ヘルスデータモデルの社会的決定要因を見極める
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 健康の社会的決定要因データモデルの利用目的を説明する。
- ケア決定要因のオブジェクトを説明する。
- ケア障壁のオブジェクトを説明する。
- ケア介入のオブジェクトを説明する。
健康の社会的決定要因データモデル
健康の社会的決定要因 (SDOH) とは、患者またはメンバーのウェルネスの障壁となり得る重要な社会的要因や環境的要因です。社会的決定要因データモデルでは、患者の物理的環境と社会経済的状態を把握することで、こういった要因を大局的に捉えることができます。そのため、ケア障壁に対処する介入 ToDo を特定して、健康改善の取り組む患者やメンバーが挫折しないようにサポートすることが可能になります。
SDOH の例としてよく挙げられるのは、食料不安です。患者やメンバーが毎日十分な数の食事やおやつを取らなかったり、食事の質が悪かったりすると、救急外来の受診率が平均より高くなる可能性があります。介入とは、食品のデビットカード、フードバンク、食糧配給サービス、直売所、補助金付きの食事プログラムを通じて、手頃な価格の栄養価の高い食品を入手できるようにすることです。
また、もう 1 つの例として、この単元で説明する交通手段の欠如もよく挙げられます。
Charles Green が疼痛マネジメントケアプログラムに登録すると、プログラムチームは、健康転帰に影響を与える潜在的なリスクや課題に積極的にプロアクティブに取り組むために Charles にアンケートを送信します。
アンケートの質問では、Charles の交通手段の有無について尋ねられます。患者は、薬局になかなか薬を取りに行けない場合や、重要な施術を受けるために予約時間に通院することが困難な場合があるため、交通手段の有無は健康の社会的決定要因となります。そのため、交通手段の欠如がこの決定要因に対するケア障壁です。
Charles は「車を所有しておらず、決められた日時に処方薬を取りに行くことができない」と回答します。
ケアプログラムチームは、Charles の交通手段の問題に対処するためにケースを登録します。このケースを解決するためにチームが行う ToDo は、Charles の医療保険の支払者である Bloomington Health Plans の給付対象になる交通サービスを見つけることです。
まず、ケア決定要因を表すオブジェクトから見ていきましょう。
ケア決定要因
交通手段は健康の社会的決定要因と考えられます。
オブジェクトとレコードの概要を次に示します。
シナリオの詳細 | オブジェクトとレコードの詳細 |
---|---|
交通手段が健康の社会的決定要因である。 |
ケア決定要因 (1) は、患者の健康の社会的決定要因 (安全な住居、十分な雇用、交通手段、地域の食品市場があるかどうかなど) を表します。 ケア決定要因レコードは、患者レコード (2) とケア決定要因種別レコード (3) を参照します。 |
交通手段がケア決定要因種別である。 |
ケア決定要因種別 (3) は、組織が保持する標準的な定義済みの決定要素のライブラリを表します。たとえば、定義済みのケア決定要因には [収入] と [住宅] があります。 |
次に、ケア障壁を表すオブジェクトを確認しましょう。
ケア障壁
Charles は車を所有しておらず、決められた日時に薬局に処方薬を取りに行くことができません。(もちろん、薬局が処方薬を郵送することもできますが、この例では、Charles の置かれた状況ではこれが不可能であるとします。また、このシナリオでは配送先住所の欠如もケア障害になる可能性があります。)
オブジェクトとレコードの概要を次に示します。
シナリオの詳細 | オブジェクトとレコードの詳細 |
---|---|
Charles は車を所有しておらず、決められた日時に処方薬を取りに行くことができない。 |
ケア障壁 (1) は、住居、雇用、交通手段、食料入手手段がないことなど、患者やメンバーに影響を与える状況や障害を表します。 ケア障壁レコードは、患者レコード (2) とケア障壁種別レコード (3) を参照します。 |
交通手段の欠如がケア障壁種別である。 |
ケア障壁種別 (3) は、組織が保持する標準的な定義済みの障壁のライブラリを表します。たとえば、定義済みのケア障壁には [低所得] と [Lack of Housing (住宅の不足)] があります。 |
交通手段の欠如が交通手段という決定要因に対するケア障壁と考えられる。 |
ケア障壁決定要因 (4) は、ケア決定要因 (5) に対するケア障壁 (1) のリレーションを表します。たとえば、患者に交通手段がないことは、[Transportation (交通手段)] ケア決定要因に関連するケア障壁です。 ケア障壁決定要因レコードは、ケア決定要因レコードとケア障壁レコードを参照します。 |
最後に、ケア介入を表すオブジェクトを確認しましょう。
ケア介入
ケアプログラムチームは、Charles の交通手段の問題に対処するためにケースを登録します。このケースを解決するためにチームが行う ToDo は、交通サービスを見つけることです。
オブジェクトの概要を次に示します。
シナリオの詳細 | オブジェクトとレコードの詳細 |
---|---|
チームは、Charles の医療保険支払者である Bloomington Health Plans の給付対象になる交通サービスを見つける必要がある。 |
ToDo (1) はケースの障壁を解決するためのチームが行う取り組みを表します。 ToDo レコードは、患者レコード (2)、ケア介入種別レコード (3)、ケースレコード (4)、ケア障壁レコード (5) を参照します。 |
交通手段を見つけることがケア介入種別である。 |
ケア介入種別 (3) は、組織が保持する介入の定義済みの標準リストを表します。たとえば、[Find Transportation (交通手段を見つける)] は [Lack of transportation (交通手段の欠如)] ケア障壁の介入種別です。 |
Charles の交通手段の問題に対処するために、Good Health Pharma のケアプログラムチームがケースを登録する。 |
ケース (4) は患者の懸案事項や問題を表します。 |
ケアプログラムチームが交通手段を見つけることにより、Charles は交通手段の障壁を克服し、健康改善に向けたジャーニーを歩めるようになります。
この単元で紹介したオブジェクトについての詳細は、『Salesforce Health Cloud 開発者ガイド』を参照してください。
次の単元では、提供者データモデルを使用して、メンバー、患者、組織が適切なネットワークの適切な提供者を見つけられるようにする方法について説明します。