すヘルスケア全般の動向が表れています。包括的な取り組みの焦点は、患者ジャーニー全体をサポートする商品やサービスを提供することです。
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テクノロジー格差の解消: メドテック組織でもようやくデータとテクノロジーが理論から実践に移りつつあります。他方、ヘルスケア業界全体では、データや最新テクノロジーの実用化に向けた取り組みが続けられています。テクノロジーとデジタル化を駆使してプロセスを簡素化して自動化すれば、適切なケアが適宜実施され、患者に適切な成果がもたらされます。
Evan と Kathryn のどちらのロールにも特定の課題があり、Life Sciences Cloud はその両方に対処します!
Life Sciences Cloud のメドテック企業向けの機能
メドテック企業は Life Sciences Cloud を使用して、販売業務を効率的に管理し、医療機関との関係をパーソナライズして、チーム間のつながりを促進できます。また、フロントオフィス、ミドルオフィス、バックオフィスの業務がシームレスに結び付けられます。Life Sciences Cloud を使用すれば、メドテックの営業チームが各医療提供者の所属、専門、資格などの詳細を示す 360 度ビューを確認できます。企業は、医療提供者とのやり取りをパーソナライズして、効果的にエンゲージできます。
Life Sciences Cloud を使用するメドテック企業には次のようなメリットがあります。
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営業チームのエンゲージメントを強化する: 適切なデータを一元管理して、プロセスを標準化し、タスクを自動化して、任意のデバイスにインサイトを表示します。
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適切な商品をすぐさま届ける: 商品の在庫切れ、期限切れ、不足を防ぎます。患者に届ける医療機器に遅延が発生しないようにします。
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戦略的なインサイトを計画する: 各ビジネスユニットの情報を 1 つのビューにまとめ、新規商談、ランレートパフォーマンス、現場の在庫に関するリアルタイムの差異分析を実施します。
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ケア前後の患者とのつながりを改善する: 患者の転帰の向上、患者のエンゲージメントの促進、運用コストの削減を目的とする患者プログラムを構築して拡張します。
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モノのインターネット (IoT) テクノロジーを使用してコネクテッド型資産を向上させる: 医療機器メーカーや病院がサプライチェーン全体のリアルタイムの情報を把握できるようにします。
インテリジェントなセールスを使用した収益管理
メドテック企業がインテリジェントなセールスを使用すれば、収益の拡大、コストの削減、業務効率の促進を実現できます。メドテックの営業担当は Life Sciences Cloud を使用して担当商品の数量管理や予測を行い、価格契約を取り決めます。営業チームはインテリジェントなセールスで次の収益管理ソリューションを活用できます。
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リード-to-キャッシュの収益管理: メドテック企業が契約処理や収益管理のソリューションを使用できます。Life Sciences Cloud に商談がある場合、営業担当は、設定、価格、見積、契約、リベート管理など、これまで手作業で行っていた多数のプロセスを合理化して自動化することができます。
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インテリジェントな販売計画と予測: ビジネスや営業担当が商品、価格、割引、数量に対するインサイトを活用できます。こうしたインサイトは、一定期間における商品の価格や数量に同意したお客様の契約に基づきます。営業担当が成果を上げるために活用できる Life Sciences Cloud のもう 1 つのツールが取引先販売予測です。売上予測では、注文、商談、販売計画、契約、カスタム指標に基づいて新規ビジネスやランレートビジネスを明確に把握できます。
インテリジェントなセールスを使用した在庫管理と循環棚卸
インテリジェントなセールスでは、営業チームが循環棚卸や現場在庫管理などのソリューションを利用できます。
循環棚卸
循環棚卸は、メドテック企業の在庫管理プロセスの重要な部分です。この在庫監査方法では、実際の在庫とシステム記録の不一致を特定して修正することができます。
メドテック組織は、高価値品目に一意のシリアル番号を付けて在庫をシリアル管理します。心臓ペースメーカーのような植え込み型装置は、正確性、安全性、コンプライアンスを目的にシリアル管理して追跡できるようにします。Life Sciences Cloud には次のようなソリューションが搭載されています。
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在庫循環棚卸の設定と割り当て: 特定の在庫場所の循環棚卸を特定の営業担当に割り当てます。循環棚卸の対象となる商品を選択します。
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リアルタイムの在庫確認: 商品の委託、不足、期限切れ、購入、車載在庫など、現場の在庫を可視化します。
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業務効率の促進: フローを自動化し、手作業の処理に費やす時間を短縮します。循環棚卸で不一致が検出された場合に、営業担当がリアルタイムで実行できるアクションをメドテック企業が定義できます。たとえば、商品がない場合に紛失とマークすることができます。
現場在庫管理
現場在庫管理があれば、メドテック企業とサプライヤーが倉庫や現場の非効率性を緩和できます。プロセスの自動化によって在庫が完全に可視化され、正確性が高まります。この結果、過剰在庫が減り、期限切れの商品が病院の商品棚から適時撤去されるため、適切な商品をすぐに見つけることができます。
Life Sciences Cloud には在庫管理を向上させる次のソリューションが搭載されています。
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不足数の計算: インバウンド供給と今後の訪問需要を考慮して、現在と将来の不足数が算出されます。
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簡単な注文と注文転送の実装: 補充依頼や移送依頼の作成、承認ワークフローの管理、注文の受領 (一部受領を含む) を実行できます。Life Sciences Cloud のモバイルアプリケーションでは一元管理とエンティティ間の迅速な移送が可能なため、注文の遅延が解消されます。特に医療上の緊急事態では、担当者、医師、病院が 1 つのインターフェースで在庫を移送できることが極めて重要です。
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在庫のシリアル管理と循環棚卸の開始: 簡単にスケジュールして実行できる循環棚卸システムを利用します。また、Evan はモバイルアプリケーションのバーコードスキャンを使用して、注文の追跡に使用するシリアル番号を追加できます。Life Sciences Cloud では、メドテック企業が商品、潜在的な危険、有害事象、商品の有効期限に関する正確な記録を維持できます。シリアル管理された在庫と IoT 番号を追跡して、品質に関する内部規定や連邦政府の規制に準拠します。
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商品の安全性の管理: 期限切れの商品やリコールした商品に関する分析とインサイトを構築します。組織はこうしたインサイトに基づいて特定の業務プロセスを構築できます。たとえば、メドテック企業が期限切れの商品を別の場所に移す新規プロセスを構築することが考えられます。こうしたプロセスによって無駄が減り、商品の回収が促進され、患者の安全性の向上につながります。
上記は Life Sciences Cloud に搭載されているソリューションの数例に過ぎません。メドテック企業が Life Sciences Cloud を活用する方法は他にもたくさんあります。Life Sciences Cloud の主なコンポーネントがわかったところで、Life Sciences Cloud を使用して業務を遂行する人々について詳しく見ていきましょう。
リソース