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適切な質問をすることでデータを調べる

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 適切な質問をする。
  • データを活用して効果的に作業するための能力と態度を特定する。

はじめに

データをより有効に活用することで、人々の生活を向上させる機会は毎日、何百万回もあります。医学研究、教育方針、産業の効率化、患者管理、財政支出などに関心はありませんか? このように機会は無限に存在します。

データの有効利用を始めるには、データリテラシーの根幹である「考察」を考慮に入れましょう。データ考察で成果を上げるための鍵は、適切な質問を設定することです。たとえば、犬好きで健康に気を遣っている人なら、最初に問うべきは、「犬を飼うことは人の健康にも良いのか?」という質問です。

では、次の質問と比較してみましょう。「米国で慢性疾患の患者とされる人々の健康状態について、犬を飼っている人と、そうでない人とではどのような違いがあるのか?」

1 番目の質問は大雑把であり、何を持って人の健康に良いとするのか明確な基準がありません。それに比べ、2 番目の質問はもっと具体的です。明確に定義された言葉を使い、特定の集団に対象を絞っています。そのため、2 番目の質問に答えるデータを探しやすくなります。

「なぜ」と問いかける

何かの質問の答えを探り始めると、たいていは、そこから発展した質問も問いかけることになります。通常、当初の質問に答えを出して終わるのでは不十分です。この例で言えば、米国の慢性病患者の健康状態が犬を飼っているかどうかで異なる場合、次の質問は「なぜ」になるでしょう。

「なぜなぜ分析」は、トヨタグループ創始者の豊田佐吉氏が生み出した手法です。これは、見出した問題の「なぜ」を問いかけ、答えや説明が明らかになるたびにその「なぜ」を問いかけ続けていくというものです。この手法の主な目的は、不具合の根本的な原因を突き止めることですが、この手法はあらゆる結果の原因を掘り下げるために利用することができます。

著名な情報技術者の Stephen Few 氏は、データをうまく活用するのに役立つ特性を挙げました。Few 氏はこれを適性と心構えと呼んでいます。こういった特性は、より適切な質問を投げかけるためにも役立ちます。

適切な質問を引き出すための適性と心構え

Stephen Few 氏の著書『Now You See It: An Introduction to Visual Data Sensemaking (これでわかった: ビジュアルデータセンスメイキング入門)』から許可を得て引用した次の適性と心構えを参照し、自身の経験を振り返ってみましょう。どの特性を持っていますか? どの特性を身につけたいと思いますか? すでに持っている特性は、適切な質問を投げかけるのにどう役立っていますか? 適切な質問をさらに投げかけられるようになるうえで、新しい特性を身につけることはどう役立つ可能性がありますか?

適切な質問がもたらす価値: 例

Florence Nightingale (フローレンス・ナイチンゲール) と John Snow (ジョン・スノー) は、上記の特徴を数多く発揮し、問題解決の一助として適切な質問を投げかけました。各例を読みながら、両者が仕事で発揮した適性と心構えを見つけ出しましょう。

たとえば、どちらも興味と好奇心を発揮しました。Nightingale はデータ分析のスキルを持ち、Snow はパターンを識別しました。Florence Nightingale と John Snow がどのように効果的なデータ分析の適性と心構えを発揮したかを示す例を他にも見つけ出せますか?

Florence Nightingale

1854年、Florence Nightingale は看護師 38 名を率いて、クリミア戦争において病院に搬送された兵士の看護に当たりました。これほど多くの兵士が亡くなっているのはなぜか、どうすればこれを防ぐことができるのか?

彼女は、兵士たちの主な死因が戦傷ではなく、不衛生な医療環境による予防可能な病気であることを突き止めたのです。彼女は医療改革に着手し、死者数を劇的に減少させ、2 年分の成果を文書化しました。

その後、Nightingale は鶏頭図 (下例参照) などのグラフィックを用いて、医療改革の普及の必要性を科学に精通していない人々に向けて訴えました。その図では、各くさび形が 1 か月を表し、くさび形の面積がその月に亡くなった兵士の数を示しています。また、色の違いは死因の違いを表しています。

Florence Nightingale と鶏頭図

本ストーリーと画像は、英国科学博物館の Web サイトにある Florence Nightingale の功績を紹介した Florence Nightingale のページを基にしたものです。

John Snow

コレラは、1831 年 ~ 1832 年と 1848 年 ~ 1849 年にロンドンで 2 度流行し、多くの死者を出した急性の感染性腸炎です。当時、コレラの原因は腐敗した有機物から発生する瘴気によるものであると多くの人が信じていました。また、この病気は微生物学のような純粋な科学的アプローチではなく、消毒洗浄などの予防的手段によって撲滅できると信じられていました。ですが、イギリスの医師である John Snow は、瘴気論に疑問を抱きました。

もし、コレラの原因が細菌だとしたら? Snow は、コレラの原因がまだ特定されていない細菌だと考えました。その細菌が、飲用水で人から人に伝染していると推測したのです。自説 (瘴気ではなく、水の中の細菌に接触することでコレラに感染する) を検証するために、Snow は戸籍本署の長官からコレラに起因するロンドンの死者のデータを入手しました。 

Snow は、ロンドンの地図に死者をプロットした後、ロンドンに水を供給するポンプの場所もプロットしました。最終的に、地図にプロットしたコレラの犠牲者がブロードストリートのポンプで汲んだ水を飲んでいたことを突き止めました。

ブロードストリートのポンプの周辺に死者が集中していることがわかる、John Snow が作成した送水ポンプとコレラの死者数の地図。この John Snow の話は、根本となる生物学的な原因に関する知識がなくても、統計的な手法を用いて保健衛生上の問題を解決した重要な例です。Snow はコレラ菌固有の生物学的特性を知りませんでしたが、それでも問題の発生源を見つけるに至りました。

本ストーリーと画像は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校疫学科の Web サイトにある John Snow の功績を紹介した John Snow のページを基にしたものです。

リソース

ここまでで、適切な質問とデータ調査の関係性について理解できました。データを効果的に扱うには、適切な質問に役立つ適性と心構えに着目してください。

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