パーソナライズでの倫理的な使用の原則とベストプラクティスの探求
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- リアルタイムのパーソナライズについて認知されている最大のリスクを説明する。
- 透明性と同意によって顧客との間で信頼を築く。
- インテントベースの行動と統計属性との違いを説明する。
Trailcast
このモジュールの単元の音声録音をお聞きになりたい場合は、下記のプレーヤーを使用してください。今すぐモジュール全体を聞くか、次の単元まで進めて聞くことができます。その場合は次の単元の冒頭から始まります。この録音を聞き終わったら、必ず各単元に戻り、リソースを確認して関連付けられている評価を完了してください。
Salesforce でのテクノロジーの倫理的な使用
Salesforce は、製品の設計、開発、提供の方法に深く配慮しています。Salesforce では、テクノロジーの倫理的な使用に対する継続的なコミットメントの一環として責任あるマーケティングの原則を公開しています。このモジュールでは、すべてのインタラクションで信頼を築きながら顧客とつながるための Salesforce のリアルタイムパーソナライズソリューションにこれらの原則を適用するための方法を説明します。
認知されているリスク
企業でパーソナライズされたインタラクションを設定するマーケティング担当者やチームメンバーは、大変な仕事を背負っています。この仕事には、人口統計や行動データのデータベースに関する説明責任を持ち、一度に (何百万人とまでは行かないとしても) 何千人もの人々に関連性が高く、好意的に受け入れられ、効果的であるメッセージを発信するという大きな責任が伴います。その一方で、規制や消費者からの要求は急速に厳しさを増しています。たった 1 回の事故だけで、苦労して築き上げたブランドの価値が損なわれてしまうのです。これが、Salesforce にとって信頼が非常に重要である理由の 1 つです。
倫理的にデータを使用するということは、単に規制に従うという意味ではありません。ビジネスチャンスでもあるのです。顧客は、企業が提供する商品やユーザー環境だけでなく、企業の信頼も常に評価しています。Salesforce の「State of the Connected Customer 2020 (2020 年度版コネクテッドカスタマーの最新事情)」レポート (登録が必要です) によれば、89% の顧客は信頼できる企業との取引を続け、65% の顧客は不誠実な企業との取引を止めています。さらに、84% の顧客は強固なセキュリティ管理を行っている企業をさらに信頼し、80% の顧客は優れた倫理観を持つ企業をさらに信頼しています。
Salesforce は、認知されているブランドの価値観や倫理観によって信頼が大きく影響されることを知っています。マーケティングでのリアルタイムのパーソナライズに関する最大のリスクについては、消費者とマーケティング担当者がほぼ同じ懸念を抱いていることがわかりました。
- データ侵害などのセキュリティ事故
- 想定外の手段でのデータの収集、共有、使用
- 消費者にとって過剰あるいは不要だと感じられるインタラクションのパーソナライズ
- 行動やエンゲージメントのデータではなく統計属性に基づいたインタラクションによって生じる無意識のバイアス
データの倫理的な管理に役立つように、上記のリスクに対処するためのいくつかの推奨事項をまとめました。これらは、Salesforce ソリューションをパーソナライズする際に責任あるマーケティングの原則に準拠できるようにすることを目的としています。
セキュリティの透明性を保つ
消費者は個人情報の盗難やプライバシーの侵害のリスクを懸念しています。マーケティング担当者は、企業がセキュリティやプライバシーに配慮または投資していないと消費者に受け取られた場合のブランドのイメージへの悪影響を懸念しています。
Salesforce は、セキュリティの保護と対応に高い基準を設けています。私たちは、報告されたすべての問題に対して、サービスレベル契約を優先的に提供しています。開発者とプロジェクトマネージャーがチームを組んで、問題の原因を特定し、トリアージしたうえで解決します。また Salesforce では、外部の脆弱性/侵入テストや SOC コンプライアンスなど、セキュリティに関するドキュメントを公開しています。
