アクション可能な分析の習慣を理解する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- ビジネス判断を促進する際にアクション可能な分析を使用することの主なメリットを挙げ、その重要性を説明する。
- 四半期のビジネスレビューから得たインサイトを適用する場合のベストプラクティスについて説明する。
- ビジネスレビューや関係者とのミーティングの後に主要業績評価指標を確認して更新するプロセスについて説明する。
- Tableau や Data Cloud などの分析ツールを使用して、Salesforce のレポートやダッシュボードを更新、伝達、最適化する方法を示す。
アクション可能な分析について学ぶ
アクション可能な分析が重要なのはなぜでしょうか? 端的に言うと、ビジネスは結果に影響をもたらすことを目的としているからです。リーダーは判断の拠り所としてデータを活用し、マネージャーや一般従業員は自分たちのアプローチが効果的かどうかを見極めるためにデータを必要としています。ビジネスの世界では、ほぼすべてのアクションからデータが生成されます。このデータを集約して分析すれば、トレンドやパターンを見出し、どこに重点的に取り組むべきかを明確にして、最終的にビジネス成果を高めることができます。
たとえば、カスタマーサポートのコールセンター担当者である場合、お客様が満足しているか、問題が解決されているかを知るにはどうすればよいのでしょうか? 通話時間、顧客満足度、エージェントのケース処理件数、割り当てられたチャネル、ケースのエスカレーション、返金、クロスセルまたはアップセルの収益などの主なメトリクスを分析します。システム管理者の役目は、Salesforce データを使用してビジネス判断を下せるようにすることです。
かつては、こうした分析がコアプラットフォームの Salesforce レポートとダッシュボード機能のみで作成されていました。現在では、Tableau、Tableau CRM、Salesforce Marketing Cloud Intelligence、さらには統合されたサードパーティの分析ソリューションなど、幅広いツールセットを使用できます。この単元で学習するベストプラクティスは、このツールのすべてに適用されます。ベストプラクティスは特定の製品に限定されるものではなく、業務のやり方や考え方を表します。
四半期のビジネスレビューに参加する
四半期のビジネスレビュー (QBR) は、ビジネスリーダーと一般従業員が目標や進捗状況について話し合うミーティングです。たとえば、全国規模の営業組織では、分割されたテリトリーのマネージャーが四半期に一度営業担当とミーティングを行い、目標に照らして各人のパフォーマンスを評価します。ビジネスは QBR で進捗状況を分析し、目標に向けてアクションを実行することができます。
Salesforce システム管理者がこのミーティングを実施することはありません。代わりに、QBR に立ち会ってもよいか主催者に確認します。QBR の実施方法はビジネスごとに異なるため、このベストプラクティスは各自の組織に合わせて調整します。立ち会っている間は、Salesforce が使用されたとき、または言及されたときに注意を払い、苦情や利点をメモします。休憩中や昼食時に関係者やユーザーに話しかけ、フィードバックを求めます。
QBR の最中にビジネスリーダーが攻略法やイニシアティブの概要を説明することがあります。組織がそうした目標や、新たなイニシアティブや日程にどの程度対応しているか書き留めます。関係者へのフォローアップの質問を検討します。QBR に初めて参加したときは、終了後に主催者にお礼を述べます。QBR は通常、四半期に一度数時間かけて行われます。ビジネススケジュールに合わせて予定を調整します。
KPI を確認して更新する
重要業績評価指標 (KPI) を確認して更新します。これは、四半期のビジネスレビューの終了後に自然な流れで行われるステップです。書き留めたメモをまとめ、現在のレポートと比較して、KPI に注意を向けます。ビジネスリーダーと 1 対 1 または少人数のミーティングをスケジュールして自らの所見について話し合い、質問をして、現在のレポートを評価します。KPI の確認時は QBR とは異なり、数値を基にリーダーシップと直接話し合います。
システム管理者が KPI を確認して更新することは極めて重要です。KPI を指針としてビジネス成果が促進され、データを基に組織の目標と合致する判断を下すことができるためです。システム管理者は、組織のデータの信頼性と、Salesforce で生成されるレポートの正確性を保証する最適な立場にいます。
ですから、組織のあらゆるレベルの KPI を確認します。たとえば、営業担当は新規のリード数に着目している一方で、営業 VP は担当者別にまとめた月々の成立件数に関心を抱いているかもしれません。四半期ごとに 1 時間ほど時間をとって KPI を確認して更新しますが、時間を有効活用するために、このタスクは QBR の後にスケジュールします。こうした確認時に、ユーザーが手間取っている領域を特定し、Salesforce 設定に必要な変更を行ってその有用性を高めることができます。
