NPSP を使用した新規レポートの作成
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- さまざまなレポート形式を識別する。
- データセットに適したレポートタイプを選択する。
- 新しいレポートを作成する。
必要な機能を備えた NPSP
NPSP にいくつかの強力なレポート機能が標準装備されていることを学習してきました。けれども、既存のレポートを使用できない場合や、標準レポートをカスタマイズできない場合はどうなるのでしょうか? 新しいレポートを作成できます。レポートに対する各自のニーズがどのようなものかに関係なく、NPSP には成功を後押しするツールが用意されています。では、No More Homelessness (NMH) のプログラムマネージャーである Anthony Hall と一緒に、新しいレポートの作成方法を見ていきましょう。
不要な再作成をしない
Anthony はデータを使用していくつかの質問に答える必要が生じたとき、直感に従って何かをする前にまず既存のレポートを探します。これは賢明な判断です。前述のとおり、Nonprofit Success Pack (NPSP) には資金調達と関係者に関する 60 種以上のレポートが付属しています。Salesforce システム管理者の大半は、Salesforce の初期設定プロセス時に、ユーザー向けのレポートを数種類作成しています。レポートが必要なときは、まずニーズを最大限に満たすレポートがないか調べ、検索条件を使用してそのレポートをカスタマイズします。既存のレポートのカスタマイズでは必要な情報が得られない場合には、新規レポートを作成します。
今がまさにそのときです! その前に、2 つの重要なレポートコンポーネントを紹介します。
レポートコンポーネント
以下はすべてのレポートの構成要素であるため、レポートの作成作業を始める前に、これらによってデータがどのように表示されるかを理解しておくことが重要です。
レポートタイプ
どのレポートでも、中心となるのは 1 つか複数の標準オブジェクトまたはカスタムオブジェクトです。レポートタイプとしてどのオブジェクトを選択した場合でも、レポートに表示するデータとデータを絞り込むためのオプションを決定します。これを決めるのが難しい場合もありますが、アプローチの 1 つとして、レポートで必要な項目を検討します。
ボランティア名が必要か? その場合は、レポートタイプとして取引先責任者オブジェクトを選択する必要があります。
現物支援を表示する必要があるか? それは商談オブジェクトです。
世帯と現物支援に関する情報が必要か? 商談レポートタイプには、商談と取引先の情報が含まれています。
レポート形式
レポート形式によって、レポートの外観が決まります。テーブルまたはグラフを使用するか? データの集計が必要か? それは形式によって決まります。3 つの異なるレポート形式があり、形式ごとにデータの複雑さのレベルが増すように設計されています。
- 単純なテーブル (表形式レポート): 順序に従って列に項目が並べられます。スプレッドシートと似ています。このレポートは作成が最も簡単で、メーリングリストの生成のような作業に最適です。
- 行のグルーピング (サマリーレポート): 行を集計し、小計を表示し、グラフを作成します。このレポートでは、テーブルよりも多くのデータ整理オプションを使用できます。ダッシュボードに適しています (ダッシュボードについては、後ほど説明します)。
- 行と列のグルーピング (マトリックスレポート): レポートを行と列の両方でグループ化します。3 つのレポートタイプの中で最も複雑ですが、データを最も詳細に表示できます。マトリックスレポートは、在庫や収益の合計を一目で把握する概要に最適です。
新しい用語を覚えたので、今度こそ実際に新規レポートの作成を開始しましょう。
新しいテーブルレポート (表形式レポート) を作成する
NMH が提携している複数の食料品店は最近、想定外の需要が発生した期間に、フードパントリーに標準の支援を上回る、追加のリソースを提供してくれました。Anthony はそのサポートに対して個人的に感謝の手紙を送りたいと考えています。
Anthony はいつものように推奨ベストプラクティスに従い、まず検索して類似のレポートがすでにないか確認します。グローバル検索 (すべてを検索) と、より対象を絞ったレポート検索 (検索をレポートフォルダーまたは表示設定に制限) の両方を試しました。
既存のレポートで質問に答えるものはないようなので、Anthony は新規レポートを作成します。