Salesforce は、リアルタイムのパーソナライズテクノロジーの信頼できるパートナーです。お客様が自社の顧客との間でこのパートナーシップの透明性を保つことで、お客様のブランドに対する信頼やロイヤルティを築くことができます。顧客から勝ち取った信頼は、より深いエンゲージメントを継続的に築くための基盤となります。
同意と透明性で信頼を築く
Marketing Cloud Personalization は、環境をパーソナライズするためのデータをインターネットから収集するメカニズムを提供します。ただし、消費者に対して透明性を保つことが重要です。消費者は透明性を期待しています。どのようなデータを収集するのか、そのデータをどのように使用するのかを消費者に伝えて、そのデータに見合うメリットを消費者に提供します。データ収集からオプトアウトする手段も提供してください。常に消費者の選択を尊重しましょう。
いくら強調しても足りないほど重要なことがあります。それは、パーソナライズされた環境を構築する際には、データを収集する前に必ず利用者に確認して、同意を得るということです。パーソナライズや ID 検証など、正当なユースケースで必要となるデータのみを要求して収集します。たとえば、現在のパーソナライズの設計で氏名が必要なければ、収集しないようにしましょう。環境を設計する際に、収集するデータと収集の目的を明確に示すことで、信頼が得られるようになります。
メールアドレスを要求する場合は、今だけの特典に加えて、今後もいろいろな特典があることを伝えます。データの収集と使用に関する透明性を保ち、協力的であることで、インタラクションによって信頼を築くことができます。プライバシーポリシーや利用規約を長々と表示するのではなく、顧客がわかりやすい言葉で説明しましょう。顧客情報の不適切な利用、たとえば、情報を勝手に広告プラットフォームに流したり、買ったばかりの商品を勧めたり、メールの受信を了承していないのにメールを送ったりする行為は、顧客のブランド離れにつながる可能性があります。
今の私たちは、消費者、家庭、そしてあらゆる機器がさまざまな方法で繋がることを当然だと考えています。Cookie やモバイルデバイス ID などの情報により、企業は認証なしでも利用者が誰であるかを特定できます。Cookie による情報取得の規制が厳しくなりつつある今の時代において、企業が顧客のデータを共有するためには、それに見合う明確な価値やインセンティブを提供することがますます重要になっています。顧客が簡単にログインできて、認証された状態を維持できるようにしましょう。そして、厳選されたコンテンツや関連性の高いおすすめなど、認証によるさまざまなメリットを顧客に提示しましょう。
データを利用して環境をパーソナライズする
パーソナライズとは、一人一人の顧客に合わせて応対することであり、より快適で適切な環境を提供することです。そして最も重要なことは、顧客の意図を反映した環境を提供することです。このような環境で、顧客が自分にとってのメリットを明確に理解できれば、個人情報や機密情報までも共有しようという気になります。
マーケティング担当者の 92% が顧客やプロスペクトはパーソナライズされた環境を期待していると答えています。ですが、顧客がパーソナライズによるメリットを実感できなければ、逆に過剰だと感じたり、作為的に感じたりすることもあります。マーケティング担当者にとって、常に顧客をパーソナライズ戦略の中心に置くことが非常に重要です。常に、「顧客は自分のデータと引き換えにどのような価値やメリットを得るのか?」と「それは顧客が提供する情報に見合うものなのか?」という 2 つのことを自問するようにしましょう。
いくつか例を見てみましょう。Marketing Cloud Personalization では、収集したデータを使用して環境をパーソナライズして、ブラウザーの Cookie に紐付けることができます。Web キャンペーンでは、Marketing Cloud Personalization が収集した情報を表示するようにサイトを設定できます。たとえば、過去のインタラクションに基づいたイメージをシンプルにバナーで表示したり、もっと役に立つように最近閲覧した商品のリストを表示したりできます。
