将来の経済状態に対する責任を負う
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 老後の計画を立てることが重要な理由を説明する。
- 経済状態と財産の準備を整える。
- お金にまつわるポジティブな雰囲気を生み出す。
退職など随分先のことのように思えるかもしれません。それでも、前もって計画し、将来に向けて貯蓄を始めることは重要です。早すぎることはありません! 老後にやりたいことが旅行でも、子どもや孫をかわいがることでも、あなたが望む限り仕事を続けることでも、あるいはまだ何がしたいかわからない場合でも、老後に向けて貯蓄すれば長期的な目標を達成しやすくなります (長期的な目標を決めかねている場合も同じです)。
老後の準備
The Motley Fool は、老後に向けた貯蓄を妨げるさまざまな要因を挙げています。
- 生活費
- 積み重なった債務
- 公的年金制度への過信
- 老親への援助や養育費/教育費といった現時点の義務
- どこから始めればよいのかわからない
- 「人生は一度きり」という考え方。使いたいときにお金を使って、支払については後で考える
けれども、老後に向けた貯蓄は大切です。そして、早く始めるに越したことはありません。そうすれば資金の運用期間が長くなり、世界各地の人々が直面している老後のいくつかの問題に対応しやすくなります。
老後にかかる費用が増大する中、私たちは健康上の問題を抱えながら長生きし (一部の国では医療費も上昇)、その一方で政府は老齢給付金を制限し、退職年齢も引き上げられています。
あなたならどうしますか? 若干の準備と計画で、将来の経済状態を安定させることができます。複利の魔法を利用して、20 代という早い時期から老後のためにお金を貯めていけば、老後の貯蓄が数百万ドルに達する可能性があります。早期開始を逸したとしても、遅すぎることはありません。
複利の魔法
The Balance によると、複利とは、投資 (年金口座や株式ポートフォリオなど) から得た利子が元本に組み込まれることです。時間の経過とともに利子がどんどん増えていきます。つまり、貯蓄額が多いほど利殖が加速します。
どのようなしくみなのでしょうか?
Penny と Jack と Jill の雪だるま式の効果
雪だるまを転がしているところを思い浮かべてみてください。雪の上で雪玉を転がすと、地面の雪が付着してどんどん大きくなっていきます。複利も、元本に同じことを行います。年金口座に預けた資金が、その口座を管理する組織が行う投資によって巨大な雪玉となり、最終的に口座から引き出すことができます。素晴らしいですよね?
次の例を見てみましょう。Penny と Jack と Jill の各人が年に 10,000 ドルを各自の退職基金に投資します。10 年間続けた後で入金をストップしました。想定されるインフレ調整後の利益率は年間 7% で、投資期間にわたって利子が口座の元本に組み込まれます。下表は、投資で得られる利子の算出額を示しています。
Penny は 25 歳で投資を開始し、Jack は 35 歳、Jill は 45 歳で開始しました。3 人とも 65 歳で退職すると、各自の退職基金は次の額になります。
投資家 |
投資を開始した年齢 |
投資を止めた年齢 |
投資額 |
退職時の基金の総額 (65 歳) |
---|---|---|---|---|
Penny |
25 |
35 |
$100,000 |
$1,201,488 |
Jack |
35 |
45 |
$100,000 |
$610,775 |
Jill |
45 |
55 |
$100,000 |
$310,487 |
3 人とも同じ金額を拠出したにもかかわらず、Penny の退職金は Jill の 4 倍になっています。これは Penny のほうが複利効果の対象期間が長かったためです。
要点: 老後の貯蓄について言えば、「時は金なり」です。Penny が退職まで毎年投資を続ければ、最終的な残高は 210 万ドルを超えるでしょう。できるだけ早く始めましょう!
