Einstein 予測サービスを知る
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- Einstein 予測サービス機能について説明する。
- 予測、改善、上位の予測因子について説明する。
- モデルと予測定義について説明する。
- モデルの作成と使用の違いを説明する。
- Einstein 予測サービスの対象となるビジネス分析の 3 つのユースケースを説明する。
Einstein 予測サービスとは?
Einstein 予測サービスは Einstein Discovery を基盤とするモデルや予測をプログラムによって操作できる公開 REST API サービスです。Einstein 予測サービスは次の目的で使用します。
- データに関する予測を得る。
- 予測された結果を改善するための推奨アクションを得る。
- Salesforce にリリースされる予測定義と予測モデルを管理する。
- 一括スコアリングジョブを管理する。
- モデル更新ジョブを管理する。
この Trailhead モジュールでは、Einstein 予測サービスの第一の用途である予測と改善の取得に焦点を絞ります。
予測、改善、上位の予測因子を知る
Lightning ページに表示される Einstein Discovery 予測パネルの例を見てみましょう。
この例では、Einstein Discovery を使用して商談成立までの期間を予測しています。これを知ることで、現在の会計期間中に成立する可能性の高い商談に優先的に取り組むことができます。
予測パネルには予測要求で返される主要な要素が表示されます。
# | 要素 | 説明 |
---|---|---|
1 |
予測 |
予測結果と説明ラベル。この例の商談は 29.5 日で成立すると予測されています。 |
2 |
上位の予測因子 |
予測結果への寄与が大きい条件。肯定的な寄与と否定的な寄与の両方を含みます。この例では、[Competitor Type is Known and Route to Market is Reseller (競合種別が既知で市場へのルートが再販業者)] という条件のときに、予測される成立までの時間が 2.02 日増えます。左側に表示されている上向きの矢印は、この予測因子によって予測結果が増えることを示しています。(緑ではなく) 赤い矢印は、この予測因子の影響が好ましくないことを示しています。ここでの目標は成立までの時間を最小化することであるためです。 |
3 |
これを改善する方法 |
予測結果を改善するためにユーザーが実行できる推奨アクション。この例では [Supplies Group to Car Accessories (用品グループを自動車の付属品)] に変更するアクションによって時間が 3.48 日削減されることを緑の下向き矢印が示しています。 |
Einstein 予測サービスはこの情報のいずれかまたはすべてを REST API を基盤とする予測リクエストへの応答で返します。各要素の詳細を学習しましょう。
予測
予測とはモデルによって生成され、過去の結果の統計的理解と指定された入力値に基づいて可能性のある将来の結果を表す派生値です。
詳しく見ていきましょう。
- 結果とは、理解して改善すべきビジネス結果のことです。通常、結果は販売利益や商談の成立などのビジネスの重要業績評価指標 (KPI) です。
- 予測は指定された入力値 (予測因子) に基づいてモデルによって生成される出力値を表します。モデルの等式は、結果がわかっている過去のデータを機械学習と AI を利用して徹底的に統計分析することで得られるものです。
- 将来は未知で不確実ですが、予測によって計算された範囲内の確率で発生する値が得られるため、不確実性をある程度下げることができます。
- 実際の結果は予測結果と異なる可能性もあります。これは想定範囲内です。この差が小さいか大きいかが予測精度の基準となります。予測精度についての詳細は Salesforce ヘルプの「予測定義のパフォーマンス監視の設定」を参照してください。
上位の予測因子
上位の予測因子は、予測結果に最も大きな影響を与える条件です (規模の降順)。条件は列に関連付けられているデータ値です。Einstein Discovery では予測因子は 1 つまたは 2 つの条件で構成されます。Lightning コンポーネントの例では、[Deal Size Category is 5.0 (商談規模カテゴリが 5.0)] は 1 つの条件ですが、[Competitor Type is Known and Route to Market is Reseller (競合種別が既知で市場へのルートが再販業者)] は 2 つの条件の組み合わせです。予測因子は予測変数または独立変数とも呼ばれます。
改善
改善とは、予測結果を向上させるために実行が推奨されるアクションです。改善は予測結果に影響するのであって、必ずしも実際の結果には影響しないことに注意してください。改善は、ユーザーが制御したり影響を与えたりすることができる変数、たとえば配送方法や登録者のメンバーシップレベルなどに関連付けられています。Einstein が推奨するアクションを実行することで、ユーザーは望ましい結果が起きる確率を高めることができます。
緑と赤の円で囲まれた矢印の意味
円で囲まれた矢印は予測因子や推奨アクションが予測結果にどのように影響するかを示しています。矢印の色と方向によって意味を解釈できます。
色
- 緑は予測因子によって予測結果が改善されることを示します。
- 赤は予測因子によって予測結果が悪化することを示します。
方向
上向きまたは下向きの矢印は予測因子が予測結果に及ぼす影響の方向を示します。たとえば、目標が結果を最小化することである場合、次のようになります。
- 下向きの緑の矢印は予測因子によって予測結果が改善されることを示します。
- 上向きの赤の矢印は予測因子によってこの結果が悪化することを示します。
Lightning コンポーネントの例では、[Deal Size Category is 5.0 (商談規模カテゴリが 5.0)] 条件は成立までの予測時間を長くするため、上向きの赤の矢印になります。
