質の高いデータによる意思決定
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 団体がデータを使用して意思決定を改善する方法を説明する。
- 団体に適したデータ収集プロセスを選択することの重要性を説明する。
- データの正確さを維持することが重要である理由を説明する。
データ主導の団体になる
Salesforce は、非営利団体のデータを収集して整理するための強力なプラットフォームであり、Nonprofit Success Pack (NPSP) には、お客様の団体のような組織に特化したデータモデルが用意されています。
しかし、個々のレコードだけではできることに限界があります。もちろん、各支援者との関係や寄付を追跡することはできますが、それだけではトレンドを把握することはできません。データに基づいた意思決定を行うには、さらに多くの情報が必要です。
Salesforce にはレポートやダッシュボードを作成するための強力なツール群が用意されています。NPSP には、支援者や関係者のトレンドを把握し、データ主導の団体を目指すためのテンプレートレポートとダッシュボードが最初から用意されています。
少しカスタマイズすれば、州別の個人寄付の内訳など、新しいレポートを作成することもできます。サンプルレポートが表示されているスクリーンショット。
このレポートでは、米国の州別に寄付額を集計し、そのサマリー値を表示しています。これは、NPSP でパッケージ化されているレポートに、組織の具体的な疑問に答えるための検索条件やグループ化を追加したものです。
このモジュールでは、NPSP のデフォルトレポートの使い方やカスタマイズの方法を学びます。最初はデータの正確さについて見ていきましょう。
なぜそこから始めるのでしょうか。正確なレポートの鍵は、信頼できるデータにあるからです。どんなに高機能なレポートツールがあっても、データが正確でなければ意味がありません。非営利団体が自身のプログラムやサービスがもたらす影響を実証しようとしているのであれば、特にデータの正確さが重要になります。
データ収集戦略を立てる
正確なレポートに必要な高品質のデータを得るためには、まず戦略から始める必要があります。
No More Homelessness (NMH) という、ホームレスの人々を支援する非営利団体の例を見てみましょう。NMH はデータ主導の団体を目指しているため、Salesforce を活用しています。レポート機能は、NMH をはじめとする多くの非営利団体が NPSP と Salesforce を選ぶ主な理由の 1 つです。
Salesforce のレポートやダッシュボードを使用する NMH のチームは、データを比較、評価、分類して、事業の活動資金集めやプログラムの取り組みについて情報に基づく判断を下すことができます。ですが、こうした優れたツールを使用する前に、まず正しいデータを収集する必要があります。
Salesforce の柔軟性を活かせば、NMH は NPSP をカスタマイズして、あらゆる必要なデータを収集できます。ただし、収集できるからといって、世界中のあらゆるデータを集めるべきであるとは限りません。NMH のスタッフは NPSP 組織をカスタマイズする前に、どのようなデータを収集したいのか、なぜ収集したいのかについて入念に話し合いを行いました。
まず、次のような基本的な事項から検討しました。
- スタッフが業務を遂行するためには、どのようなデータが必要か?
- 資金提供者はどのようなデータを求めているか?
- スタッフが戦略的な意思決定を行うために役立つレポートは何か?
これらの質問に答えることで、NMH のスタッフは、自分たちがプログラムの利用者、ボランティア、支援者、寄付、キャンペーン、施設、日々の活動など、非常に多くの情報を収集したいと考えていることを実感します。
その一方、NMH にとって、スタッフの意思決定や業務改善に役立たないデータに時間をかける余裕はありません。そのため、どのようにデータを Salesforce に入力するのか、誰がデータを更新する責任を持つのか、そして各データポイントがどのように団体の役立つのかについて計画を立てることが重要です。
データ収集には、大きな社会的責任が伴います。たとえば、社会事業でお客様に人口統計情報を尋ねるのは一般的なことです。ですが、性別、人種、性的指向に関する質問によって人々に疎外感を与えたり、差別につながったりするおそれがあります。
すべてのデータポイントについて、業務上の正当な理由、戦略での位置づけ、そしてそのデータの利用方法を明確にしましょう。
データを正確に保つ
現在、NMH は質の高いデータを収集して Salesforce 組織に追加しており、非営利団体のレポートにもその内容が反映されています。ですが、最初からそうだったわけではありません。NMH が Salesforce を使い始めた当初は、スタッフが重要な情報の入力を忘れたり、誤って入力ミスをしたりすることがありました。
CRM の世界では、「ゴミを入れればゴミしか出てこない」と言われています。つまり、データが不正確であれば、レポートも不正確になるということです。
データの不備にはさまざまな形があります。
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不完全なレコード (例: 空白なデータ項目がある)
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レコードの欠落 (例: 重要な支援者や寄付が記録されていない)
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レコードの重複 (例: 同じ支援者に対する取引先責任者レコードが複数存在する)
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古いデータ (例: 古い住所)
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データの不統一 (例: 「CA」と「California」など、同じ項目で同じ値の形式が統一されていない)
調査では、問題のあるデータが一貫して収益の損失、時間の浪費、その他の非効率性と関連していることが示されています。リソースが限られ、時間を無駄にできない非営利団体の場合、組織のデータに問題があることで、その活動目的の遂行が阻まれるおそれがあります。
NMH はどうやってデータをこれほど正確に保っているのでしょうか?
質の高いデータを実現するための 3 つのステップ
Salesforce 組織に質の高いデータが取り込まれるようにするためには、できることが 3 つあります。
まず、収集したいデータについて意識することです。目的のないデータは、ただ管理の手間を増やすだけです。関係のないデータが多すぎると、重要な業務の妨げになります。
次に、必須項目、アプリケーション内ガイダンス、ヘルプテキスト、入力規則など、データ品質の維持に役立つツール Salesforce のツールを適切に設定することです。これらのツールの詳細や、適切な実装場所については、システム管理者にお問い合わせください。
そして最後に、何よりも重要な点として、データ品質を維持する「人材ベースの対策」があります。Salesforce 組織で働くすべての人が、そのデータの責任を共有しています。そして、良いデータは組織のトップから始まるということを忘れてはいけません。非営利団体のリーダーは、データの健全性管理のスケジュールを設定し、データのメンテナンスの所有権が組織全体に振り分けられるようにします。
Salesforce データが信頼できないものであれば、Salesforce 組織から正確なインサイトを得ることができません。そのために、このバッジを最初に獲得しようとしているわけです。
データの収集とメンテナンスは簡単ではありませんが、実現可能です。信頼できるデータが得られるのであれば、そのための努力には十分見合う価値があります。そして嬉しいことに、このモジュールで、努力に応じた見返りを得るために使用できる Salesforce ツールについて知ることができます。
次の単元では、NPSP のレポートを使用し、団体独自のニーズに合わせてレポートを検索、形式設定、カスタマイズする方法を学びます。
リソース