適切なイベントとトピックの選択
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- プレゼンテーションの実施に適した Salesforce 関連のイベントを特定する。
- 説得力のあるセッションのタイトルと要約を作成する。
- プレゼンテーションの学習の目的を記述する。
適切なイベントの選択
「成功するトークは、ちょっとした奇跡です。それを聞いた人々の世界に対する認識が変わるのです。」— Chris Anderson (TED キュレーター)
Salesforce 関連のイベントで講演者になるには、多くの道筋があります。初めて Salesforce イベントに来て、ステージの上で自分の知見を語ることを夢見る人もいれば、自分が大好きなトピックを見つけて、あらゆる人と共有せずにはいられない人もいるでしょう。その道筋がどのようなものであっても、このモジュールは皆さんのお役に立つでしょう。
このモジュールでは、force.com の達人で Lightning コンポーネント開発者である Nyah Jackson が Salesforce イベントでの講演に向けて準備を進める過程を見ていきます。Nyah は、素晴らしいプレゼンテーションを作成し、最終的には拍手喝采を受けることになりますが、その前に入念な準備を行います。それでは、Nyah が Salesforce 講演者になるための準備を始める様子を見ていきましょう。
Nyah (およびプレゼンテーションを行うことを希望するすべての人) にとって幸いなことに、Salesforce 関連のイベントで講演を行う機会は多数あります。
「私にとってうまくいったやり方は、最初に小さいところから始めて、自信と経験を積んでいくことでした。初めは、チームミーティングや社内ミーティングのような小さいものに取り組みます。そして、ユーザーグループでのプレゼンテーションへと範囲を広げます。自分が参加するユーザーグループと自分が普段は参加しないユーザーグループの両方で行います。さらに、地域のカンファレンスでプレゼンテーションや講演を行い、Dreamforce での提案や講演へと進んでいきます。これは、すぐに達成できることではありません。道筋を段階的にたどることは、より良い講演を行うために役立つだけではなく、コミュニティ内での存在感を高めることにもつながります。」— Phillip Southern (clicks 2 code、Salesforce MVP)
まず、ユーザーグループや開発者グループなどの Salesforce コミュニティが主催するイベントが多数あります。Forcelandia、London’s Calling、Midwest Dreamin’、Southeast Dreamin’、Tahoe Dreamin’ などのコミュニティが運営するカンファレンスも増えています。
また、World Tours などの公式の Salesforce イベントや、参加者や製品を限定した、Connections (デジタルマーケティング担当者向け) や TrailheaDX (Salesforce 開発者向け) などのイベントもいくつかあります。そしてもちろん、最大のイベント、Dreamforce があります。
これらのイベントのいくつかは、非常に大規模であるがゆえに、複数の講演トラックがあります。たとえば、Dreamforce には、システム管理者や開発者のための専用スペースがあり、非営利団体、ヘルスケア、高等教育などの特定の参加者に焦点を当てたエリアもあります。これらはそれぞれ、セッションの種類、セッションの長さ、登録の手続きや期日が異なります。
プレゼンテーションのための適切な会場を探すのであれば、次のことをお勧めします。
- 地域に参加する — パブリックスピーキングを始めたばかりなら、まずは、地域のユーザー、開発者、非営利団体、または「Women in Tech」のグループに参加しましょう。定期的に Salesforce プレゼンテーションを見て、どのトピックが聴衆の共感を呼ぶのかを知ることができます。さらに、新しいことをたくさん学ぶこともできます。
- 小さく始める — 地域のグループの活動的なメンバーになった後で、トピックを決定し (詳細は後述します)、主催者に今後のミーティングでプレゼンテーションを行えるかどうかを尋ねます。
- 範囲を広げる — 地域のグループでプレゼンテーションを行ったら、コミュニティが運営するカンファレンス、Salesforce World Tour、または Dreamforce へとステップアップします。
