データのインポートと統合
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- インテグレーションを正常に実装するために必要なツールと知識を理解する。
- インテグレーション戦略を構築するために必要な手順を挙げる。
インテグレーションとは?
インテグレーションは、異なるコンピューターシステムやアプリケーションを結び付けるプロセスです。教育分野のシステム管理者であれば、各自の教育機関に導入されている膨大な数のコンピューターシステムをスラスラと挙げることができるのではないでしょうか。学習管理システム (LMS) や学生情報システム (SIS) から、イベント管理ツールや請求システムまで、キャンパス全体の各所に構成員のデータがサイロ化されているという問題は珍しいことではありません。関与するシステム数に関係なく、データをインポートして Salesforce に統合するプロセスは、必ずしも思っているほど厄介な作業ではありません。データを統合した場合、その見返りが計り知れないことは言うまでもなく、その恩恵が長期に及びます。
インテグレーションには次の 2 つの要素があります。
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物理的なインテグレーション: システムやアプリケーションを実際に結び付けることです (本質的に技術的な作業のため、通常は IT 部門が任務にあたります)。
- ビジネスインテグレーション: どのデータをどのくらいの頻度で同期する必要があり、インテグレーションを既存のビジネスプロセスとどのように整合させるかを特定します。
この単元では、物理面とビジネス面の両方のインテグレーションに対処するインテグレーションツールやインテグレーション戦略の数種のベストプラクティスをご紹介します。では、教育機関に関連すると思われるデータインポートの初歩的な一連のシナリオから見ていきましょう。
一般的なインポートのシナリオ
インテグレーションのツールや戦略の説明を始める前に、各自の機関でインテグレーションが実施された場合にどのようになるかを考えてみましょう。インテグレーションによってどのようなことが可能になるかを把握しやすくするために、高等教育の各部署によるデータインポートの一般的なシナリオを下表にまとめました。
一般的なインポートのシナリオ |
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学生募集と入学事務 |
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学生エクスペリエンス |
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アドバンスメント |
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インテグレーションツール
インテグレーションタスクを計画するときは、既存のコネクタ、インテグレーションのゼロからの構築、ミドルウェアツールの 3 種類のソリューションを検討します。それぞれに役割や利点、実装前の考慮事項があります。インテグレーションツールの選定段階では、下表のようなツールの概要が貴重なリソースになります。ツールの定義や、機能と必要なリソースの説明のほか、利点、考慮事項、各ツールの使用例がすべて 1 か所にまとめられているため、オプションを比較検討することができます。
既存のコネクタの使用 |
独自のインテグレーションの構築 |
ミドルウェアツールの使用 |
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例 |
Gmail |
レガシーのオンプレミスアプリケーションへの接続を構築 |
MuleSoft |
内容 |
Salesforce 向けに特別に設計された既存のコネクタ |
Salesforce API または Salesforce Connect ツールを使用して外部アプリケーションからデータを取得し、そのデータを実際にデータベースにコピーして Salesforce に表示可能 |
システムを接続するために設計された個別のツール |
使用法 |
システム管理者が AppExchange のコネクタをダウンロードし、Salesforce で設定する |
開発者が接続とデータ交換を確立するコードを記述する |
ミドルウェアツールは、必要なシステムを接続するように設定されている |
必要なリソース |
Salesforce システム管理者 |
Salesforce 開発者 |
ミドルウェアツールを処理する Salesforce アーキテクトとシステム管理者 |
利点 |
最も簡単で明快なオプション |
ほとんどのカスタマイズが可能 |
すべてのインテグレーションの監視や追跡を一元管理 |
考慮事項 |
誰がツールを開発し、継続的なサポートやメンテナンスを誰が担当しているのかがわかるようにする |
開発者の知識を要し、少数のカスタムインテグレーション (通常は 2 ~ 3 種以下) に適している |
