契約ライフサイクル管理の機能の詳細を知る
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- Industries CLM の機能を説明する。
- 契約ライフサイクル管理に対するさまざまなアプローチについて説明する。
機能的性能
では、箱の中身を見てみましょう。Industries CLM ソリューションには、契約作成、セールスプロセスインテグレーション、ライフサイクル管理など数種の機能が搭載されています。
下図に、各機能のコンポーネントが示されています。
Industries CLM は、Salesforce Einstein 1、Sales Cloud、Service Cloud 上で実行されます。
では、それぞれの機能について細かく見ていきましょう。
契約作成
Industries CLM で契約文書を作成する場合、次のようなメリットがあります。
- 条項ライブラリに、事前承認された再利用可能な法律用語や条件が保存されるため、契約文書を標準化して迅速に作成することができます。
- 営業チームがドキュメントテンプレートデザイナーで適切かつ正確な契約文書を作成できるため、IT 部門の助けを借りる必要がありません。
- 交渉時はドキュメント調整を使用して、お客様が変更した条件を基に Word ドキュメントで変更を同期させることができます。
- レッドライニングにより、契約の作成中に各バージョンの変更を追跡できます。
- バージョン管理で契約のバージョンを管理します。たとえば、契約に変更を加えると、自動的に新バージョンが作成されます。
- テンプレートベースのドキュメント生成で、動的な契約文書を作成できます。ドキュメントをオンラインでカスタマイズや修正でき、その際もバージョンが管理されます。
セールスプロセスインテグレーション
契約の作成から履行まで、営業サイクル全体に Industries CLM を統合できます。
- 営業チームが商談、見積、注文から契約を作成できます。
- 期限が近づいている契約の自動更改通知により、収益機会を最大化することができます。
- 枠組み合意の基本コンポーネントで、お客様の注文が契約で取り決めた価格に従っていることが確認されます。
ライフサイクル管理
どの契約も、契約作成で始まり、契約満了で終わる「ライフサイクル」を進行します。コンプライアンス要件は、契約ライフサイクルを管理するうえで重要な要素です。
Industries CLM は、契約ライフサイクル設定や契約状態モデルを備え、電子署名を取り付ける DocuSign と統合しています。では、その特長を見ていきましょう。
- 契約種別は、チームがライフサイクルの異なる、各種の契約を管理する場合に役立ちます。契約種別によって契約文書の種類 (販売契約、秘密保持契約、パートナーシップ契約など) が識別されます。
- 契約状態モデルは、特定の契約種別のライフサイクルを判断し、特定のユーザーが各フェーズで実行可能なアクションや操作を管理します。
- CLM と DocuSign のインテグレーションにより、契約締結時に必要な電子署名を効率的に取り付けることができます。
エンドツーエンドの契約ライフサイクル
契約はビジネスのあらゆる面に影響を及ぼします。下図は、契約の標準的なエンドツーエンドのライフサイクルを示しています。
CLM があれば、契約ライフサイクル全体の効率性や実効性が向上し、コンプライアンスが促進されます。
- 契約作成: 契約の作成、検証、交渉、承認をオンラインで行います。
- 契約管理: さまざまな関係者との契約をオンラインで管理します。
- 契約履行: 契約履行やサービスレベル契約 (SLA) を管理します。
- 契約リスク管理: 義務に関する注意喚起、SLA 違反、未更改、ドラフト作成時の条項評価に関するアラートを管理します。
- 契約分析: 組み込みの分析機能で契約データやメタデータを分析します。
契約ライフサイクルの汎用的なフェーズ
契約はそのライフサイクルを通してさまざまなフェーズを進行します。CLM は各フェーズを合理化して自動化します。
最初のフェーズは作成で、契約文書のドラフトが作成されます。CLM があれば、チームが事前定義されたテンプレートから契約文書を生成できます。次のフェーズは交渉で、当事者全員が契約の文言、期間、条件について合意を形成します。合意に至ったら、社内の関係者から承認を取り付けます。このフェーズでは、CLM により、マネージャーやリーガル部門など、社内のチームとのコラボレーションが促進されます。続いて、契約の締結フェーズに進み、各当事者が契約内容を確認して、電子署名します。最後に、署名された契約が有効になり、効力を発します。
次に、ビジネスが CLM のような契約管理ツールを実装する場合のさまざまな方法を見てみましょう。
契約管理に対するアプローチ
組織が CLM ソフトウェアを導入する場合、通常はその契約プロセスの成熟度がそれぞれ異なります。CLM ソリューションを模索する組織は、概して次のいずれかのカテゴリに該当します。
- 組織に CLM ソフトウェアがない。
- 自社製の CLM システムがある。
- ベンダー製の CLM ソリューションがあるが、取り換えたいと思っている。
下図は、CLM の導入成熟曲線と成熟度を示しています。
組織の成熟度がどのレベルでも Industries CLM の使用を開始でき、短期間で次のレベルに進むことができます。
レベル 1: ドキュメントリポジトリ
一部の組織にとって契約は、共有フォルダーに保存されている、あるいはレガシーアプリケーションに保持されている文書にすぎません。成熟度がこのレベルの場合、契約業務の大半が手動で整理されておらず、ライフサイクル管理に不備があり、インフラストラクチャコストが高くついています。CLM にはドキュメント管理機能が搭載され、中央リポジトリにすべての契約データを保存できます。
レベル 2: 可視性とレポート機能
次のレベルに該当するのは、データの可視性とレポート機能を備えた組織です。この場合は、契約の主要なデータ (有効期限、条件、支払時期など) を把握することができます。CLM には、Salesforce プラットフォームを基盤とする拡張可能な優れたデータモデルがあり、主要な契約情報を保存して表示することができます。CLM のデータモデルと機能を使用して、ビジネスをこの成熟度に引き上げます。
レベル 3: 契約の承認とプロセスの標準化
成熟度がこのレベルの場合、クラウドベースのテンプレート設計ツールを使用して契約プロセスが標準化されています。組織は CLM の状態モデル機能を使用して、契約ライフサイクルを設定し、各フェーズで実行するアクションを管理できます。
レベル 4: 他のクラウドとのインテグレーション
CLM は Industries CPQ (設定、価格、見積) や業種注文管理と密接に統合します。こうしたソリューションと連動させれば、営業チームが新しい契約を 1 回のクリック操作で作成できます。チームは CLM を使用して契約価格を交渉するため、そのお客様の後続の見積や注文にも事前に交渉した価格が適用されます。
レベル 5: デジタルと最適化
最高レベルの成熟度です。組織は、契約プロセスをクラウドや複数のチャネルで完全に自動化しています。クライアント側のソフトウェアツールや、非効率な紙面への署名による処理は過去の遺物です。この事前統合により、商品をいち早く発売することが可能になります。成熟度がこのレベルの場合は、CLM のデジタル化により、組織に包括的な価値が生み出されます。