グリーンコードで二酸化炭素の排出量を削減
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- ICT セクターが温室効果ガス排出に与える影響について説明する。
- グリーンコードが世界のネットゼロ達成への道のりをどのように加速できるかを理解する。
- グリーンコードのベストプラクティスに関するさらなる参考資料を特定する。
デジタル化が環境に与える影響
デジタル化は社会を大きく改善しましたが、同時に地球温暖化の原因にもなっています。情報通信技術 (ICT) セクターを含め、テクノロジー業界は、温室効果ガス排出量の相当な部分を占めています。このセクターは世界の温室効果ガス排出量の最大 3.9% を占めていると推定されており、航空および海運セクターの排出量を上回っています。しかも、このままのペースで業界が成長を続けた場合、2040 年までには IT セクターが世界の二酸化炭素排出量の 14% を占めることになるという事実です。
主な懸念は、電力に依存して業務を行っているデータセンターにあります。データセンターの場所や操業する時間帯によっては、化石燃料をベースとする資源から電力を調達することが多く、その結果、地球温暖化につながる二酸化炭素排出が発生するのです。人工知能 (AI) やビッグデータソリューションなどのデジタル技術が成長を続ける中、データセンターのエネルギー消費量、そして二酸化炭素排出量が大きな懸念事項となっています。私たちは直ちにこの問題に直接対処しなければなりません。
グリーンソフトウェア、グリーンコード、持続可能なソフトウェアエンジニアリング、デジタルサステナビリティ、持続可能な IT といった言葉にどこかで触れた経験があると思います。それぞれの定義は微妙に異なりますが、これらの言葉は総じて、デジタル技術に関連する環境への影響を低減しようという動きが活発化していることの表れだと言えます。この分野におけるオピニオンリーダーシップの先駆者としては、ClimateAction.tech、Green Software Foundation、ResponsibleComputing.net を始めとして、多くの組織が存在します。
環境への責任に対する Salesforce の取り組み
Salesforce のコアバリューは、Salesforce のすべての企業活動の指針であり、平等、信頼、お客様の成功、そしてイノベーションと並んで、サステナビリティの追求を強調しています。Salesforce は、気候変動対策において確固たる実績があります。
- 世界の大手企業のネットゼロに向けた動きを加速させます。
- 森林の保護と再生を通して 1 兆本の木を育成することで、200 ギガトンもの二酸化炭素を封じ込めます。
- 海洋保護に取り組んでいきます。
- エコプレナーの活動を支援します。
詳細は「持続可能な未来の創出」トレイルと 「Salesforce Climate Action Plan (Salesforce 気候変動対策計画)」を参照してください。
「すべての企業は、自らの影響力を行使するだけでなく、コアコンピタンスを活かして、気候変動に取り組むためのイノベーションを迅速に進める必要があります。」
— Suzanne DiBianca、Salesforce チーフインパクトオフィサー
Salesforce の気候変動対策計画の中核となるのは、1.5°C 目標の達成に向けた温室効果ガス (GHG) 排出量の削減です。そのため Salesforce は、二酸化炭素排出量を最小限に抑えるための措置を講じ、持続可能な慣行を推進することで、当社の事業活動が環境に与える影響を抑えることの重要性を認識しています。
Salesforce は製品をデータセンターでホスティングしているため、排出量削減の進捗状況を追跡するために Carbon to Serve (貢献炭素量) というメトリクスを作成しました。このメトリクスは、アプリケーションの作業量に対する排出量を測定します。目標は、処理能力やサーバーなどのリソースを減らしつつも同じ結果を実現することです。2020 年に指標を定めて以来、Salesforce は 26% の削減を達成しており、今後も排出量の削減を継続していく方針です。
小さな変化で大きな影響
ソフトウェア開発における小さな変化でも、企業全体の二酸化炭素排出量や財務成果に大きな影響を与える可能性があります。たとえば、Salesforce 傘下の MuleSoft は、あまり利用されていないシステムを廃止し、よりエネルギー効率の高い代替ストレージに移行することで、パブリッククラウドインフラストラクチャの年間支出を 14% 削減しました。これらの取り組みは、温室効果ガスの排出量削減に貢献するとともに、サステナビリティとコスト削減が両立できることを実証しています。小さな変化であっても、それを大規模で行うことによって、大きな違いが生まれるのです。
環境保護における技術者の役割
