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LEVERS フレームワークを使用して AI の採用を促進する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 変更管理の LEVERS を定義する。
  • AI テクノロジーの採用促進に使用できる戦略を特定する。

変更管理の LEVERS

変更管理とは、新しい AI ソリューションの立ち上げなど、組織や個人が新しいイニシアチブを採用できるように設計された一連の戦略です。採用を成功させるには、知識 (「…の方法を知っている」) と望ましいアクション/行動 (「… することを選ぶ」) を組み合わせる必要があります。

行動の形成には複数の要因が影響します。たとえば、個人的な要因 (信念、能力など)、社会的な要因 (同調圧力、経営陣の方向性など)、構造的な要因 (ポリシー、インセンティブなど) から影響を受けます。このような要因は、LEVERS モデルによって捉えることができます。LEVERS モデルとは、Leadership (リーダーシップ)、Ecosystem (エコシステム)、Values (価値)、Enablement (イネーブルメント)、Rewards (報奨)、Structure (構造) のてこを利用することです。

調査によると、変更が成功する可能性は、LEVERS の 4 つ以上の要素が揃った場合に 10 倍高くなることがわかっています。

リーダーシップ

変更を実装するには、リーダーは新しい働き方の開発を促進、モデル化、支援する必要があります。リーダーのアクションにより、新しいイニシアチブの優先度と重要性を伝える強力なメッセージが送られます。

リーダーシップのてこを利用する戦略には、次のようなものがあります。

  • コミュニケーションの透明化: リーダーは、AI のメリットを明確に伝える必要があります。仕事が AI に取って代わられる懸念に対処し、AI によって仕事が置き換えられるのではなく、いかに補強されるかを示します。
  • 変更プロセスへの従業員の関与: リーダーは、AI 採用プロセスの早期に従業員を関与させる必要があります。そうすることで AI ソリューションについて意見を聞く機会や共創の場を持てるようになり、組織全体から賛同や支持を得られやすくなります。
  • リーダーシップの説明責任の促進: リーダーは、自身の個人目標に AI プロジェクトの成功を組み入れて、コミットメントと説明責任を示す必要があります。
  • 的を絞った役員向け説明資料の作成: AI プログラムの影響と進捗を会議で話し合うために、AI に焦点を合わせた簡潔な資料をリーダーに提供します。
  • 双方向のフィードバックチャネルの構築: 従業員が AI ツールの使用や効果についてフィードバックできる手段 (Slack のようなプラットフォームを使用する手段) を作成し、リーダーシップが話し合いに積極的に参加できるように促します。

エコシステム

組織の「人々の系列」には、顧客、従業員、パートナー、ベンダー、コミュニティなどが含まれます。このようなグループ内およびグループ間の関係は、組織全体の 1 人 1 人の考え方、振る舞い方、仕事のやり方に影響を与えます。

エコシステムのてこを利用する戦略には、次のようなものがあります。

  • AI 関係者の評価の実施: AI 実装の影響を受ける、または AI 実装の成功に影響を与えることができる主要なグループと個人を特定し、各々に合わせたエンゲージメント戦略を策定します。
  • AI 変更ネットワークの構築: 積極的な参加の促進、新しい AI 駆動プロセスのサポート、部門全体でのコラボレーションと知識共有の促進、より統合された AI 文化の育成を行います。
  • AI 倫理委員会の設立: 部門横断的な倫理委員会を設立すれば、AI プロジェクトを多角的な観点からレビューできるようになり、組織のさまざまな部門の関係者を AI ガバナンスに関する意思決定に関与させることができます。
  • AI に特化した説明会の企画: AI の移行に対する意識の向上、フィードバックの収集、AI 採用協議への組織全体の関与を目的としたイベントを実施します。
  • 組織構造への影響の評価: AI 実装によって組織設計、役割詳細、チーム構成の変更が必要かどうかを評価します。
  • AI 人材に関するギャップ分析の実施: AI テクノロジーの採用によって不足する可能性のあるスキルや人材を特定し、そのギャップへの対応を計画します。