モデルと予測定義を知る
Einstein 予測サービスではモデルと予測定義の 2 つのリソースを操作することによって予測を取得します。
モデル
モデルとは、Einstein Discovery によって生成される高度な数学的カスタム構造のことです。Einstein Discovery ではモデルを使用して結果を予測します。
モデルでは変数によってデータが整理されます。変数とはデータのカテゴリです。CRM Analytics データセットの列や Salesforce オブジェクトの項目に似ています。モデルには入力 (予測変数) と、出力変数の出力予測、その他の必要な追加情報があります。
予測は観測レベルで行われます。観測とは構造化されたデータセットです。CRM Analytics データセットの入力済みの行や Salesforce オブジェクトのレコードに似ています。
各観測について、モデルは予測変数のセット (1) を受け入れて、対応する予測 (2) を返します。
必要に応じて、予測要求に、トピック予測因子と改善も返す指示を含めることもできます。
モデルは Einstein Discovery や Salesforce 独自のものではありません。実際、予測モデルは世界中のさまざまな業種、組織、分野で広く使用されていて、日常生活の非常に多くの側面に関わっています。優秀なデータサイエンティストやその他の専門家が、正確で有用な予測を生成する高品質なモデルの設計と構築に取り組んでいます。
ただし、多くの組織にとっての共通の課題は、精巧に作られたモデルを構築後に本番環境に実装し、対象となる業務にシームレスに統合するのが難しいということです。Einstein Discovery を使用すると、モデルを短時間で運用可能にすることができます。モデルを構築し、本番にリリースしたら、すぐにライブデータを使用して予測を取得し、より適切なビジネス判断を下すことができます。外部で構築されたモデルを Einstein Discovery にアップロードして運用可能にすることもできます。
予測定義
Einstein 予測サービスでは、すべてのモデルが予測定義と呼ばれるコンテナオブジェクトに属しています。次の図は 1 つのモデルを含む予測定義への予測要求を行う要求/応答フローを示しています。
この例では、顧客が離脱する確率を評価するために、予測要求 (1) が顧客レコードからの予測変数を予測定義に渡します。予測定義は入力データをモデルに転送し (2)、モデルは予測を計算して、その予測が要求者への応答で返されます (3)。
予測定義に複数のモデルを含めて、モデルごとにデータの異なる部分 (サブセット) に関する予測を生成することもできます。次の図は予測定義に 3 つのモデルが含まれ、各モデルで特定の地域の予測を生成する要求/応答フローを示しています。
この例では、顧客が離脱する確率を評価するために、予測要求 (1) が顧客レコードからの予測変数を予測定義に渡します。顧客レコード (観測) は AMER 地域に属しています。予測定義は入力データを AMER セグメントを処理するモデルに転送し (2)、モデルは予測を計算して、その予測が要求者への応答で返されます (3)。
予測が役立つユースケース
Einstein 予測サービスのビジネス分析の一般的なユースケースとして次のものが挙げられます。
ユースケース | 適用対象 | サポートされるアルゴリズム |
---|---|---|
数値 |
通貨、件数、パーセントなどの定量的なデータ (基準) で表される数値結果。 |
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バイナリ分類 |
テキストデータで表される二者択一のバイナリ結果。通常は、離脱するかしないか、商談が成立するか不成立か、従業員を保持できるかできないかなど、ビジネス用語で表現された「はい」/「いいえ」の質問です。分析のために、Einstein Discovery ではこの 2 つの値を Boolean の true と false に変換します。 |
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マルチクラス分類 | 3 ~ 10 のカテゴリから、可能性の高い結果を予測します。たとえば、メーカーは顧客属性に基づいて、顧客が 3 つのサービス契約のうちどれを選択する可能性が最も高いかを予測できます。 |
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次の単元では、数値のユースケースを実装するモデルを作成してリリースします。
モデルの作成と使用
Einstein 予測サービスを使用するときには、次の 2 つの活動について考えるとわかりやすくなります。
-
モデルの作成では、CRM Analytics Studio を使用してモデルを構築し、Salesforce にモデルをリリースします。たとえば顧客の離脱を予測するには、顧客が離脱するか留まるかを予測するモデルを誰かが提供する必要があります。次の単元ではモデルの作成とリリースの手順について説明します。
- モデルの使用では、リリースされたモデルを使用してデータの予測と改善を生成します。顧客の離脱の例では、Lightning ページでモデルを使用して予測、上位の予測因子、改善を表示しています。最後の単元では、任意の REST クライアントと Einstein 予測サービスを使用して同じ情報を取得する方法について説明します。
宣言的な予測の取得とプログラムによる予測の取得
Einstein 予測サービスから予測を取得するには次の 2 つの方法があります。
- 宣言的: 自動予測項目、プロセス自動化数式の PREDICT 関数、データプレップレシピの Discovery 予測変換、Salesforce フローの Einstein Discovery アクション、Tableau の Einstein Discovery で使用します。
- プログラム: APEX API と REST API を使用します。