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各自のビジネスについて問う、最も重要な 5 つの質問を理解する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • Peter Drucker が提唱した「最も重要な 5 つの質問」を検討し、組織が注力すべき事項を判断する。
  • 5 つの質問のそれぞれの意義について説明する。
  • 上記の質問をシステム管理者のロールに適用する。

はじめに

最大の過ちが生じるのは、答えが間違っていたためではない。Peter F. Drucker

この単元では、そのビジネスの本質と顧客にもたらす価値について考察することを企業に促すために、Drucker が考案した「最も重要な 5 つの質問」を検討します。

企業がこの 5 つの質問に対する明快かつ端的な答えを見出せば、お客様にとって、ひいてはビジネスにとって本当に大切なことにリソースを注力できるようになります (図 3)。

経営陣や上級管理職の各人はこうした質問に明確に答えられるべきであり、各従業員も質問の基本的な概念を理解している必要があります。

Drucker の「最も重要な 5 つの質問」

図 3.Drucker の「最も重要な 5 つの質問」

注意: 上記の質問は、わかりきったことのように思えるかもしれませんが、顧客や市場が常に変化していることを考えれば、そう簡単なものではありません。こうした質問を常に問い直す必要があります。

質問 1: ビジネスの目的は何か?

質問 1: ビジネスの目的は何か?

至って簡単な質問のように思えますよね? 実際には、なかなか侮れない質問です。ビジネスの目的は、「お金を儲けること」でも、「顧客を満足させること」でもありません。この 2 つはどのビジネスも生き残るためにしなければならないことです。ビジネスの目的は、なぜその企業が存在するかということであり、顧客の視点でどのような意義をもたらしているかということです。

当校の卒業生にウォール街で働いている人がいます。この彼が新しい顧客に対応する際、いつもこの点を自問していると述べていました。最新のテクノロジーやイノベーションで顧客の関心をかき立てることは多々あるものの、根本的な質問が、「自社の価値提案はどのようなもので、顧客にとってこの価値は永続的なものか?」という点であることに変わりはありません。

皆さんがご存知の Southwest Airlines のビジネスを例に考えてみます。40 年以上前の設立時、創業者は次のように宣言しました。

搭乗客がある場所に行きたいと思ったとき、その目的地まで時間どおりに、できる限り低価格で、かつ快適な旅を楽しめるようにすれば、人々はその航空会社を利用する。

まったくそのとおりです!

優れた業績を上げている組織は、自社の目的を理解し、その目的に基づいて説得力のあるビジョンやミッションを掲げています。こうした理念で従業員を鼓舞し、部門間の連携やリソースの調整を促し、判断や行動の指針とし、あらゆるレベルの人々の能力向上や動機付けに活用しています。

また、目的についての質問を問うことで、上級管理職にとって根本的な問題が浮上します。目的が不明瞭であったり、顧客から見て意味がなかったりすると、リソースを適切な方向に集約することが難しくなります。また、管理職が企業を統率したり、活動を遂行したりするためにどのような情報が必要なのかを把握しづらくなることがあります。

最後に、ビジネスの目的は、顧客や市場の変化に応じて変わることがあります。こうした変化を見抜けなければ、調整に失敗したり、チャンスを逃したりすることになりかねません。逆に言うと、ビジネスの目的をいかに推進するかに注意を払っていれば、大きなチャンスにつながる可能性があるということです。

この好例が、バーモント州ワイッツフィールドにあるオーガニックコーヒーの小さな企業が、一人用のコーヒーメーカーを開発しているという人物から連絡を受けたときの対応です。Green Mountain Coffee は Keurig への投資によってその目的と価値を発展させました。

その Web サイトにも、「最先端のテクノロジー企業の画期的なイノベーションと、社会意識が高いプレミアムコーヒー企業の消費者志向が融合して、テクノロジーと価値に基づく画期的な個人向け飲料システム企業となり、今日の Keurig Green Mountain が存在しています」と記載されています。この企業の年間収益が 50 億ドルに上ることも付け加えておきます。

ではここで、この質問があなたの組織にどのように適用されるか考えてみましょう。図 4 にヒントが示されています。

Q1.私たちの目的はどのようなものか?