価値

他者をやる気にさせる最も効果的な方法は、人がすでに重視していることに変更を結び付けることです。価値のてこは個人的な動機付けを利用することですが、それにはコツが必要です。無理やり人をやる気にさせることはできません。では、変更推進者はどのようなことを行えるのでしょうか? 変更推進者は、人がすでに大事に思っていることに変更を結び付けることができます。相手がすでに大事に思っていることや重視していることに変更を嘘偽りなく明確に関連付けて、支持者を生み出します。

価値のてこを利用する戦略には、次のようなものがあります。

  • AI に関する目的と価値の伝達: 組織が AI を採用している理由を明確に伝えます。AI がどのように会社のミッションとビジョンに沿っているか、主要なビジネス目標の達成にどう貢献するか、個人にどのようなメリットがあるかを説明します。
  • 倫理的な AI ガバナンスの導入: 従業員が責任ある方法で AI に関わることができるように、強力な倫理ガイドラインを作成し、AI におけるバイアスと公平性に関わる懸念に対応します。
  • AI モデルの透明性の確保: AI モデルが意思決定を行う方法に透明性を持たせることにより、信頼を構築し、職場で正直さと誠実さを求める従業員の気持ちに沿うことができます。
  • 目的に基づく AI ナラティブの作成: AI への変更をより大きな目的に結び付けるナラティブを作成します。従業員が共感を覚え、意義を感じる内容とし、実際に得られる効果や成果を強調します。
  • 実際に AI を体験できる機会の設計: AI によって仕事、顧客、プロセスパートナーにもたらされるプラスの影響を従業員が実際に確認できる体験を作ります。

イネーブルメント

新しいビジネスイニシアチブの成功にはトレーニングが欠かせませんが、AI ソリューションの場合はなおさらです。AI が職場でどのように機能するかがよくわかっていない従業員は、革新的なテクノロジーや用語に怖気づいてしまう可能性があります。一部の人にとっては、自動化、アルゴリズム、機械学習などの用語はポジティブな意味合いを持つかもしれませんが、ほかのチームメンバーにとっては、AI の基本がそれほど明確になっていないかもしれません。

イネーブルメントのてこを利用する戦略には、次のようなものがあります。

  • 詳細なトレーニング戦略の作成: ユーザーをトレーニングするための体系的なアプローチを開発します。実践的な応用やハンズオン体験によって仕事のフローの中でトレーニングを行う機会を探します。
  • ライブデモ: 特徴や機能を紹介します。ユーザーがメリットを最大限に生かせる方法について実用的なガイダンスを提供します。
  • スーパーユーザーへの支援依頼: AI ツールの支援者として、知識が豊富なユーザーに同僚へのサポート、他者のトレーニング、質問への対応、組織全体への採用支援を行ってもらいます。
  • オンライン AI トレーニングプラットフォームの利用: AI のツールとテクノロジーに関して、無料のオンデマンドトレーニングを提供する Trailhead のようなプラットフォームを利用するよう促します。
  • イノベーションと実践のための AI ラボの設立: ユーザーが新しい AI 機能の使用やテストを行える場を作り、実践的な体験や、今後の機能強化のためのフィードバックを行う機会を提供します。プロンプトやその作成に関するベストプラクティスを共有します。
  • セルフガイドのオンボーディングリソースの共有: ユーザーが各自のペースで個別に学び、ツールを使用して練習できるオンボーディングツールに継続的にアクセスできるようにします。
  • AI 倫理に関するトレーニングの提供: 責任ある方法で AI の開発とリリースに貢献できるように、AI のバイアスを認識、軽減することに特化したトレーニングを従業員に提供します。

報奨

報奨とは、外発的な動機付けを利用することです。無形および有形の報奨や表彰を導入して、人々が特定の行動を取るように促します。職場において、こうした外発的な動機付けとして、表彰プログラム、特典、パフォーマンス管理システム、報酬 (ボーナス、コミッション、特別報奨など) のようなものを導入できます。