主要なレポートとダッシュボードを確認して更新する
最後に、レポートとダッシュボードを更新して、組織が最適なデータを使用して情報に基づく判断を下せるようにします。独自の Salesforce インサイトを参考に分析を調整して、古くなったレポートを削除し、必要に応じて次の四半期用の新しいレポートを作成します。変更を行えばそれでよいというわけではありません。大切なのはその変更を伝えることです。周到なやり方でレポートとダッシュボードへの変更をビジネスに通知します。こうした連絡によってユーザーが最新情報を把握できるだけでなく、Salesforce でアクション可能な分析を実行してデータに基づく判断を下せるようになることについての信頼が築かれます。メッセージが全員に届くように、Slack、メール、その他の手段など、複数のコミュニケーションチャネルの使用を検討します。
このメッセージに主なレポートへの変更、変更理由、関連するビジネスイニシアティブを記載します。KPI が変更された場合は明記します。ユーザーがこのメトリクスに対する説明責任を担っているためです。ユーザーは、システム管理者がデータから何を読み取ろうとしているのか知りたいと思っています。問題点が解決したことを強調し、その利点をユーザーと共有します。問い合わせ先を明記し、質問があれば気軽に連絡して欲しいと伝えます。こうしたやり取りが、スーパーユーザーを特定し、ビジネス関係を深める絶好の機会になります。
四半期ごとに数時間かけて主要なレポートとダッシュボードを更新しますが、このタスクは KPI を確認した後にスケジュールします。
四半期のレビューでビジネスと認識を一致させ、KPI を確認し、主要なレポートとダッシュボードを更新することで、信頼が築かれ、レポートが古くなるリスクが減少し、ユーザーの生産性が向上します。こうした手順を踏めば、組織のレポートとダッシュボードが正確かつ最新のものになり、組織の目標に合致させることができます。自分自身をユーザーと、ビジネスを推進するメトリクスの橋渡し役と考えます。
AI とエマージングテクノロジー
Salesforce システム管理者は、エマージングテクノロジーをデータドリブンの意思決定に活用し、組織全体に分析のベストプラクティスを導入することができる独自の立場にあります。Data Cloud を使用して、顧客データ ( Salesforce に存在するものや外部システムから取り込んだもの) を信頼できる一元的なリアルタイムの情報源に集約します。この包括的な顧客プロファイルにより、Data Cloud オブジェクトと統合された Salesforce フローを使用して、よりインテリジェントなデータワークフローを構築できます。つまり、フロー機能を通して、計算済みインサイト、ID 解決、セグメンテーション、有効化のすべてが自動化され、ビジネスに固有のニーズに合わせて調整されるということです。この結果、何が必要なのかに応じて的確に調整された、より動的で強力な分析が可能になります。
適切なツールを使用すれば、このインパクトを拡大できます。強力なビジュアル分析機能を備えた Tableau では、貴重なインサイトを示すダッシュボードやレポートを作成して、ユーザーの行動や採用パターンなど主なトレンドを明らかにすることができます。Pulse for Salesforce は、AI を活用したインサイトを直接 Salesforce CRM に組み込んで Tableau の分析機能を補完し、標準のメトリクスや AI 生成のトレンドサマリーを提示します。ユーザーは Salesforce を開いたまま、このすべての機能を使用できます。業務を行っているその場にインサイトが表示されるため、全員が最新情報を把握して、すぐにアクションを実行できます。さらに、Pulse や Data Cloud などの分析ツールに Einstein のような AI が組み込まれているため、システム管理者が生成 AI を使用して自動的に分析を表示し、わかりやすい説明を作成して、パフォーマンスの変化を関係者に通知することができます。その結果、全員に直感的でアクセスしやすい分析エクスペリエンスがもたらされ、すべてのユーザーにとってデータが実行可能でインパクトのあるものになります。
こうしたツールを使用すれば、直感的でアクセスしやすい分析エクスペリエンスを創出でき、すべてのユーザーにとってデータがアクション可能でインパクトのあるものになります。アクション可能な分析を実施することは Salesforce システム管理者の責務であるため、上記のツールを使用すれば、データドリブンの意思決定を促進し、分析でベストプラクティスを実践できます。また、こうしたツールを使用して、ユーザーの行動に対する理解を深め、組織の Salesforce インスタンスを向上させることもできます。各自の Salesforce インスタンスをカスタマイズし、ビジネス上の問題に対処する Agentforce のような AI 搭載ツールを統合して、分析機能でこうした変更の成果を測定することは、システム管理者の職務の重要な部分です。
エマージングテクノロジーは、システム管理者にとって目新しいツールというだけではありません。関係者、ユーザー、お客様など全員にとって、データを有意義でアクション可能なものにするツールです。