「目的とは ... 地平線の先に輝く星のようなものである。そこを目指して進み続けるが、決して到達することはない。目的自体は変わらなくても、変化が促されることがある。」Jim Collins

組織のビジョン、ミッション、価値に関する声明を検討します。どの点から組織の明確な目的が示唆されますか?

顧客になったつもりで、「私はなぜこの組織の顧客なのか?」「この組織の商品やサービスによって私の生活がどのように向上するか?」と自問します。

続いて、組織の存在意義を 1 ~ 3 つの文に書き留めます。

図 4.組織の目的を見極めるためのヒント

質問 2: 私たちの顧客はどのような人々か?

質問 2: 私たちの顧客はどのような人々か?

これも簡単な質問のように思えます。けれども、前回と同様、そう簡単に答えられるものではありません。ここでは、顧客の具体名を挙げるのではなく (例:「私たちの取引先は Costco です」)、抽象的な言葉で顧客を説明し、顧客のカテゴリやグループを定義します (例:「私たちの顧客は消費財の倉庫型ディスカウント店です」)。

顧客のこうしたグループやカテゴリをセグメントといいます。企業が注力する特定のセグメントをターゲットセグメントといいます。ここで重要なことは、ターゲットセグメントの特徴を把握して、ターゲットとつながり、ターゲットが望むソリューションを考案することです。

Edward Jones がごく平均的な投資企業であった頃、Peter Drucker に助言を求めて連絡してきました。1980 年代半ば、手紙 (郵送です!) でのやり取りりの後にミーティングを重ね、ターゲットとする市場セグメントを絞り込み、その後世界的な成長を遂げています。もう少し詳しく説明すると、Edward Jones は農村地域の保守的な個人の長期投資家を対象とする事業として設立されました。Drucker は、都会にもそうした顧客が大勢いると説得したのです! Edward Jones はその後すぐ主たる大都市市場に進出し、現在では 11,000 以上のオフィスを構え、700 万人を超える個人投資家を相手に事業を展開しています。

もちろん、固定客ばかりではありません。むしろ、常に変化し、進化しています。顧客のことをよく知っているつもりでも、時として驚かされることがあります。ですから、組織は常に、「現在の顧客はどのような人々か? 顧客は変化しているか? その変化は組織にとってどのような意味があるか?」と自問する必要があります。

美術館についても考えてみましょう。美術館は常に市場のさまざまな要素の変化を察知し、うまく適合していかなければならないというプレッシャーにさらされています。たとえば、Denver Museum of Art では、ミレニアル世代の来館者の関心事を明らかにし、その世代が楽しめるようにプログラムを進化させるために、数年に及ぶ取り組みを敢行しました。美術館業界では音楽会、夕べのイベント、インタラクティブな演出が一般的になっているため、あなたの街でも同じような催しが行われているのではないかと思います。なぜでしょうか? 美術館を、若い世代が好んで出かける場所として位置付けることに価値があると考えられているからです。

図 5 のヒントを参考に、この質問に対する各自の組織の明確な回答を考えてみましょう。

Q2.私たちの顧客はどのような人々か?

「私たちのビジネスのあり方を知る第一歩は、『私たちの顧客はどのような人々か?』という質問を提起して、実際のお客様と潜在的なお客様について検討することである。」Peter Drucker

通常、この点を探る適切な出発点となるのは、営業、マーケティング、商品管理の各部門のマネージャーと話をすることです。「各マネージャーはどのような人々を主要な顧客と考えているか?」「彼らの目には顧客像の変化がどのように映っているか?」「特定のセグメントが成長あるいは縮小していないか?」などと質問します。

話を聞くもう 1 つの相手と考えられるのが、ソーシャルメディア部門 (またはその担当者) です。「ソーシャルメディア活動で何をターゲットにしているのか?」「ソーシャルメディアで活発に活動しているのはどのような顧客か?」と質問します。

続いて、組織の主要な顧客と思われる人物像を書き出します。Salesforce でこうした顧客を追跡していますか、あるいは追跡することが可能ですか?

図 5.顧客を特定して定義するためのヒント

質問 3: 顧客が重視しているものは何か?

質問 3: 顧客が重視しているものは何か?

