インクルージョンの障壁を特定して除去する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- エイブルイズムを定義して例を示す。
- 面接時に障害のある人々のアクセシビリティを改善する 4 種類の配慮を挙げる。
- 障害のある人々が職務にどのように付加価値をもたらすかを説明する。
憧れていた会社の最初の面接に訪れたところを想像してください。書類審査やオンライン面接をパスしてここまでたどり着きました。いよいよ実際のオフィスに来て (合格すれば) 将来の同僚たちと出会い、会社の空気を実際に肌で感じるときです。少し不安ではありますが、面接に向けて胸を膨らませています。
すでにオフィスビルの正面玄関に到着し、ここで働く自分を想像しています。ですが、車椅子で正面玄関まで昇るためのスロープがありません。大変です。面接に遅れてしまうかも知れません? どうやったらビルに入れるのでしょう? 誰に助けを求めればよいのでしょう?
実はこのシナリオは事実に基づいているのです。このようなことは障害のある人々にとってはまさに日常茶飯事であり、私たちの社会に根強く蔓延るエイブルイズムを象徴しています。
Center for Disability Rights では、エイブルイズムを「身体、知能、または精神に障害のある人々を低く評価して差別する一連の考えとそれらに基づく一連の行動」と定義しています。
エイブルイズムは必ずしも悪意に基づくものではありませんが、障害のある人々が他のすべての人たちと同じ機会を与えられるようにするための対応が必要です。あなた自身の会社でも、エイブルイズムを無意識に経験していたり、場合によっては自分がその片棒を担いでいたりすることさえあります。職場やコミュニティで障害のある人々を遠ざけてしまっている可能性のあるエイブルイズムの例は以下のとおりです。
状況 | 阻害される人々 |
---|---|
マネージャーが字幕を付けずにチェックイン動画をチームに送信する。 |
キャプションに頼る人々、たとえば聴覚障害のある人やニューロダイバージェンスのように音声処理に関する障害のある人。 |
採用マネージャーがアイスブレークゲームでインターン応募者に「立ってください」あるいは「立ったままでいてください」と言う。 |
車椅子を使用している人や移動障害のある人。 |
チームリーダーがチーム向けのポッドキャストを正確なトランスクリプトなしで毎週更新する。 |
聾または難聴の人。 |
以上はエイブルイズムのほんの一部の例です。このような事例が排他的であることに気づくことで、よりインクルーシブな職場環境や採用プロセスを作り出すための一歩を踏み出すことができます。
インクルーシブな採用プロセスのベストプラクティス
インクルージョンのカルチャーの醸成は、応募者との面接時、あるいはその前から始まります。応募者が配慮を求めるのを採用マネージャーが待っているようでは、すべての人に公正な機会が与えられるとは言えません。
アクセシビリティを確保するための面接の配慮のベストプラクティスは次のとおりです。
1.画像には代替テキストを付ける。
スクリーンリーダーを使用している人 (全盲の人や弱視の人) は、代替テキストで画像の意味を理解します。代替テキストは、会社の検索エンジン最適化 (SEO) にも役立ちます。代替テキストは画像を正確に説明する必要がありますが、長いテキストである必要はありません。画像の内容を簡潔に、正確に、そして客観的に説明している必要があります。
たとえば、11 月 1 日の午前 9 時から開催される次のタウンホールミーティングに応募者を招待するためのメールに、画像のみが含まれているとします。代替テキストがなければ、全盲あるいは弱視の応募者はこの重要な情報を得ることができません。
2.動画には字幕やトランスクリプトを付ける。
自動キャプショニングサービスやトランスクリプションサービスは、多くの面でアクセシビリティを高めますが、会社としてはこれらのサービスに頼り切りではいけません。すべての会社は、自社の責任で正確で高品質のキャプションやトランスクリプトを付ける必要があります。これによって、聾や難聴の人だけでなく、人混みや騒音の多い場所にいる人など、すべての人が重要な動画の内容を知ることができます。(これは、アクセシビリティに配慮した設計がすべての人にメリットをもたらすという好例です。)