このような報奨は人の行動に大きな影響を与えることができますが、適度に使用する必要があります。調査によると、外発的な報奨に重点を置きすぎると、使用している他要素の効果を下げてしまう可能性があるだけでなく、意図した結果とは逆の効果をもたらす場合さえあります。

報奨のてこを利用する戦略には、次のようなものがあります。

  • インセンティブプログラムの作成: 組織内で新しい AI テクノロジーのトレーニングの完了や使用を奨励して報奨を与える戦略を開発します。
  • 早期に AI を採用した人への謝辞: チームミーティングやリーダーシップへの近況報告の場で、AI ツールを迅速に採用した個人を表彰します。
  • AI 採用ダッシュボードの利用: 組織の AI ツール使用を追跡するダッシュボードを実装します。ツールの常時使用や、AI を仕事のプロセスに取り入れる斬新な方法の実践を行っているチームや個人を表彰して報奨を提供します。
  • 高い AI ツール技能への報奨提供: AI ツールに堪能なユーザーにインセンティブを提供します。ギフトカード、自社商品、特別なボーナスなどの報奨を提供し、持続的なエンゲージメントと卓越性について奨励します。
  • リーダーシップ表彰プログラムの作成: AI ツールの使用に長けている優れたチームメンバーを称えるための定期的なプログラムを確立します。組織内で Slack のようなプラットフォームを使用して、成果を称えます。

構造

新しい AI ソリューションの立ち上げは、プロセスに最も密接に関連するチームやシステム以外にも影響を与える可能性があります。たとえば、Agentforce for Service は明らかにサービスエージェントの日常業務に影響しますが、他部門の業務にも影響を与える可能性があります。変更管理プロセスの一環として、新しいテクノロジーがビジネスに及ぼすより広範な影響を考慮してください。

変更管理によって軽減できるその他の障壁には、ソリューションの真の必要性の確認、適切な評価指標の追跡、重要なシステムのダウンタイムの削減などがあります。プロセスの早い段階で障害を認識することで、新しいプロセスを既存のプロセスにできる限りシームレスに統合できるようになります。

構造のてこを利用する戦略には、次のようなものがあります。

  • AI ガバナンスの構築: 確実に AI システムが責任ある方法で使用され、組織目標に合致するように、倫理ガイドライン、透明性の基準、バイアス軽減プロセスを含むガバナンス構造を実装します。
  • AI ツールに関する話し合いを目的とした Slack の実装: AI トピック専用の Slack チャネルを設定します。会話の場所を個々の受信トレイからコラボレーションプラットフォームに移して、質問、フィードバック共有、透明化のための場を提供します。
  • AI ツールに関するフィードバックループの開発: 従業員がフィードバックを行えるチャネルを作成し、構造化された反復的な方法で AI プロセスが持続的に改善、調整されるよう促します。
  • AI ダッシュボードの構築: AI を活用したダッシュボードとレポートを利用して、AI ツールに記録されていないデータと活動は評価されないという原則を強調します。
  • 効率化のための自動化の実装: 業務の合理化とワークフローの円滑化を目指し、可能な場合、自動化技術を使用して手動プロセスを置き換えます。
  • ポリシーと手順の改正: AI ツールと新しい作業手法の導入によってもたらされる変更に対応するために、組織の標準となるポリシー、プロセス、手順を更新します。

AI テクノロジーの長期的な成功を確保する

AI ソリューションの長期的な成功は、1 日の終わりや、立ち上げから数週間後に決まるものではありません。新しいテクノロジーの実装には時間がかかり、抵抗があることは変更管理における一般的な課題です。特に、従業員の働き方を劇的に変えるような大規模な AI ソリューションを立ち上げる際には、抵抗が起こることがよくあります。AI 採用を成功させる鍵の 1 つとなるのは、変革を持続させ、新しいプロセスを組織のワークフローや文化に定着させることです。

このようなイニシアチブの概要をまとめた変更管理プロセスを最初から使用することで、新しいテクノロジーの長期的な成功率が格段に高まります。ぜひ変更の LEVERS (少なくとも 4 つの要素) を活用してください。

リソース

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