先行の質問とは異なり、この質問は顧客にしか答えることができません。

Drucker は、顧客が重視していることと、顧客が重視していると企業が考えていることの間には往々にして相当のギャップがあるという重要なインサイトを示しています。ここで重要なのは、「顧客が」どのように感じているかです。顧客が何を重視しているかわかっているという思い込みは危険です。上級管理職は、従業員が体系的な方法で顧客と直接対応し、顧客にとって何が大事で、こうした価値を競合他社よりも優れた方法でもたらすにはどうすれば良いかを解明できるようにする必要があります。

この好例が、患者エクスペリエンスに焦点を当てた Cleveland Clinic の画期的な取り組みです。Cleveland Clinic が患者アンケートを実施した結果、患者は病院の臨床実務には概ね満足しているものの、院内での看護師や介助者、医師の対応の改善を望んでいることが明らかになりました。患者の認識をさらに掘り下げたところ、患者が満足感よりも深い意味でのケア全体のエクスペリエンスを重視 (評価) していることが判明しました (図 6 を参照)。

患者のエクスペリエンスと患者の満足度は異なります。

図 6.Cleveland Clinic では顧客が何を重視しているかに着目

そこでこのクリニックは、最高エクスペリエンス責任者が率いる業界随一の「患者エクスペリエンスオフィス」を設置し、「患者第一」の実現に向けた管理や評価、トレーニングを行っています。患者が何を重視しているかを理解し、その価値を充実させるという取り組みは、現在、全米、さらには全世界で評価されています。

図 7 に、各自の組織で顧客が重視するものを見出して充実させるためのヒントが示されています。

Q3.顧客が重視しているものは何か?

「顧客のニーズ、要望、願望を満たすにはどうすれば良いかという問いの答えは極めて複雑で、顧客自身にしか答えられないことがある。」Peter Drucker

相手の要望を把握する最善の方法は、面談やアンケート、フォーカスグループやソーシャルメディアなどを駆使して顧客に直接尋ねることです。マーケティングチームや営業チームがこうした情報を収集しているものと思われます。

また、顧客のフィードバックやレポートを確認することや、ソーシャルメディアサイト (ある場合) をチェックすることも役立ちます。

その後、価値に対する顧客の認識をうまく言い表している 1 ~ 3 つの発言やコメントを書き留めます。Salesforce を利用してこうした情報を見つけたことがありますか、あるいは見つけることができると思いますか?

図 7.顧客が重視しているものは何かを把握するためのヒント

質問 4: 私たちの成果はどのようなものか?

質問 4: 私たちの成果はどのようなものか?

企業がその使命をきちんと果たしているかどうかはどうすればわかるのでしょうか? 理想的なのは、成果から、企業がその目的 (質問 1 を参照) をどの程度達成しているか測定することです。目的の達成を測ることは容易いことではありません。バランススコアカード (このトレイルで後述) などのフレームワークを使用すれば、目的を測定しやすくなります。

実際、大半の企業が結果を評価するためには、パフォーマンスの目標と評価指標を設定し、ベンチマークを確立して判断する必要があると考えています (図 8 を参照)。

ビジネス評価指標: 売上、顧客、市場、財務、人材、ソリューション、サービス、ソーシャル

図 8.評価指標やベンチマークを設定する一般的な領域

成功するためには、次の 2 点に注意を払う必要があります。

  • 適切な評価指標を設定する: 測定する対象を確実に捉える評価指標が必要ですが、確実に捉えるためには綿密な検討が欠かせません。性急に設定した評価指標は裏目に出る可能性が高くなります。評価指標の達成をパフォーマンス目標にしている場合には、数値を達成すればそれでよいと思われる可能性があるため注意が必要です! たとえば、名前は伏せますがある企業では、顧客からカスタマーサービスの保留時間が長すぎるという苦情が何度も届いていました。そこで、カスタマーサービス部門のパフォーマンス評価指標として、平均保留時間の短縮を設定しました。さらに、達成すればボーナスを支給することにしました。どうなったと思いますか? カスタマーサービス担当者がすぐに電話を取り、お客様の名前と電話番号だけ聞いて電話を切るようになったのです。平均保留時間は劇的に減少しましたが、解決までの時間が悪化しました。顧客の不満はそれ以上に増大しています。カスタマーサービス VP が解任されたものの、ダメージは大きく、後の祭りです。
  • 結果を正しく解釈する: このためには、ビジネスに対する理解を深めることが求められます。通常は、数字とともにインサイトやコンテキストを伝えることで、誰もが適切な判断を下せるようになります。コンテキストを考慮することなく、あるいは何を測定するのかを理解することなく、指標を鵜呑みにすれば悲惨な結果を招きかねません。たとえば、一概に「平均」であれば問題ないとはいえません。ある企業で主力商品の業績は悲惨ながら、ビジネスの衰退事業が予想以上の業績を上げている場合、数値だけ見れば平均的であるように思えるかもしれませんが、大きな問題を抱えています。