技術者だけでなく、すべての人が地球を守る役割を担っています。デザイナー、建築家、開発者、運用マネージャーなどは、環境に優しいデジタルサービスを求めていますが、多くの人は個人としてどのような行動を実践できるのかを知りません。Salesforce が実施した調査によると、技術者のほぼ半数 (45%) が、環境に与える負荷を減らすソフトウェアアプリケーションの開発方法を知らないことがわかりました。
ただし、それを実現したいという意欲と関心は十分にあります。技術者の 72%は、持続可能なスキルのトレーニングと育成が最も重要な第一歩だと考えています。持続可能なソフトウェア開発と ICT の排出量削減にとって最大の障壁となっているのは認識と知識の不足です。
このため Salesforce は、集団としての意識を高め、技術者が日々の業務でその独自のスキルを活かしてポジティブな影響を与える方法を共有できるように、「Sustainability Guide for Salesforce Technology (Salesforce テクノロジーのためのサステナビリティガイド)」を作成しました。
Sustainability Guide for Salesforce Technology (Salesforce テクノロジーのためのサステナビリティガイド)
Salesforce の Green Code イニシアティブは、より環境に配慮したソフトウェア開発を目的としています。この取り組みの一環として、Salesforce は「Sustainability Guide for Salesforce Technology (Salesforce テクノロジーのためのサステナビリティガイド)」を作成しました。このガイドは、Salesforce 製品だけでなく、ソフトウェア全般を使用することによる環境への影響を軽減する方法について、技術者に役立つヒントやアドバイスを提供する便利なツールとなります。このガイドに従うことで、技術者は、安全でアクセスしやすく、高性能なだけでなく、地球への悪影響を最小限に抑えるソフトウェアを開発できます。
このガイドでは、デザインと UX、アーキテクチャ、開発、運用という 4 つの主要分野に焦点を当てています。
デザインと UX: デザイナーは、サステナビリティをデザイン要件とし、データフローのステップ数を減らしてより高速な環境を構築することで、エネルギー使用量を削減しつつ、より優れたユーザーエクスペリエンスを提供できます。
アーキテクチャ: ソフトウェア開発に適したアーキテクチャパターンとリリースモデルを選択することで、コスト削減と環境への影響の低減につながります。ソフトウェアアーキテクトは、MuleSoft が提供する再利用可能な API を統合し、Lightning Platform に組み込まれているガバナ制限によってコードの暴走を防止することで、この目標を達成する上で重要な役割を果たします。
開発: 持続可能なコードが鍵となります。エネルギー消費の少ないソフトウェアコードを開発することは、特に大規模にリリースされる場合には大幅な排出量削減につながります。Salesforce Lightning アプリは軽量で、ブラウザー上でネイティブに動作するようにコーディングされているため、優れたパフォーマンスを発揮します。このように効率よく設計された Salesforce のコードは、Experience ページの表示時間の短縮など、パフォーマンスを最大 60% 改善することができます。これらの効率改善は、全体的なシステム負荷の軽減だけでなく、エネルギー使用量の大幅な削減にもつながり、Carbon to Serve の向上や組織のカーボンフットプリントの削減に貢献します。
運用: 再生可能エネルギーの割合が高い地域にデータ処理拠点を配置し、それらのエネルギー供給量が豊富な時間帯に業務を行うことで、二酸化炭素排出量を削減できます。Salesforce は、Hyperforce のようなイノベーションを通じて脱炭素化に取り組んでいます。このパブリッククラウドインフラストラクチャのアーキテクチャは、顧客にサステナビリティと機能面でのメリットを提供します。
「Salesforce Snapshot Research: Green Code Gap (Salesforce Snapshot 調査: グリーンコードギャップ)」のデータは、あらゆる規模と業種の企業に所属する、米国 (345 人)、英国 (374 人)、オーストラリア (340 人)、合計 1,059 人の技術者を対象に行われた調査に基づいています。この調査は、2023 年 4 月に YouGov の協力を得て実施されました。
リソース
- Salesforce: Technologists Want to Develop Software Sustainably, But Nearly Half Don’t Know How (技術者は持続可能なソフトウェア開発を望んでいるが、約半数はその方法を知らない)
- Salesforce: Sustainability Guide for Salesforce Technology (Salesforce テクノロジーのためのサステナビリティガイド)
- Trailhead: サステナビリティを考慮して設計する