ビジネスを評価する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- ビジネス目標が組織構造にどう影響するかを説明する。
- 所有権と権限を定義し、その 2 つが重要である理由を説明する。
- どの組織モデルが自社のビジネスに最適かを特定する。
E コマースは画一的なものではありません
どのブランドまたは組織もそれぞれ異なっています。特定の地域に存在して 1 つのチームが一元管理しているブランドや組織もあれば、世界のさまざまな場所で複数のブランドを展開する大企業もあります。このような規模と地域のバリエーションは、ブランドが E コマースをどのように運営するかを決定する多くの要素のほんの一部です。このモジュールでは、コマースリーダーや意志決定者が成功に向けてビジネスやチームを構成するために役立つ主な考慮事項について学習します。
まずは、自分の組織と目標を正直に評価するところから始めます。自分のビジネスが現在どのような構造になっていて将来はどうしたいかをしっかりと理解することで実装の方針が定まります。
拡張と拡大が組織構造に及ぼす影響
コマース目標を評価するときには、それが長期的にビジネス構造にどのように影響するかを考慮します。デジタルトランスフォーメーションを計画し、将来のビジョンを描くときには、次のような重要な質問について検討します。
- ブランドはいくつあるか? ポートフォリオに新しいブランドを追加する目標がある場合は、各ビジネスユニットが独立して運営するかどうかと、それぞれがどの程度の自主性を持つかを検討します。複数のブランドに明確な統一感を持たせる場合は、ガイドラインとベストプラクティスを確立してからシステムを実装し、すべてのビジネスユニットがそれに従うようにする必要があります。
- デジタルイニシアチブに関して自分の組織はどの程度成熟しているか? ビジネスを拡大するには、今後新しい E コマース機能を作成することになるのは間違いありません。新しいデジタルエクスペリエンスを社内チームが担当するのか、パートナーからの協力が必要かを判断します。
- 他の地域に拡大する目標があるか? 海外に進出する目標がある場合は、チームに大きな影響を及ぼします。さまざまな地域で運営する場合、サイトを新しい言語に翻訳したり、各地域のデータとプライバシーの規制に従ったり、運営の変更についてコラボレーションを行ったりする必要があります。
目標について熟考し、自社のビジネスにとって成長とはどのようなものであるかを判断したら、次のステップは所有権と権限を確立することです。
デジタルファーストのリーダーシップの役割を確立する
E コマースジャーニーを始める前に、社内の責任を定義するすべてのルール、リレーション、システム、プロセスを確立する必要があります。
次のシナリオについて考えてみましょう。高級なカスタムスニーカーを扱う Cloud Kicks は子供向けの新しいブランドを立ち上げたいと考えています。この新しい E コマース体験のロードマップを担当するのは誰でしょうか? 会社はブランドの立ち上げと開始後の管理を行うための新しいチームを作るのでしょうか? 役割を適切に定義することで、会社は新しい実装を計画するときに、責任を明確にすることができます。
明確な所有権を確立することは、ビジネスとチームの管理と監督の確かな基盤を築くことにつながります。それによって個々のチームが提供されたフレームワーク内で業務を行うための指針となる構造と明確さが得られます。最終的には、ガバナンスによって所有権が定義され、より早い成長が可能となり、チームの生産性が向上します。
4 つの運営モデル
所有権と責任によって社内の監督が定義されますが、運営モデルを使用することで、さらに構造が明確になります。運営モデルではビジネス内の役割と報告体制が確立され、この体制がビジネス目標に沿ったものであることが確認されます。所有権がビジネスの基本的な枠組みであるとすれば、運営モデルは最終ドラフトです。通常、e コマースを運営するビジネスは中央集中モデル、分散モデル、センターオブエクセレンス、ハイブリッドモデルの 4 つのカテゴリのいずれかに分類されます。それぞれの内容と長所と短所について見ていきましょう。
中央集中モデル
中央集中モデルは、1 つの専門チームが複数のビジネスユニットのすべてのデジタル活動 (マーチャンダイジング、マーケティング、SEO、分析、開発など) を統率している場合に最適です。ほとんどの小規模な E コマースビジネスはこのモデルを採用しています。たとえば、1 つのブランドで直販 (D2C) を行う新興企業は、中央集中モデルを採用することで、デジタル成熟度がまだそれほど高くないうちに簡単に E コマースを開始できます。
中央集中モデルの長所と短所
✔️ 1 つの専門チームが明確なビジョンを持っている。
✖️ 新しい地域に進出したり新しいブランドを追加したりする場合に拡大が難しい。
分散モデル
分散モデルでは、通常、各ビジネスユニットが各自のデジタル変革の主導権を持ち、各自のイニシアチブにのみ責任を持ちます。大手の持ち株会社が、1 つのポートフォリオ内に複数の明確に異なるブランドを持っている場合、分散モデルを使用すれば、各ブランドは独立して運営され、各サイトは個別に管理できます。UX デザイン、機能、インテグレーションに関して一貫性は必要ありません。
分散モデルの長所と短所
✔️ 多様なブランドや地域で事業を行う企業が高い自由度を得られる。
✖️ 複数のビジネスユニット間で一貫した方針を求めるブランドには適していない。
センターオブエクセレンス
センターオブエクセレンスとは、通常、テクノロジーのテスト、リリース、管理を行うデジタルスペシャリストのコアチームであり、多くの場合はマーケティング担当が最前線で指揮を執ります。このチームが最重視するのは、組織内のすべての事業部門向けのガイドラインとベストプラクティスを作成することです。その目標は、カスタマーエクスペリエンスを改善し、デジタル計画によって競争上優位に立つことです。
センターオブエクセレンスの長所と短所
✔️ 多様なブランドや地域で統一感を得られる。
✖️ ビジネスユニット間の統一が義務付けられるため、ブランドの自主性が損なわれる可能性がある。
ハイブリッドモデル
ハイブリッドアプローチは、分散モデルのブランドの自主性と、センターオブエクセレンスの監督と全般的な指針を組み合わせたものです。これによって、個々のブランドが他とは異なる個別の体験を提供できる組織構造が形成されるのと同時に、中心的なエキスパートチームが定めたベストプラクティスに従うこともできます。
ハイブリッドモデルの長所と短所
✔️ ブランドは戦略的な指針に従いつつも自主性を維持できる。
✖️ ブランドが推奨事項を採用しない場合には衝突と余分なコストが発生する可能性がある。
次のステップ
ここでは、自社のビジネス構造を評価し、どの組織モデルが自社に最適かを判断しました。次は、E コマースの成功に欠かせない主要な役割と活動について学習します。