また、コンテンツゾーンを使用して、認証済みの環境で、より詳細なパーソナライズを実現することもできます。たとえば、ある通販サイトのトップページには、過去のインタラクションに基づいたイメージのバナーが表示されるとします。ですが、このサイトではログインしないと過去に閲覧した商品のリストが表示されないため、夫婦で同じコンピューターを共有していても、夫が誕生日に何をプレゼントしようとしているのかを、妻がうっかり先に知ってしまう心配はありません。
ログインと匿名性を利用したキャンペーンテンプレートを用意すれば、プログレッシブなフォーム入力などの高度なユースケースにも安全に対応できます。
統計属性よりも行動ベースのインテントを優先する
統計属性に基づいたターゲティングでは、バイアスが生じてしまい、適切な人々に適切なメッセージを届けられないという事態があまりにも多く発生しています。たとえば、アンチエイジングサプリの売上を伸ばすために、55 歳以上の顧客を対象としたキャンペーンを実施するとします。このケースでは、特定の年齢層だけが若く見えることに関心があると思い込んだために、キャンペーンにバイアスを持ち込んでしまいました。また、狭い年齢層に限定したことで、潜在的な売上を失うことにもなります。統計属性に基づいたターゲティングに伴うバイアスのリスクを軽減するには、関心ベースおよびインテントベースのターゲティングを使用します。そうすることで、統計的要因には関係なく、類似した商品に最も興味を持ちそうな人々に商品やサービスを紹介することができます。ステレオタイプの押し付けもブランド価値を損なう原因になります。
また、取り扱いに注意を要する情報から機械学習システムに意図しないプロキシバイアスが導入されることもあります。機械学習モデルを構築およびトレーニングする場合には、属性と動作を慎重に選択してください。モデルにバイアスが導入されないようにするには、どのデータが最も価値があるかを考慮しましょう。人種、宗教、年齢、国籍など、影響を受けやすいクラスに対する偏見を助長する可能性のあるデータは省略します。
たとえば、特定の人種の人口比率が著しく高い地域では、人種と郵便番号の間に相関関係が生まれます。人種のデータが直接システムに入力されなくても、このような間接的な関連性から差別が生じる可能性があります。しかし、プロキシバイアスが存在するからといって、郵便番号が使用できないわけではありません。郵便番号が顧客におすすめの店舗 (居住地から 50 マイル離れた店舗よりも 5 マイル以内の店舗) を提案するための目安になるのであれば、郵便番号は便利な属性であり、倫理的に使用することができます。
パーソナライズされた環境を構築する際には、収集した属性や統計情報だけではなく、顧客のインテントに焦点を当てます。インテントベースまたは行動ベースのアクションとは、ページビュー、商品のクリック数、好みの商品種別の設定などを意味します。たとえば、二元的な属性に基づいて集団をセグメント化することは、意図しない結果を生じることがあります。マーケティング担当者が化粧品のキャンペーンを作成する際に、対象として「女性」だけを選択すると、キャンペーンの対象と潜在的なリーチが自動的に制限されます。多くの顧客を失うだけでなく、さらに悪いことに、二元的な性別という属性を使用することで人々を遠ざけてしまうのです。
その代わりに、たとえば Marketing Cloud Personalization のレシピとその多次元カタログを使用して、消費者の属性だけでなく行動にも基づいて、ターゲットを絞り込んだインテントを浮き彫りにします。
顧客は何かを見返りとして期待する
この単元で学習した内容をおさらいしましょう。顧客が個人情報や機密情報を提供する場合には、見返りに価値のある適切なコンテンツが提供されることを期待します。顧客に対してデータの使用について正直に説明し、同意を得て、その対価として明確なメリットを提供することが重要です。パーソナライズソリューションを設計および作成する場合は、これらの原則を適用することで、より深いエンゲージメントを継続的に維持するために必要な顧客の信頼を獲得して維持することができます。
次は、クロスチャネル行動 (トリガーベース) メッセージングの倫理的な使用について学習します。