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人々を最優先にした言語やラベルを使用する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 作業において人を最優先にした言葉を考える。
  • タイトル、テキスト、ラベルが意味に与える影響について話し合う。

ラベルの影響

データコミュニケーターとリサーチャーは、データが現実の人々の生活や経験を反映しているということを忘れてはなりません。人々に関するデータであれば、その人々が誰であるのかを極めて明確にする必要があります。

視覚化では、ラベルが重要な意味を持ちます。言葉は生きています。呼吸をしています。常に変わり続けます。過去に使われていたラベルが今も受け入れられるとは限りません。それどころか不快感を与えてしまうことさえあります。ベストプラクティスは、たとえば「黒人」ではなく「黒人の人々」のようなラベルを使用することです。 

下の凡例で使用されている言葉はインクルーシブではありません。「More Black (黒人が多い)」と「More Poverty (貧困が多い)」のスケールでは、Poverty (貧困) は経験であって不変的な事実ではありません。また、More Black (黒人が多い) は人々そのものではなく肌の色を指しています。よりインクルーシブな表現に変えるのなら「貧困の状態にある人々の人口比率が高い」や「黒人の人口比率が高い」のようになります。実際に、肌の色ではなく人々に重点が置かれるように、この凡例は「More Black (黒人が多い)」から「Larger Black Population (黒人の人口比率が高い)」に変更されています。 

9 個の正方形が 3 行× 3 列に並んだ凡例。上には「More Black (黒人が多い)」というラベルと右向きの矢印、右には「More Poverty (貧困が多い)」というラベルと下向きの矢印がある

人々を最優先した言葉を使う

使用するラベルによって、人種のステレオタイプや他の弾圧の悪弊が残ってしまうことがあります。視覚化では、タイトル、注釈、ラベル、メモに隠された弾圧的な圧力、その作用、そして歴史的な背景をテキスト中に放置せずに変更することで、この状況に対処できます。

タイトル、テキスト、ラベルで使用する言葉を調べると、世界が特定の人々のグループをどのように見ているかが明らかになります。データストーリーテラーは、これらのラベルを工夫することで多くの弾圧に抗い、「人々を最優先にした」言語を模索できます。そのためには、まず現在使用しているラベルを理解する必要があります。

属性ではなくを強調する (例:「障害者」ではなく「障害を持つ人々」、「黒人」ではなく「黒人の人々」) ことにより、人々を統計的にカタログ化するのではなく、情報をより人道的にすることができます。不変的な事実を表すラベルを使用すると、収集されるデータに含まれる多くの意味合いが無視されたり失われたりすることがあります。 

たとえば、ある研究では、精神的な病気だと診断された割合を調べる際に、刑務所で服役している人々を「服役囚」と称しました。「服役囚」は、中立的で客観的な言葉に見えますが、犯罪や刑罰というラベルを付けることで、人々を非人道的に扱うことにもつながります。また、「服役囚」として括ってしまうと、服役している人々が精神的な病気の診断を受けやすいという事実に、人種などによる差別がどのように影響しているかという点が無視されてしまいます。 

この研究での発見点をより正確に表せば、たとえば、有色人種は精神的な病気の診断を受けにくく、白人は受けやすいという事実が浮き彫りになるかも知れません。このように、焦点を刑務所での「有色人種には与えられていない利点」から「中心的なグループに与えられている不公平な優位性」や「人種間の不均衡」にシフトすることで、服役囚という括りではなく、人々を重視することができます。

刑務所での白人、黒人、ヒスパニック、その他の人種の精神的な病気の割合を降順に示すグラフ。

メモ

リサーチャーやデータアナリストは、調査対象のコミュニティや調査のコンシューマーとの対話を通して、好ましい言葉や表現を理解し、データ、調査、そしてポリシーに関して推奨される考えを身に付ける必要があります。

進化する言葉に留意する

アンケートやデータセットで廃れた言葉や好ましくない表現を使用していると、言葉に関して厄介な状況を招くことがあります。結局、言葉とは流動的なのです。人々やコミュニティを表すための言葉やフレーズは、常に進化しています。 

たとえば、今ではヒスパニックやラティーノに替わってラティーネクスという言葉が使われています。新しい言葉が定着するまでには時間がかかることがあります。また、政治、年齢、人種、民族などのインターセクショナリティ (交差性) によって、好ましい表現が異なることもあります。最終的なレポート、グラフ、ダッシュボードにすでに組み込まれている元のアンケートの言葉やフレーズを今さら変えるのは、当然ながら気が進まないでしょう。ですが、共感的でインクルーシブな観点からデータを伝えるためには、必要なことなのです。

意図を込めてデータを順序づける

テーブルやグラフの棒の値の順序を元のデータから変える場合には、少し配慮が必要な場合があります。同じように、この順序の影響が見過ごされることもあります。ここでも、工夫によってインクルージョンを高めることができます。このような順序が人種的な階層を暗示する歴史的な慣習があります。米国で実施される大規模な人口統計アンケートの多くでは、人種に関する最初の 2 つの選択肢が白人と黒人になっています。

新型コロナウイルス感染症による死亡リスクの係数を、白人を基準として民族別に示したグラフ。白人が優先される、または中心的であるような印象や、分析の基礎となる要素であるかのような印象を与えている。

誰がテーブルの最初の行やグラフの最初の棒として示されるかにより、閲覧者はグループ間の関係や階層を感じ取ってしまいます。データの並び順によって、他のグループとの対比の基準となるデフォルトのグループや、視覚化の対象として意図されたオーディエンスを暗に示してしまうということです。白人、男性、異性愛者を常に最初に配置すると、これらのグループが最も重要なグループであるかのような印象を閲覧者に与えることになります。 

人種や民族のグループの順序を決めるときには、以下の点を考慮しましょう。

  • 特定のコミュニティに主眼を置いた研究では、そのグループを最初に配置します。
  • 最終的な順序は、強調したいポイントを反映するようにします。
  • グループの順序づけの裏付けとなる量的関係が存在する場合は (アルファベット順、人口順、サンプル数順、結果の効果順など)、それを採用します。

リソース

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