調達関連の排出量を計算する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- Net Zero Cloud で調達関連の排出量を計算するのに役立つ主要なレコードを挙げる。
- 調達排出量の計算方法を説明する。
- スコープ 3 カーボンフットプリントレコードの主要な項目を挙げる。
推定のモデル
NTO のバリューチェーンを構成する個々の企業すべてからスコープ 3 情報を取得するのは困難または不可能です。そこで Sam はサプライヤーやビジネスパートナーからのデータがない場合のギャップを補足できる推定方法に注目します。
Net Zero Cloud では計量経済学分析による排出係数データセットが使用されています。これは EEIO (Environmentally-Extended Input-Output) モデルと呼ばれ、Sam はこのモデルを使用して GHG スコープ 3 の 8 つの上流カテゴリと 1 つの下流カテゴリの経済での生産金額あたりの tCO₂e を推定できます。このモデルでは、各経済部門に炭素排出原単位を割り当てます。数値の単位は通貨単位あたりの tCO₂e です。GHG カテゴリは NTO の調達データの支出カテゴリと一致させることができます。より深く理解するには、この単元の最後にある計算を確認してください。
Net Zero Cloud には通貨として USD を使用する United States Environmentally-Extended Input-Output (USEEIO) データセットが事前定義されています。USEEIO データセットには 100 万ドルあたりの tCO₂e を単位とする排出係数が含まれています。Northern Trail Outfitters はこのデータセットを参照データとして使用するか、別の EEIO 排出係数データセット (Economic Input-Output Life Cycle Assessment (EIO-LCA)、Multi-Regional Input Output (MRIO)、EU 政府の EEIO モデルなど) をインポートすることができます。
Net Zero Cloud に付属する EEIO データはすでにさまざまな GHG プロトコルスコープ 3 カテゴリと一致しています。NTO は Net Zero Cloud のスコープ 3 ハブ設定アシスタントを使用してこのデータセットの管理、別のデータセットのインポート、各経済活動に一致するカテゴリの手動上書きを実行できます。
Net Zero Cloud のスコープ 3 ハブでは、NTO の調達データセットの各行を EEIO 排出係数と GHG スコープ 3 カテゴリに一致させることができます。詳細は、「スコープ 3 バリューチェーンデータの管理」を参照してください。
レコードについて
Sam は通常はスコープ 3 ハブを使用して完全な EEIO 分析を行いますが、Net Zero Cloud で独自のレコードを作成して EEIO 排出係数を調達レコードに適用することもできます。調達関連の排出量の計算に役立つ Net Zero Cloud の主要なレコードを見てみましょう。
調達概要レコードは調達項目レコードのグループを積み上げ集計したものを表します。各調達項目レコードによって特定の GHG カテゴリの支出が定量化され分類されます。
調達項目レコードでは、1 つのカテゴリの支出の詳細を指定します。Sam は支出金額と、その調達が支出カテゴリ 1、2、3 のいずれに一致するかを指定できます。次に Sam はこの調達項目に適切な GHG スコープ 3 カテゴリを関連付けることができます。カテゴリの例には、資本財、事業から出る廃棄物、購入した製品・サービスなどがあります。また、Sam はベンダー固有の排出量を適用してスコープ 3 合計排出量を上書きすることもできます。
調達概要レコードには多くの重要な情報が表示されます。これには、支出総額、現在のインフレ率、暦年と通貨に基づいて計算されるインフレ率、手動上書き値 (ある場合) などが含まれます。自動計算されるスコープ 3 合計排出量 (tCO₂e) とカテゴリ外の項目による排出量も表示されます。さらに、上流と下流のスコープ 3 GHG カテゴリそれぞれの排出量の内訳も表示されます。
調達排出係数セットは、支出額から排出量を計算するために使用される基準データです。このデータセットは、特定の暦年と特定の通貨で実行された計量経済学モデルから生成されます。このセットで Sam が注目すべき主要な情報は排出係数更新年と通貨コードです。
