情報を使用してより適切なビジネス上の意思決定を下す
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 効果的な論拠と提案を組み立てる。
- 正当な理由と関係を構築する。
- 証拠の有効性を高めるためのベストプラクティスを適用する。
効果を高めるために論拠と提案を組み立てる
多くの場合、組織で使用する情報は、論拠や提案の形をとる必要があります。その方法の 1 つが、確かな論法と証拠に裏付けられた主張という観点から考えることです。また、ありそうな反論については、積極的に認識して対応する必要があります。Booth、Colomb、および Williams (2008) による著書にヒントを得て、このスキームを次の図に示します。
たとえば、営業業務の改善のために人工知能 (AI) の採用を提案したい場合、その論拠は次のようになるでしょう。
提案/主張 |
営業結果を向上させるために、CRM システムに AI を追加することをお勧めします。 |
理由 |
インテリジェントなシステムを使用することで、大量の顧客データをより効果的に分析し、販売予測を改善できます。 |
証拠 |
Salesforce Research が 3,100 人以上の世界中の営業担当を対象に実施したアンケート調査によると、インテリジェントな機能を使用した場合、予測精度に大きなプラスの影響がある可能性は、パフォーマンスの高い営業チームのほうがパフォーマンスの低い営業チームよりも 10.5 倍高くなることがわかりました。 |
上記の例の提案はうまくいきそうに見えますが、追加のソースからより多くの証拠を示し、プラスの影響をさらに明確にすれば、説得力が増す可能性があります。
組織環境では、主張を裏付けるために一般原則を使用することもよくあります。この一般原則は、俗説や言い伝えではなく、研究や長年にわたって積み重ねられた証拠に基づいていることが望まれます。次に例を示します。
提案/主張 |
日曜大工道具の在庫を減らす必要があります。 |
一般原則 |
経済状況が軟調になると、住宅建設は減少します。 |
証拠 |
複数の一流エコノミストが今後 24 か月で景気が弱まる可能性があると予測しています。 |
上記の例では、一般原則が妥当で適用可能かどうか、また証拠が妥当かどうかを評価することになります。経済状況が軟化すれば、日曜大工道具の売上は減少する可能性が高いと示唆されていますが、その関係の裏付けは示されておらず、証拠もかなり曖昧です (つまり、そもそも「軟化する可能性がある」とはどういう意味なのか)。つまり、これはすばらしい提案かもしれませんが、さらに議論する必要があります。
上記の例は、有意義な論拠と提案の構成方法を説明することを目的としています。理想的なのは、論拠や提案を支える理由を複数示し、それぞれの理由に複数の証拠を提示することです。
正当な理由と一般原則を示す
理由と一般原則は、相手がこちらの主張を受け入れる動機となり、証拠の土台を築きます。ただし、組織環境では、しばしば滑稽な結果や悲惨な結果をもたらす誤った論法に頼っている人をよく見かけます。幸いにも、確かな理由や一般原則を見つけるのに役立つ基本原則があります。そのいくつかを見てみましょう。
- 因果関係: ビジネスでは、関連性 (相関関係) に基づいて理由や一般原則を見つけるのが一般的です。これは一部の関係では問題ありませんが、因果関係を使用することをお勧めします。たとえば、ある企業が、自社の Web サイトを訪問してホワイトペーパーをダウンロードした人は、購入を行う可能性が 75% 高いという関連性を見つけたとします。これは、質の高いホワイトペーパーを用意する正当な理由のように聞こえます。ただし、ホワイトペーパーをダウンロードしたからといって、その人が購入に至るわけではありません。そのため、これをより多くのダウンロードを生み出すためのイニシアチブを支持するする理由として使用することは疑問視されるべきです。人のニーズや要望など、何が購入の原因になっているかを重視するほうがよいでしょう。
- アルゴリズム: アルゴリズムは非常に重宝されていて、通勤経路の地図、天気予報、ストリーミングする曲の選択、さらには最初にサポートすべき顧客の特定にも役立っています。このビッグデータの時代、アルゴリズムと AI は急速に生活に浸透しています。実にワクワクしますが、一部のアルゴリズムは (まだ) それほど優れていないことにもお気付きでしょうか? ナビゲーションシステムで時々遠回りさせられたり、職場の新しいスマートスケジュールシステムによって大混乱が起きたりするかもしれません。この原因は、プログラミング、データ、または他の要因である可能性があります。要は、アルゴリズムの出力を受け入れる前に、それが理にかなっているかどうかを確認するために見直すのが賢明であるということです。特に、論拠と提案の裏付けとして使用しようとするのであればなおさらです。
- モデル: 実際には、結果に関与する要因は複数であることがよくあります。すべての要因を論拠に使用しなくても、特に自分の推論に対して反論が予想される場合には他の要因を熟知しておくと役立ちます。要因の裏付けとその要因がどのように結果に影響するかについての研究を見つけるには、Google Scholar にアクセスして、「<トピックを挿入: イノベーション、顧客満足度、ユーザー採用など> のモデル」で検索してください。たとえば、下の表には、顧客エンゲージメントの行動と結果に焦点を当てたある研究で調査された要因がまとめられています。このリストには、検討すべき要因が多数示されています。
背景
|
顧客エンゲージメント行動
|
結果
|
顧客ベース
|
|
顧客
|
企業ベース
|
企業
|
|
コンテキストベース
|
その他
|
出典: van Doorn 他 (2010)
証拠に留意する
必要な証拠は、状況の重要性と重大性によって大きく異なります。IQ の側面と特性を使用して証拠を評価することに加え、次の厳選されたベストプラクティスのリストが役に立ちます。
証拠のベストプラクティス
|
|
次の質問を使用して論拠をテストする
論拠や提案を組み立てたら、本番前にテストします。これに役立つように、よく尋ねられる質問をいくつか紹介しましょう。
- 他にもっと妥当性の高い選択肢はないのか? たとえば、売上を伸ばすために新しいメールマーケティングスキームを採用することが提案された場合、提案された側は売上を伸ばすためにより効果的な他の選択肢はないかと当然尋ねてくるでしょう。
- 推論と証拠は理にかなっているか? 推論と証拠がそれ自体では適切に見えても、実際には主張を裏付けていない場合があります。しっかりとした関連性があることを確認してください。
- 推論と証拠は該当するか? メールマーケティングスキームの例で言えば、同じような組織状況で収集された証拠を求める人がいると予測するのは賢明です。
- 反例は何か? 証拠が適切に見えても、主張にそぐわない反例があることもあります。このような反例によって、主張が成り立たなくなりますか? それとも、その主張がまだ成り立つ理由がありますか? (つまり、反例に耐えることができるのか?)
- 定義について全員が合意しているか? たとえば、「売上を増やす」とはどういうことでしょうか? つまり、具体的に何が増えるのでしょうか? 収益、販売個数、その他でしょうか?
リソース
- Booth, C., Colomb, G. G., & Joseph, M. Williams。2008.The Craft of Research, 3 (リサーチの技法、第 3 版)。
- Salesforce Research。State of Sales — Insights and Trends from Over 3,100 Global Sales Trailblazers (2nd Annual) (営業の現状 — 3,100 人を超えるグローバルセールスの Trailblazer からのインサイトとトレンド (第 2 回年次報告書))。
- Van Doorn, J., Lemon, K. N., Mittal, V., Nass, S., Pick, D., Pirner, P., & Verhoef, P. C. (2010)。Customer engagement behavior: Theoretical foundations and research directions (顧客エンゲージメント行動: 理論的基礎と研究の方向性)。Journal of service research, 13(3), 253-266。