スコープ 3 活動を追跡する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- スコープ 3 排出量とは何かを説明する。
- NTO のスコープ 3 排出量を特定する。
- Net Zero Cloud でスコープ 3 の排出係数、エネルギー使用量、カーボンフットプリントがどのように関連付けられているかを説明する。
Northern Trail Outfitters のネットゼロへの取り組み
アウトドアとレクリエーションの用品や衣料で知られている小売会社の Northern Trail Outfitters (NTO) はネットゼロ排出の達成に取り組んでいます。この会社は Salesforce の Net Zero Cloud を使用して炭素排出量の定量化と測定を行い、温室効果ガス (GHG) の排出を削減する最適な方法について情報に基づいた意思決定を行っています。NTO の最高サステナビリティ責任者である Sam Rajan は排出データを収集して分析する取り組みを率いています。
このモジュールでは、スコープ 3 排出量について学習し、Sam が Net Zero Cloud を使用して排出量を報告、計算する手順を追っていきます。Net Zero Cloud を使用することで Sam はシンプルなワークフローと事前定義されたデータセットを使用してカーボンアカウンティングを実行できます。
ビジネス同士は相互に関係しているため、1 つの組織のスコープ 1 および 2 排出量は別の組織のスコープ 3 排出量になります。ジャケットを作製するために NTO は工場や織物会社から原材料を購入し、染色会社と提携します。その後 NTO はジャケットを小売店舗に輸送します。消費者が NTO のジャケットを購入して使用すると、洗濯や乾燥にエネルギーが使用され、廃棄されたジャケットが埋立地で腐敗するときには GHG が排出されます。このような排出は NTO が直接の原因ではなく、製造、配送、NTO 商品の使用によって間接的な原因となっている例です。
上流と下流
ますます多くの組織が自社のバリューチェーンを知ることで業務による GHG への影響全体を理解しようとしています。そのような排出量を組織が直接コントロールすることはできませんが、サプライヤーに影響を与えたり、環境に優しいベンダーを選択することでバリューチェーンでの排出量を削減することはできます。
GHG プロトコルでは、スコープ 3 排出量の 15 のカテゴリが定められており、カテゴリは 2 つのグループに分けられます。
- 上流排出量: 一連の製品・サービスの製造へのインプットとみなされる購入または取得した製品・サービスまたはその他の活動に関連する間接的な GHG 排出量。
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下流排出量: 製品・サービスの使用と配送に関連する間接的な GHG 排出量。
次の表はすべてのカテゴリとそのグループを示しています。
スコープ 3 排出量カテゴリ | |
---|---|
上流 | 下流 |
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|
上記のカテゴリについての詳細は『Scope 3 Calculation Guidance (スコープ 3 計算ガイダンス)』ドキュメントを参照してください。
NTO のスコープ 3 排出量
Sam は温室効果ガスプロトコルの「Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard (企業のバリューチェーン (スコープ 3) の算定・報告基準)」に従って NTO のバリューチェーンを調べ、スコープ 3 排出の要因となる主要な排出源と活動を次のように特定しました。
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出張: 従業員やベンダーが出張するとスコープ 3 排出量が発生します。NTO は出張データに基づいてこれを計算できます。出張データには、移動手段 (飛行機、レンタカー、電車)、移動距離、従業員がホテルに宿泊した日数などが含まれます。
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輸送と配送: NTO のサプライチェーンと調達活動には倉庫から店舗までの製品・サービスの輸送と配送やベンダー拠点から NTO 事業所までの原材料の輸送が伴います。
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購入した製品・サービス: NTO はサプライヤーから原材料を購入し、ベンダーからオフィス機器、オフィス用品、包装資材などの関連品を購入します。スコープ 3 排出量には NTO が購入または取得した商品の製造に伴うすべての上流排出量が含まれます。