1.[レポート] ページから、[新規レポート] をクリックします。
2.[レポートタイプを選択] ウィンドウで、作成するレポートの中心となるオブジェクトを選択します。検索ボックスを使用するか、オブジェクトメニューのオプションを使用して参照します。すべての食料品店には団体取引先レコードがあるため、Anthony は NMH を支援するすべての食料品店に関するレポートを作成するために [取引先] を選択し、[続行] をクリックします。
3.検索条件メニュー内で [検索条件] をクリックしてデータを絞り込みます。
4.既存の標準検索条件を絞り込むために、Anthony は [表示] をクリックし、[すべての取引先] を選択し、[完了] をクリックして適用します。次に、[日付項目] をクリックし、[日付] ドロップダウン選択から [作成日]、[範囲] から [全期間] を選択して、[適用] をクリックします。
5.Anthony は [検索条件を追加...] 項目をクリックして他の検索条件を追加します。[取引先レコードタイプ] を追加し、[演算子] として [次の文字列と一致する] を選択し、[値] の下のリストビューから [団体] を選択して、[適用] をクリックします。
6.Anthony はもう一度 [検索条件を追加...] 項目をクリックして 2 つ目の検索条件を追加します。[種別] を追加し、[演算子] として [次の文字列と一致する] を選択し、[値] の下のリストビューから [食料品店] を選択して、[適用] をクリックします。
7.レポートを整理するために、[検索条件] メニューから [アウトライン] をクリックします。住所項目を列として追加します。
8.次に、Anthony は [保存] をクリックして新しいレポート名と説明を入力し、[フォルダー] を変更します。この新しいレポートに、「All Grocery Stores」(すべての食料品店) という名前を付け、最後の [保存] をクリックします。
9.レポートが保存されましたが、すべてのデータを絞り込んで含めるには、[実行] をクリックする必要があります。
完全な住所のリストができたので、Anthony はリストをエクスポートして感謝の手紙の郵送に使用できます。
とても簡単でしょう? これがテーブルレポートの大きな利点です。すばやく設定して使用を開始できますが、非常にシンプルなので、そこから取得できる情報には限りがあります。
手紙を送付した後、Anthony は別のレポート作成タスクに着手します。NMH のプログラムディレクターである Gordon は最近、リソースニーズをより適切に把握するために、在庫のトレンドを分析しています。Gordon は Anthony のデータスキルが上がっていることを知っているので、各種別の洗面キットの現在の在庫に関するレポートを作成するように依頼します。
Gordon の目は確かです。Anthony はレポートに習熟しつつあります。そのため、この質問への最適な答えは、新しいレポートを作成して行でグループ化することだとすぐわかりました。このプロセスは、テーブルレポートを作成するために行った作業と似ていますが、重要な違いがあります。さっそく見てみましょう。
行でグループ化された新しいレポート (サマリーレポート) を作成する
1.[レポート] タブから、[新規レポート] をクリックします。
2.[レポートタイプを選択] ウィンドウで、作成するレポートの中心となるオブジェクトを選択します。Anthony はこのレポートに [Inventories (在庫)] を選択します。[続行] をクリックします。
3.[検索条件] メニュー内で [検索条件] をクリックしてデータを絞り込みます。
4.既存の標準の検索条件を絞り込みます。[表示] をクリックし、[All Inventories (すべての在庫)] を選択して、[完了] をクリックします。[日付項目] をクリックし、[Inventory Created Date (在庫作成日)] を選択し、[範囲] から [全期間] を選択して、[適用] をクリックします。
5.[検索条件を追加...] 項目で、[Inventory Sold Date (在庫販売日)] を選択し、[演算子] は [次の文字列と一致する] のまま、[日付] 項目は空白のままにします。[適用] をクリックして保存します。これらの検索条件を指定すると、レポートにはパントリーの手持ち在庫のみが表示され、すでにクライアントに配布されたものは含まれません。
6.[アウトライン] をクリックしてレポートを整理します。[検索条件を追加...] 項目で、Anthony は [キット種別]、[Inventory (在庫): 作成日]、[Inventory Sold Date (在庫販売日)] を追加します。