Nyah は、各選択肢を検討した後、当たって砕けろの精神で Dreamforce の開発者分科会を目指すことにしました。
トピックの選択
Nyah は非常にワクワクしていて、作業を始めるのが待ちきれません。これまでに、Dreamforce の開発者トラックの登録要請を確認し、成功のためのヒント集を読み (多くのカンファレンスと同様に、登録を募集しているトピックのリストがあります)、要件と期日を確認しました。
「あなたが情熱を持っていることについて語れば、あなたの話が終わったとき、聴衆もあなたも成長していることと思います。それを常に目標にすべきです。」— Stephanie Herrera (NFP、Salesforce MVP)
Nyah は、主催者が特にコアプラットフォームテクノロジー関連のコンテンツを求めていることを知りました。それには Lightning コンポーネントも含まれているため、チャンスがありそうです。Nyah は、ブレーンストーミングを行い、この一般的なトピックの 4 つの側面をリストにしました。
- Lightning コンポーネント初心者のためのヒント集
- Lightning コンポーネントのデバッグ
- Lightning コンポーネントの使用事例
- Lightning コンポーネントでのアプリケーションイベントの使用
これらは素晴らしいトピックですが、登録するのは 1 つのアイデアだけにしたいと Nyah は考えています。プレゼンテーションを行うのが最も楽しくて、最も多くの聴衆を引き付けるトピックを選びましょう。Nyah は、ソーシャルメディアのネットワークを利用して、Success コミュニティと開発者コミュニティでアンケートを投稿し、他のユーザーがこれらのアイデアについてどう思うのかを調べました。その結果「Lightning コンポーネント初心者のためのヒント集」が最も人気のあるアイデアであるだけでなく、仲間の Lek Bunyasarn が一緒にプレゼンテーションを行うことに乗り気だということがわかりました。願ってもないことです!
このプロセスで、Nyah はトピックタイトルがやや味気ないというフィードバックを得ました。Nyah と Lek は Web 会議でブレインストーミングを行い、新しいタイトルを考え出しました。「Lightning コンポーネントを初めて作成する人のためのヒント集 (スマートな人向け)」です。Nyah と Lek は次の理由でこのタイトルを気に入っています。
- 人目を引く — 誰でもヒントが好きです (スマートと呼ばれることも)。
- わかりやすい — キーワードである「Lightning コンポーネント」と「作成」が含まれているため、何についてのプレゼンテーションであるのかが、すぐにわかります (検索もできます)。
- 簡潔である — 人々がタイトルを覚えて、ソーシャルメディアでセッションを宣伝することができます。
これはまさに「#素晴らしい組み合わせ」ですね。
「Buzzfeed でのタイトルを思い浮かべてください。興味を引くのに十分なだけの情報が含まれているため、クリックしてさらに続きを知りたくなりますね。あなたのタイトルも同じようにしましょう。また、リスト形式のセッションやタイトル (「…のトップ 10」) はいつでも人気です。」— Amber Boaz (CodeScience、Salesforce MVP)
要約の記述
これで、Nyah と Lek のトピックが決まったので、次は要約を書きます。要約とは、セッションの内容についての短い説明です。優れた要約を読めば、詳細を知ることができ、セッションから聴衆は何を得られるのかがわかります。これは技術的なセッションなので、Nyah と Lek は、参加者がセッションの効果を最大限に得るには一定レベルの経験が必要であることも示します。
成功する要約を書くためには、次の一般的なプロセスに従います。
- 聴衆を定義する。
- 2 つまたは 3 つの学習の目的を定義する。
- 前提条件を定義する。
- 要約を書く。
「ワクワクさせるのに十分なだけの情報を提供します。そのセッションに参加すべき理由は何ですか? 何を学ぶことができますか?」— Amber Boaz (CodeScience、Salesforce MVP)
聴衆の定義
要約を書いている場合でも、スライドを作成している場合でも、デモについて検討している場合でも、聴衆を中心に考えることが不可欠です。次のことを自問します。
- 主な聴衆は誰か?
- 聴衆のスキルレベルはどのくらいか?
- 聴衆はどのような知識をすでに持っているか?
- 聴衆にとって大切なことは何か?
- どのようにすれば最も効果的に聴衆が情報を吸収できるか?