つまり、ここで重要な点は、好ましい状況がどのようなものかを定義し、パフォーマンスの適切な評価指標は何かをじっくり検討することです。効果的なマネジメントでは、評価指標が何を表し、結果をどのように読み解くべきかを全員が理解している必要があります。図 9 のヒントをこの出発点にすることができます。

Q4.私たちの成果はどのようなものか?

「バランスの良い取り組みを実現するためには、あらゆるレベルの管理職全員の目的を、短期的な考慮事項と長期的な考慮事項の両方を見据えたものにする必要がある。」Peter Drucker

このベストプラクティスは、パフォーマンス評価指標がバランスの取れたアプローチに基づき、測定値が次のそれぞれのカテゴリに該当することです。

  • 顧客の認識
  • 財務実績
  • 運用 (効率性と有効性の測定値)
  • 組織的な知識と能力
  • 社会貢献

各自の組織の直近の年次報告書を確認して、主な成果を 1 ~ 3 つ書き留めます。Salesforce にこうした成果が示されている、または示すことが可能であると思いますか?

図 9.組織の成果を判断するためのヒント

質問 5: 私たちの計画はどのようなものか?

質問 5: 私たちの計画はどのようなものか?

先行の質問に答えれば十分ではないかと思うかもしれませんが、あと 1 つ必要なものがあります。計画です。その理由は簡単です。

「計画のない目標は、願い事でしかない。」Saint Exupéry (同氏の著書に記載)

組織の計画には、その組織が目指すもの、そこに到達する方法、そのために必要なリソースを記述します。また、計画は現実に即したものでなければなりません。さもなければ、ただの願望になってしまいます。

計画の作成は、困難な決断を伴う大変な作業です。優れた計画には、企業のミッションやビジョン、目標と目的、方略、活動、アクションステップが記載されています。

また、現実的な予算についても言及されています。計画の財務に関する部分は、財務や会計の詳細に触れることなく、企業が掲げた目標を収益化できる形で実践する方法を示します。財務計画は、今後の売上高や運営コストなど、将来の見通しに基づく予測 (と仮定) です。

最終的には、計画を効率的な方法で実践する必要があるため、その具体的な内容を組織の全員が理解して受け入れる必要があります。そのためには努力を要します! ただし、Drucker が述べているとおり、これこそがマネジメントを実践する真の使命であり、全員が同じ方向に進むチームを構築するということです。

各自の組織の計画について理解を深めたいと考えている場合は、図 10 のヒントが出発点になります。

Q5.私たちの計画はどのようなものか?

「計画を立てるということは、判断材料となる事実を挙げることでも、リーダーシップのあり方を示すことでもない。計画では、分析、勇気、経験、直感 (根拠に欠ける勘を含む) の重要性を認識する。計画は、技法ではなく、責任である。」Peter Drucker

このテーマに関する組織の戦略計画など、エグゼクティブレベルのコミュニケーションを確認します。

続いて、成果を判断して追跡し、計画を実現するうえで、Salesforce を最大限に活用した、または活用できると思われる分野を 1 ~ 3 つ書き出します。

図 10.組織の計画を把握するためのヒント

まとめ

「最も重要な 5 つの質問」は、組織が成功を収めるためにリソースを把握して集約するための基本的なメカニズムです。この手法は世界で広く活用されており、組織に有形の価値をもたらす一連の活動を可能にします。

後続の単元では、5 つの質問で示された方向に沿って組織の価値を高めようとしている組織が Salesforce を活用する事例を検討し、システム管理者がどのようにサポートできるかを検証します。

リソース

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