豊かな老後を計画する
老後の計画は国ごとに異なります。英国やオーストラリアといった地域では、年金や退職金制度の制定が法律で義務付けられていますが、米国などの他の地域では、退職資金を個人の拠出と会社のマッチング拠出に頼っています。
年金制度がある場合や、その他の公的な制度が法的に義務付けられている場合は、退職後の収入が保証されます。一般に、雇用者と雇用主が雇用期間にわたって雇用者のプランに拠出金を払い込みます。そして、雇用者が指定された退職年齢に達すると、その資金が雇用者に支払われます (Investopedia)。
これは 401(k) のような個人の拠出年金制度とは異なります。この場合は、老後の貯蓄が個々人の責任で、退職年齢に達した時点で保証される最低または最高給付額というものがありません。
お金に関する神話: 老後のためにさほど貯金する必要はない。
老後の貯蓄は、あなた自身が望むライフスタイルに応じて実施します。旅行、外食、ゴルフ、インテリアなど、現在のライフスタイルを考えてみてください。これらを実際に行う時間ができたときに、どの程度諦めることができると思いますか? Forbes によると、人々は老後に必要な資金を過小評価する傾向にあります。
お金に関する演習: 老後にどのくらいの資金が必要かを見積もります。この老後費用計算ツールは、安定した老後に向けて計画を立て、貯蓄に取り組むうえで役立ちます。
あなたとあなたの大切な人を守る
お金に関する重要かつ普遍的ないくつかの概念に関する知識を身に付けたところで、次はあなたとあなたの大切な人々の経済的な安定を実現するいくつかの方法を見ていきましょう。
後続のトピックに進む前に、一般的な用語をいくつか抑えておく必要があります。
- 財産: あなたが所有するあらゆる金銭と財産 (資産の合計)
- 資産: あなたが所有する価値あるもので、金銭に変換できるもの (当座/普通預金口座、動産、宝飾品、車両、投資、年金、株式など)
- 受益者: あなたの資産を相続する人々
生命保険
生命保険は、あなたに万が一のことが起こった場合でも、あなたの家族が不自由なく暮らせるようにするものです。どのくらいの補償が必要かは、あなたの個人的および経済的な状況によって異なります。
お金に関する演習: どのくらいの生命保険が必要ですか? この生命保険計算ツールを使用すると、見積額が算定されます。
相続計画、遺言、信託
相続についてあらかじめ計画を立てて準備をしておけば、自身の資金をきちんと管理でき、またあなたに万が一のことが起きても慌てることがありません。相続計画はそれぞれ異なりますが、多くの場合は遺言の作成と信託の設定、委任する代理人の指名、法律関連の相談などを行います。
それぞれの概要は次のとおりです。
- 遺言: 人々は、死後資産をどのように引き継ぐかを記しておくためにこの法的文書を作成します。
- 執行人: 遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人です。
- 信託: 受益者に代わって第三者 (受託者) が資産を保有することを認める契約です。
- 代理委任状: あなたに代わって法的な判断を下し、実行する権限を他者に付与します。
「リソース」セクションで、手続きの開始に役立つヒントや海外の相続計画ガイドをご覧ください。
知識を広める
自身の経済状態を調査し整理していく中で、まだまだ学習すべき点があるかもしれませんが、それでも構いません。ここで重要な点は、自ら学び続け、自身のファイナンシャルウェルネスの向上につながる小さな変化を実践していくことです。
お金に関する成功や失敗を友人、家族、大切な人々と共有すれば、お金にまつわるポジティブな雰囲気を生み出すことができます。家庭で話し合うことから始めましょう。
Money Advice Service では、配偶者、家族、大切な人々とお金について話し合う場合のいくつかのヒントを提唱しています。
- ファイナンシャルウェルネスの目標を共有して、責任をもって取り組み続けられるようにする。
- オープンかつ率直になる。話し合いをすることで、お金の話題がタブーにならないようにします。
- 家族やパートナーと一緒に取り組む。資金を誰かと共有している場合は、計画や貯蓄の話し合いにその相手に必ず参加してもらいます。
ファイナンシャルウェルネスへの道を歩み続ける
ファイナンシャルウェルネスへの道を歩み続けるために、あなたが学んだ内容を家族や大切な人々と共有すること以外にもできることがあります。進歩し続けるための手段をいくつかご紹介します。
- あなたが利用できる給付金について調べる。年金制度から教育ワークショップまで、利用可能なものについて調べたり質問したりして、最大限活用できるようにします。
- 勤務先の従業員支援プログラム (EAP) で、利用できるリソースやサポート (法務、ファイナンシャルプランニング、ストレス軽減など) がないか確認します。
- プロのマネーコーチや信頼できるファイナンシャルアドバイザーに相談して、現在および将来の金銭的な目標を達成できるようにする。
まとめ
現在、自身の経済状態を安定させる方法に取り組んでいる場合でも、将来の計画を立てている場合でも、お金にまつわることによってストレスが生じることがあります。お金や経済状態に関する知識を深め、行動上の小さな変化を実践していけば、ファイナンシャルウェルネスを向上させ、より豊かな人生を送ることができます。そのために、今日はどのような行動に取り組みますか?
リソース
- レポート: 英国消費者の暮らしの経済状態 (FCA)
- 記事: 老後の貯蓄をしていない 5 つの理由 — そして、そのすべてがこじつけである理由 (The Motley Fool)
- 記事: 複利のしくみとその計算方法 (the balance)
- ツール: 複利計算ツール (Investor.gov)
- 記事: 世界各地の退職給付制度 (Investopedia)
- 記事: 年金と 401(k) の比較 (U.S. News)
- 記事: 老後の安定を台無しにする 3 つの神話 (Forbes)
- ツール: 老後資金計算ツール (Bankrate)
- 記事: 401(k) 長者になるための 5 つの主なステップ (NerdWallet)
- 記事: チェックリスト - 老後に備える (the Money Advice Service)
- 記事: 財産 (Investopedia)
- 記事: 生命保険とは? (Fidelity)
- ツール: 生命保険の必要性の算定 (Edward Jones)
- サイト: 相続計画の管理 (Fidelity)
- 記事: 相続計画の致命的な 7 つの間違いを回避する (Forbes)
- サイト: 海外の相続計画ガイド (IBA)
- 記事: お金について話し合う (the Money Advice Service)