複数通りの主な聴衆を想定したくなるかもしれません。これは自然なことですが (誰でもすべての人にプレゼンテーションに来てもらいたいと思うものです)、その衝動を抑えます。焦点が分散されると、インパクトが薄まります。焦点を 1 つに絞ることが、聴衆の満足につながります。
Nyah と Lek はこれらの質問について考え、聴衆を定義しました。
対象となる聴衆
主な聴衆は、force.com の中級開発者です。Lightning コンポーネントについての知識はありますが、Lightning コンポーネントを開発した経験は浅いか、まったくありません。Apex と Visualforce には精通しています。Lightning コンポーネントの開発を始めようとしていて、経験が豊富なユーザーから学びたいと考えています。最良の学習方法は、ライブのコーディングデモを見ることと、オフィスに戻ったときに参照できるリソースを取得することです。
「聴衆を選ぶ際には、自分が何にワクワクするのか、どれだけの時間があるのかを考えます。20 分という時間は、概要を説明してから詳細なトピックについて説明するのに十分ではありません。概要を省略するか、詳細をあまり掘り下げないようにします。」— Brian Kwong (Better Partners、Salesforce MVP)
学習の目的の定義
聴衆を定義した後に、最初にすることは 2 つか 3 つの学習の目的を定義することです。学習の目的を少数に絞ることで、主旨となるメッセージが見失われないようにします。
まずは「このプレゼンテーションの終わりまでに参加者は何を知るのか?」という質問に答えるところから始めます。学習の目的には動詞を含め、通常は「理解する」「学習する」といった一般的な動詞は避けることをお勧めします。学習の目的の書き方についてヒントをさらに得るには「リソース」セクションを参照してください。
Nyah と Lek は Web 会議を行い、学習の目的を次のように定義しました。
このプレゼンテーションの終わりまでに、参加者は次のことができるようになります。
- Lightning コンポーネントフレームワークについて説明する。
- Lightning コンポーネントのいくつかの使用事例を説明する。
- Lightning コンポーネントの計画、開発、テスト、リリースについてのヒントを応用する。
前提条件の定義
聴衆と学習の目的を定義したら、次の重要なステップは前提条件を決定することです。前提条件では、プレゼンテーションで説明する必要がある内容と、聴衆にとって既知であると想定する内容を定義します。
プレゼンテーションの時間が短いほど、コンテンツの要点にたどり着くまでに使える時間が限られるため、このステップが重要になります。主要な聴衆は、新しいことを学びたいのであって、すでに知っている概要的な情報をおさらいしたいわけではありません。一般的なガイドラインとして、トピックの導入部分に費やす時間は 5 ~ 10% に抑えます。
要約を使用して、前提条件を明確に定義します。コンテンツが簡単すぎたり難しすぎたりしたせいで、別のトピックを選べばよかったと思う聴衆がいないようにしましょう。
Nyah と Lek は、聴衆は中級開発者で、Lightning コンポーネントが何であるかをよく知っている必要があると決めました。こうすることで、ほとんどの時間を重要なヒントに費やすことができます。
要約の記述
聴衆、学習の目的、前提条件が揃えば、要約はほとんど書き終わったようなものです。コツは、すべての情報を小さいスペースにまとめて、適切な聴衆を引き付けるようにできるだけ説得力があるものにすることです。
Nyah は次のような要約を作成しました。
素晴らしい Lightning コンポーネントを作成したいと思っている中級開発者の皆さん、ぜひお手伝いさせてください。まずはごく簡単に Lightning コンポーネントの概要を説明した後、すぐに実際の使用事例をお見せします。開発のすべてのフェーズ (計画、開発、テスト、リリース) での貴重なヒントをお教えします。このセッションは、Lightning コンポーネントとは何かという基本事項は理解しているものの、実際に作成したことがない方に最適です。経験豊富な Lightning コンポーネント開発者があなたの質問にお答えします!
Nyah は、その他の登録要件をすべて確認し、申請を登録しました。申請が承諾されたかどうかは、次の単元をご覧ください。#幸運を祈る