後々切り替えることが困難な場合があるため、長期にわたって快適に使用できるツールを選択する |
インテグレーション戦略
選択可能なインテグレーションツールを把握したら、次はインテグレーション戦略に取り組みます。データのインポートとインテグレーションには必要な時間をかける価値があり、手っ取り早いアプローチで済むプロジェクトではありません。
参考のために、ここでは計画から構築までの 5 段階のアプローチをご紹介します。
ステップ 1: 各自のデータと接続するために必要なものを理解する
この極めて重要な計画ステップで、データとプロセスを確定します。記録システムを指定し、毎月取り込んだり更新したりするデータの量を見積ります。この見積もりからコストの概算を把握できます。
ステップ 2: データを更新してインポートする頻度を決める
このステップには「リアルタイム」と「一括処理」の 2 つのオプションがあります。
リアルタイムインポートでは、データが常に最新の状態に維持されますが、このインポート方式ではエラーが発生したり、組織の処理速度が低下したり、データストレージの使用量が 1 か月の予定量を上回る可能性があります。
一括処理インポートでは、データストレージの制限に応じて処理時間を設定でき、特定の時刻 (組織の他のプロセスや作業に支障を来さない、さほど忙しくない時間帯) にスケジュールできますが、データに最新情報がすぐ反映されません。
ステップ 3: システムの「所有者」を特定する
「各システムの窓口となる担当者は誰か?」と自問します。Salesforce システム管理者であることもあれば、IT 部門や、ISV パートナーである場合もあります。あらゆる機関に当てはまる汎用的な答えはなく、担当者、部署、サードパーティが共同所有することもあるかもしれません。システム所有者を定義すれば、エラー時にすべての所有者が連絡を取り、協力してトラブルシューティングに取り組むことができます。
ステップ 4: 整理して優先順位を付ける
このステップの開始時にまずインテグレーションの主なコストを特定します。データストレージについて、「拡張する必要はあるか」「そのためにはどのくらいのコストが生じるか」など、現在のオプションや制限を検討します。さらに、各自の機関でコネクタやミドルウェアが必要になる場合はそのコストも検討します。
次に、インテグレーションで「最初に統合する必要があるものは何か」「後回しにできるものはどれか」といった順序を決定します。こうした質問への回答は、先程のコスト分析や、各自の機関で何を最重要プロセスと考えるかによって異なるものと思われます。特定のインテグレーションをグループ化して、どのインテグレーションが関連し合っているかを明らかにすることも一案です。その結果、あるインテグレーションが別のインテグレーションに影響を及ぼすため、インテグレーションの優先順位が変わってくることがあります。
ステップ 5: インテグレーションを設計して構築する
最後のステップです! 設計と構築のフェーズに進んだら、あらゆる成果物と仕様をドキュメント化します。技術要件、予想されるプロセスの結果や改善点、インテグレーションによって達成すべき内容に関する明確なドキュメントを作成し、進捗状況を監視できるようにします。
インテグレーションが構築されて実装されたら、戦略分野のリーダー、ビジネスユニットのリーダー、他のシステム管理者、エンドユーザーからフィードバックを収集します。
EDA データディクショナリ
ここで、インテグレーションのドキュメント化とメンテナンスに大いに役立つと思われるツールをご紹介します。EDA データディクショナリを使用すると、アーキテクチャのさまざまな要素を簡単に理解することができます。この単元の末尾にある「リソース」セクションにデータディクショナリへのリンクが記載されています。
各自の組織でデータディクショナリを機能させるにはどうすればよいのでしょうか? Salesforce ではシステム管理者がデータディクショナリを出発点として使用し、組織で構築するすべてのカスタムオブジェクトをこのディクショナリに追加することをお勧めします。データをこうした手法でドキュメント化することは、システム管理者がどのデータをどこに配置する必要があるのかを理解している必要のあるインテグレーションで特に役立ちます。各自の組織でデータディクショナリを機能させるにはどうすればよいのでしょうか?
インテグレーションのツールと戦略を確認したら、各自の機関でのデータのインポートとインテグレーションに関する話し合いに準備万端で臨むことができます。さらなる情報を知りたい場合は、以下のリンク先のリソースを確認してください。
EDA の設定とデータのインポートの詳細について学習するジャーニーが終了しました。このモジュールで、EDA の設定とカスタマイズについて知りたかった質問の答えが明らかになったのではないでしょうか。また、EDA を調整して各自の機関を的確に反映するものにするために、ここで取り上げたトピックへのアプローチについて新たな疑問が浮上したかもしれません。各単元の「リソース」セクションに目を通し、Trailhead の最新トレイルに取り組んで、今後も教育分野の優れたシステム管理者としてのスキルを高めていくことをお勧めします。