- 資本財: 資本財には建物、車両、機会、店舗設備が含まれます。NTO は購入した資本財の原材料入手から製品出荷までの総排出量を、その資本財を取得した年に計上する必要があります。
NTO には廃棄物関連の排出量もあります。これは GHG プロトコルに従って次のスコープ 3 カテゴリに分類されます。
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事業から出る廃棄物: 報告年において NTO が所有または管理する事業から出る廃棄物のサードパーティによる廃棄や処分から発生した排出量が含まれます。
- 販売した製品の廃棄: NTO が販売した製品の廃棄と処分に伴う排出量が含まれます。NTO は各製品について可能性の高い廃棄物種別と廃棄方法を評価する必要があります。目標は埋立廃棄を抑えたリサイクル可能な製品を設計することです。
Net Zero Cloud のスコープ 3 レコード
Sam は Net Zero Cloud のさまざまなレコードが出張、調達関連活動、廃棄物処理などのスコープ 3 活動のカーボンアカウンティングにどのように役立つかを調べます。
出張と貨物運搬
出張関連のレコードである排出源、エネルギー使用量、排出係数、カーボンフットプリントなどが Net Zero Cloud でどのように構成されているかを次に示します。
排出源 |
エネルギー使用量種別 |
適用される排出係数 |
カーボンフットプリント種別 |
---|---|---|---|
スコープ 3 排出源 | 旅客航空機エネルギー使用量 |
旅客航空機排出係数 |
スコープ 3 カーボンフットプリント |
陸路移動時のエネルギー使用量 |
陸路移動時の排出係数 |
||
レンタカーエネルギー使用量 |
レンタカー排出係数 |
||
ホテル宿泊エネルギー使用量 |
ホテル宿泊排出係数 |
||
貨物運搬エネルギー使用量 |
貨物運搬排出係数 |
調達関連の排出量
バリューチェーン関連または調達関連の排出量について、Sam はスコープ 3 調達概要レコードとそれに関連付けられたスコープ 3 調達項目レコードを使用できます。また、調達排出係数レコードを使用して支出金額を調達データに換算し、それをさらに炭素排出量 (tCO₂e) に換算できます。複数の調達概要での排出計算がすべてスコープ 3 カーボンフットプリントレコードに積み上げ集計されます。このレコードには合計排出量 (tCO2e) の詳細が含まれます。調達分析についての詳細は「Scope 3 Procurement Analysis and Supplier Engagement with Net Zero Cloud (Net Zero Cloud でのスコープ 3 調達分析とサプライヤーエンゲージメント)」を参照してください。調達に伴う排出量に関連するレコードが Net Zero Cloud でどのように構成されているかを次に示します。
排出源 |
調達レコード |
適用される排出係数 |
カーボンフットプリント種別 |
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---|---|---|---|---|
スコープ 3 排出源 |
スコープ 3 調達概要 |
出張のスコープ 3 調達項目 |
調達排出係数 |
スコープ 3 カーボンフットプリント |
購入した製品・サービスのスコープ 3 調達項目 |
廃棄物処理
廃棄物関連の排出量について、Sam は廃棄物種別、処理種別、廃棄物処理量を指定する発生廃棄物レコードを作成できます。これはエネルギー使用量レコードに相当します。このレコードをスコープ 3 排出源レコードまたは固定資産排出源レコードに関連付けることができます。[処理場種別] が [現地] であるか [オフサイト] であるかによって、排出量はそれぞれスコープ 1 またはスコープ 3 に分類されます。Sam は廃棄物処理排出係数レコードを使用して廃棄物処理量を炭素排出量 (tCO₂e) に換算できます。すべての排出量計算は廃棄物フットプリントレコードに積み上げ集計されます。廃棄物フットプリントレコードには子廃棄物フットプリント項目レコードがあります。このレコードには、廃棄物種別と処理方法ごとにデータが集約されています。廃棄物関連のレコードの表は次のとおりです。
排出源 |
廃棄物詳細レコード |
適用される排出係数 |
カーボンフットプリント種別 |
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---|---|---|---|---|
スコープ 3 排出源 |
発生廃棄物 |
廃棄物処理排出係数 |
廃棄物フットプリント |
廃棄物フットプリント項目 (スチール缶、埋立) |
固定資産排出源 |
廃棄物フットプリント項目 (ガラス、リサイクル) |
これで Sam は Net Zero Cloud でスコープ 3 データがどのように算出されるかを理解できました。次の単元では、Sam が出張に伴う排出量を計算する様子を見ていきましょう。