多数の調達排出係数セット項目レコードが親調達排出係数セットレコードに関連付けられています。特定の GHG カテゴリに対する各調達項目レコードは同じカテゴリの調達項目レコードに関連付けられます。調達排出係数セット項目レコードで、Sam が経済部門と GHG カテゴリの組み合わせを認識するための経済部門カテゴリコードを設定すると、EEIO によって指定された排出係数によって支出金額 (ドル) が tCO₂e に換算されます。
Net Zero Cloud に付属する USEEIO データセットは 2012 年に実施された分析からのものです。このような分析は非常に困難であるため、頻繁に実行されて公開されることはありません。ただし、Sam が 2012 年より後に行われた調達の排出量を計算するときには、コストデータをインフレに合わせて適宜調整する必要があります。インフレ率レコードは、特定の年と通貨の 1 年間のインフレ率を表し、通貨金額の変換に使用されます。インフレ率を使用することで複数年にわたってスコープ 3 データセットの排出係数を使用できます。どのように行うのでしょうか? 支出額 100 万あたりの排出係数の合計 tCO₂e が調達データセットの年にインフレまたはデフレ調整されます。
すべての調達概要レコードの分類された排出量 (tCO₂e) はスコープ 3 カーボンフットプリントレコードに集計されます。
調達関連の排出量を計算する
調達関連の排出量がどのように計算されるかを理解するためにシンプルな例を見てみましょう。
調達項目 |
調達排出係数セット項目 |
調達概要 |
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NTO は 2021 年に製品用のプラスチック包装をサードパーティベンダーから購入した支出金額を USD で指定します。 支出金額 = $4,500,000 |
GHG プロトコルに従って、包装の購入は [購入した製品・サービス] カテゴリに分類されます。 |
プラスチック包装の購入関連の計算されたスコープ 3 合計排出量の値がこのレコードに表示されます。 = 4,500,000/1,000,000 * 1.507 = 7.459 |
USEEIO データセットでは、プラスチック包装の排出係数は 1.507 tCO₂e / 100 万 USD です。 |
スコープ 3 カーボンフットプリントを確認する
Sam の作業もあと少しです。ここまでで彼は出張、輸送と配送、廃棄物管理、調達活動に伴うスコープ 3 排出量の計算について学習しました。次は全体像に目を向けて、すべてのスコープ 3 排出量を確認します。
すべてのスコープ 3 排出量を説明するために、複数のエネルギー使用量レコードと調達概要レコードがスコープ 3 カーボンフットプリントレコードに積み上げ集計されます。
Sam はスコープ 3 カーボンフットプリントレコードに表示される主要なデータポイントを確認します。
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上流排出量: GHG プロトコルに基づくスコープ 3 上流活動カテゴリ別の排出量の内訳が表示されます。たとえば、購入した製品・サービス、雇用者の通勤、出張、リース資産 (上流) などによる tCO₂e が表示されます。
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下流排出量: GHG プロトコルに基づくスコープ 3 下流活動カテゴリ別の排出量の内訳が表示されます。たとえば、フランチャイズ、投資、販売した製品の廃棄、リース資産 (下流) などによる tCO₂e が表示されます。
- スコープ 3 の概要: 上流と下流の合計排出量の集計排出量が表示されます。GHG カテゴリに一致しなかった調達品目の数によっては、分析のために [スコープ 3 カテゴリ外の排出量 (tCO₂e)] も表示される場合があります。
Sam は特定のスコープ 3 カテゴリごとにスコープ 3 カーボンフットプリントレコードを作成することもできます。必要なエネルギー使用量レコードと調達概要レコードを関連付けることで、年間排出量を計算する活動を選択できます。廃棄物による排出量を廃棄物フットプリントによって追跡するだけの企業もあれば、すべてのスコープ 3 排出量の全体像を把握するために発生廃棄物レコードをスコープ 3 カーボンフットプリントレコードに関連付ける企業もあります。
気候変更に取り組む
Sam は出張、貨物運搬、廃棄物管理、バリューチェーンに基づく活動のすべてのスコープ 3 排出源のカーボンアカウンティングを完了しました。これで NTO は万全の態勢を整えることができました。Net Zero Cloud のおかげでプロセスはスムーズで合理化されていました。Net Zero Cloud が皆さんのカーボンフットプリント削減でもお役に立てることを願っています。