7.ここからがマジックです。これをテーブルレポートから行でグループ化されたレポートに変更するために、Anthony は [アウトライン] タブの [グループ] セクションで [検索条件を追加…] をクリックし、[キット種別] を追加します。
8.[保存 & 実行] をクリックします。新しいレポート名を入力し、説明を追加して、[フォルダー] を選択します。Anthony は新しいレポートのタイトルとして「Inventory Grouped by Kit Type」(在庫のキット種別内訳) と入力します。
9.[保存] をクリックします。
このレポートには、フードパントリーにある各洗面キットの現在の手持ち在庫が、キット種別でグループ化され、種別ごとの合計と共に表示されます。レポートの最下部には、種別に関係なくすべてのキットの総合計が表示されます。
Gordon は Anthony が共有したこの在庫レポートに満足し、そこからヒントを得てもう一歩進めることにしました。Anthony は来年の計画立案に役立つレポートを作成できるでしょうか? Gordon が特に関心を持っているのは現物支援のトレンド、具体的には食料品店からの食料支援についてです。店別の支援量、前月比、前四半期比を確認したいと考えています。
行と列でグループ化された新しいレポート (マトリックスレポート) を作成する
レポートの操作に詳しくなった Anthony は、Gordon のためにこのデータを見つける方法がもうわかっています。行と列でグループ化されたレポート (マトリックスレポート) を新しく作成します。これは、Gordon が必要としているような、データセットの概要に最適なレポートタイプです。
1.[レポート] タブから、[新規レポート] をクリックします。
2.[レポートタイプを選択] ウィンドウで、オブジェクトを選択します。Anthony は [商談] を選択します。[続行] をクリックします。
3.検索条件メニュー内で [検索条件] をクリックします。
4.既存の標準の検索条件を絞り込みます。
a. [表示] をクリックし、[すべての商談] を選択して、[完了] をクリックします。
b. [確度] をクリックし、[すべて] を選択して、[適用] をクリックします。
c. [商談状況] をクリックし、[商談成立] を選択して [適用] をクリックします。
d. Anthony は [完了予定日] をクリックし、過去 3 か月が含まれるように日付を設定します。
5.[検索条件を追加...] 項目で、[商談レコードタイプ] を選択し、[演算子] は [次の文字列と一致する] のままにし、[値] は [現物支援] に設定します。[適用] をクリックします。
6.次は、整理しましょう。[アウトライン] をクリックします。
7.[行をグループ化] 項目で、[取引先名] を選択します。これを選択することで、各食料品店 (それぞれが固有の取引先責任者) による支援の合計がレポートに含まれます。
8.[列をグループ化] で、[完了予定月] を追加し、レポートに月ごとの合計が含まれるようにします。
9.[列] で、[商談名]、[フェーズ]、[完了予定日] を選択します。
10.このタイプのレポートは情報が多すぎてわかりづらくなることがあるため、Anthony はユーザーのためにレポートの詳細を非表示にします。そのためには、[詳細行] をクリックしてオフに切り替える必要があります。
11.[保存 & 実行] をクリックします。レポートに名前を付け、詳細を追加します。
12.[保存] をクリックします。
Anthony の新しいレポート [In-Kind Food Donations By Month Sum (月別食料現物支援合計)] が用意できました。
一目見るだけで、チームは、支援合計や過去 3 か月の店別支援量など多くの貴重な情報を把握できます。これは計画に役立つことでしょう。
Anthony は、気軽に既存のレポートをカスタマイズしたり、数種類の新しいレポートを作成できるようになりました。こうした概要レポートを使用して、チームが迅速に適切な判断を下せるようになったことに満足しています。けれども、新しいレポートを作成したり、既存のレポートをカスタマイズしたりといったレポート作成機能は、レポートを他のユーザーと共有できなければ役に立ちません。次の単元では、NMH の開発チームに戻り、レポートを共有したりスケジュールしたりする方法や、レポートに登録する方法を学びます。では、先に進みましょう!