たとえば、会社の CEO から応募者に歓迎の動画を送信するとします。これは、会社への帰属意識を高めて、応募者に会社のカルチャーを紹介するためには強力な手段です。ですが、もし動画にキャプションが付いていなかったり、低品質で不正確な自動キャプショニングが付いていたりすれば、多くの応募者は離れてしまい、ネガティブなメッセージを送ることになってしまいます。また、発言の内容が正しくキャプションに反映されていないと、配慮が欠けているという印象も与えかねません。
3.色に頼りすぎずに意味を伝える。
視覚的なデザインは強力なツールとなりますが、優れたデザインとしては非常に限定的であるとも言えます。申し込みの締め切りや面接の日付といった重要な情報を目立たせる際には、つい目立つ色を使いがちです。ですが、色だけではメッセージを十分に伝えきることはできません。テキストインジケーターを添えることで、全盲や色弱の人でも他の人と同じようにメッセージを理解することができます。ここでも、このアプローチはすべての人にメリットをもたらします。正常な視力のユーザーであっても、画面がまぶしかったり、コントラストが低く設定されていたり、あるいは色の認知が異なったりする場合には、テキストインジケーターによってメッセージを理解しやすくなります。
たとえば、ジョブフェアを開催することになり、いろいろなカテゴリのロールを異なる色で表すとします。これらの色は、関連する印刷資料、デジタル情報、対面ブースの飾りでも一貫させます。そこで、色だけではなく、タイトルや説明も付加します。開発者ロールをオレンジ色で表すだけでなく、すべての関連資料やアイコンにも「開発者」というテキストを追加するのです。
4.すべての人がマウスやトラックパッドを使用していると思い込まない。
マウスやトラックパッドは一般的なコンピューターの入力デバイスですが、実際には他にも多くの入力デバイスがあります。テキストボックス、ボタン、複数選択項目などが、他の入力デバイスにも対応していることを確認してください。
たとえば、高度な仮想アプリケーションを活用しているとします。応募者の管理システムと完璧に同期して簡単にエクスポートができます。ですが、もしアクセスできない人がいるとしたら、優れたシステムであるとは言えません。キーボードだけでも、あるいはスクリーンリーダーだけでも送信可能であることをテストして確認してください。これらのデバイスしか使用していない人もいるからです。
これもすべての人にメリットをもたらします。たとえば、応募に必要な情報を入力し終わった時点でマウスの電池が切れてしまったらどうなるでしょうか。この場合は、キーボードを使用してアプリケーションを操作する必要があるのです。
5.簡潔明瞭な言葉を使う。
採用プロセス全体で、明瞭で理解しやすい言葉を使ってコミュニケーションを取るようにしましょう。平易な言葉を使用し、専門用語や不要な情報、曖昧な表現は避けるようにします。対面でのやり取りでは、混乱を避けるために詳細かつ明瞭なフィードバックを心掛けてください。
一般的なビジネスプラクティスとしても適しており、ADHD の人など、コミュニケーションで「ノイズ」をふるいにかけることが困難な人でも重要なポイントを理解しやすくなります。
6.履歴書ではなく人を見て採用を決める。
非雇用期間や履歴書の些細な誤記があるというだけでは、不採用の理由にはなりません。これらの点が問題になることもありますが、直ちに応募者を不合格にする必要はありません。単にインクルーシブで支援が整った環境で働く機会に恵まれなかっただけの応募者を不合格にしてしまう可能性もあるのです。
7.「カルチャーアド」の精神を実現する。
「カルチャーフィット」の精神には問題もあり、仕事をこなせる能力とは別の理由で応募者を不合格にしてしまうこともあります。「カルチャーアド」の精神を実現することで、多様な応募者が職場にもたらすことができる、ポジティブな潜在エネルギーに気づくことができます。同時に、多様性枠での採用である、つまり、仕事に対して最適な人材だったからではなく、会社がインクルーシブであるために採用されたとは誰も思われたくありません。障害やアイデンティティのみを重視して採用することはトークニズムと呼ばれ、個人やコミュニティにとって有害であり、障害のある専門家が提供すべきスキルや適性を傷つけてしまいます。
これらのベストプラクティスについて学習したところで、次は障害のある人々を採用するための実行可能なステップについて学習しましょう。