Einstein Language の使用開始
学習の目的
- 自然言語処理 (NLP) および AI との関係について説明する。
- Einstein Language API の概要を説明する。
- Einstein Language API を使用するさまざまなシナリオを説明する。
はじめに
あなたは、カスタムスニーカーを制作販売する小売企業 Cloud Kicks に勤務する開発者です。Cloud Kicks は、営業サイクルの管理から、注文の作成と履行、カスタマーサポートに至るまで、すべてのビジネスプロセスで Salesforce を使用しています。
Cloud Kicks は急速に成長しています。そのため、ビジネスプロセスの規模を拡大しながら、非常に素晴らしいと評判のカスタマーサービスを引き続き提供する方法を模索しています。
現在、Cloud Kicks の Web サイトには、顧客や見込み客が質問をしたり、サポートを受けたりするために入力できるサービス要求フォームがあります。このフォームの情報は Cloud Kicks の 1 つのメールアドレスに送信され、いずれかのカスタマーサービス担当が職務としてそのメールを適切な部署に転送します。

最初にこのサービス要求フォームを実装したときは、1 人の担当者が毎週数時間をかけてメールを処理し、転送していました。その後ビジネスが成長し、現在では 3 人のカスタマーサービス担当が毎日数時間この作業にかかりきりになっています。Cloud Kicks では、こうしたメールの転送を自動化して、処理できる要求数を大幅に増やしたいと考えています。そうすれば、カスタマーサービス担当はスキルを活かせる作業に専念できます。
Cloud Kicks の Web 開発者は、サービス要求フォームのコードを担当しています。一方、チームから開発を求められている機能では、顧客がフォームに入力したテキストに基づいてサービス要求の種類を識別する必要があります。ユーザが求めているサポートの種類に応じて、Web サイトがサービス要求を適切な部署のメールアドレスに転送します。つまり、Web サイトはサービス要求を適切な部署に送信し、カスタマーサービス担当は顧客のサポートに戻ることができます。

これはいつものソフトウェア開発課題とは異なります。よい開発者なら誰でもそうするように、あなたはパニックを起こさないと心に決め、すぐにインターネットでソリューションの検索を開始しました。そして必要なのは人工知能、特に自然言語処理であることがわかりました。
NLP の概要
自然言語処理 (NLP: Natural Language Processing) は、コンピュータと人間の言語のやりとりを示す用語です。NLP の「言語」部分は、具体的には人間が相互のコミュニケーションに使用する言語 (書き言葉と話し言葉の両方を含む) を意味します。NLP は人工知能 (AI) の 1 つの側面で、コンピュータが言語を分析して理解します。
NLP には比較的長い歴史があります。たとえば、スパムメールのフィルタリングは、かなり前からある NLP の実用的な実装です。スパムフィルタは、件名やメール内容などメールの構成要素を分析し、特定の語、語句、句読点が出現していないか探します。この分析に基づいて、フィルタはメールをスパムかそれ以外に分類します。
NLP への関心が再び高まっているのは、深層学習の進化によって NLP がさらに強力になり、現実の問題解決に役立つようになったからです。「深層学習」という新しい用語が出てきましたので、少しより道をして説明しましょう。
深層学習は機械学習の一分野です。深層学習で中心となるのは、人間の脳の機能、思考や意思決定などの機能を模倣するシステムを作ることです。深層学習では、大量のデータに対して高度なアルゴリズムを実行し、ニューラルネットワークを作成します。こうしたニューラルネットワークは与えられたデータから学習して、新しいデータの予測を返すことができます。たとえば、十分なデータがあれば、ニューラルネットワークはテキストを分析し、そのテキストが意味するものに対して判断を下すことができます。
深層学習が AI の最前線に出てきたのは 2 つの要因が重なったためです。実用的なニューラルネットワークを作るために必要な大量のデータを使用できるようになったことと、そのデータを処理するのに十分な処理能力と速度をコンピュータが備えたことです。データが重要なのは、人工ニューラルネットワークを作るのに使用できるデータが多いほど、ネットワークのインテリジェンスが高くなるためです。また、処理能力が重要なのは、そのデータを処理してニューラルネットワークを作るには多くのコンピューティング能力を必要とするためです。
深層学習は、NLP がテキストを分析し、語、語句、文章、段落を解釈して意味を理解できるようになったことを意味します。言語は曖昧で精度を欠くことが多いため、NLP はコンピュータにとっては難しい領域です。慣用句、複数の意味がある語、俗語、皮肉といった言語構成要素を、人間の脳は即座にすべて理解できます。現在、NLP は曖昧な言語を理解するのに十分な能力になったため、テキスト分析が実用レベルになり、問題を解決できるようになりました。
たとえば、「親戚訪問中です」という文章で考えてみましょう。この文章は「親戚を訪問している」とも「親戚が訪問している」とも取れます。人間はその文章を文脈の中で読み、その意味を理解します。深層学習が NLP に応用されたため、コンピュータが以前は理解できなかった微妙な言語を理解できるようになりました。文章のコンテキストがあれば、コンピュータは曖昧な文法を正確に解釈できるようになったのです。
Einstein Language の概要
あなたは解決すべき問題を特定し、その解決方法についてのアイデアもあります。さてどうしましょうか? うまい具合に、Salesforce Platform には Einstein Language が含まれています。Einstein Language API を使用して、アプリケーションに自然言語処理を組み込み、テキスト内の強力なインサイトを得ることができます。Einstein Language には、Einstein Intent と Einstein Sentiment という 2 つの NLP サービスがあります。
- 見込み客がどの商品に関心を持っているかを判断し、顧客からの問い合わせを適切な営業担当に送信する。
- サービスケースを適切なエージェントまたは部署に転送するか、セルフサービスオプションを提供する。
- 顧客の投稿を理解し、コミュニティでパーソナライズされたセルフサービスを提供する。
- 見込み客のメールのセンチメントや感情を識別し、リードや商談の増減をトレンド分析する。
- 不満のある顧客に最初に対応したり、満足した顧客へのプロモーションオファーを延長したりして、プロアクティブなサービスを提供する。
- ソーシャルメディアチャネル全体でブランドがどう認知されているかを監視し、ブランドエバンジェリストを特定し、顧客満足度に注目する。
よい知らせがあります。Einstein Language API を使用すると NLP をアプリケーションに組み込めます。そのためにデータサイエンスの博士号は必要ありません。アルゴリズムや統計に関する知識も必要ありません。それは Einstein Language が処理します。ユーザは特定の問題を解決することに専念できます。
ついにパズルのピースが揃いました。Einstein Intent API を使用してユーザがサービス要求フォームに入力したテキストを分析できます。API の分析に基づいて、サービス要求を適切な部署に転送できます。
リソース
- 『Einstein Platform Developer Guide (Einstein プラットフォーム開発者ガイド)』の「Introduction to Salesforce Einstein Language (Beta) (Salesforce Einstein Language の概要 (ベータ))」
- Forbes: What Is The Difference Between Deep Learning, Machine Learning and AI? (深層学習、機械学習、AI の違いとは?)
- Algorithmia: Introduction to Natural Language Process (NLP) 2016 (自然言語処理 (NLP) の概要 2016)
- Medium の Adam Geitgey のブログシリーズ: Machine Learning is Fun! (楽しい機械学習)
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