貨物運搬と廃棄物に伴う排出量を計算する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 貨物運搬排出量について説明する。
- 発生廃棄物レコードと廃棄物フットプリントレコードの主要な項目を挙げる。
- 貨物運搬活動と廃棄物処理活動のスコープ 3 排出量を計算する。
資材や商品の輸送
輸送と配送も NTO のスコープ 3 排出量の大きな要因です。輸送と配送には、完成した商品を倉庫から小売店舗に貨物トラックで運ぶ場合と原材料をベンダー拠点から NTO の事業所まで運ぶ場合があります。出張排出量と同じように、Sam は Net Zero Cloud を使用して貨物運搬活動による排出量のデータを収集して計算できます。
最初に Sam はスコープ 3 排出源レコードを作成し、そこに貨物運搬排出係数レコードを関連付けます。排出係数レコードは貨物運搬モードを参照します。貨物運搬モードは空輸、トラック運送、鉄道、海運のいずれかです。
Sam は空輸、鉄道、海運、トラックによる貨物の移動を貨物運搬エネルギー使用量レコードとして記録します。排出量の計算に使用される主要な値は移動距離、距離単位、貨物の重量、重量単位です。貨物運搬モードは貨物運搬排出係数レコードで選択したモードと一致している必要があります。
Sam はスコープ 3 カテゴリを [輸送、配送 (上流)] または [輸送、配送 (下流)] のいずれかに設定する必要があります。この選択は、計算された CO₂e がカーボンフットプリントレコードの 2 つのスコープ 3 排出量 (tCO₂e) 項目 (上流と下流) にどのように割り当てられるかに影響します。
貨物運搬排出量の計算
Sam は貨物運搬に関する次のデータをエネルギー使用量レコードに記録します。
- 貨物運搬モード: 鉄道
- 距離: 2,000 km
- スコープ 3 カテゴリ: 輸送、配送 (下流)
- 重量: 2,000 kg
[Freight Hauling - Rail- EPA 2020 (貨物運搬 - 鉄道 - EPA 2020)] では、次の値が指定されています。
- CO₂ 排出係数 = 0.014384 kg/トン km
- CH₄ 排出係数 = 0.001164 g/トン km
- N₂O 排出係数 = 0.000342 g/トン km
上記の単位によって、放出される温室効果ガスの量が距離と貨物の重量の関数として表されます。
Net Zero Cloud では CO₂、CH₄、N₂O の排出量が次のように計算されます。
排出量 (Kg) = 距離 (Km) * 重量 (kg) * 排出係数(kg/トン km)
- CO₂ 排出量 (Kg) = 2000*2000*0.014384/1000 = 57.536
- CH₄ 排出量 (Kg) = 2000*2000*0.001164/(1000*1000) = 0.004656
- N₂O 排出量 (Kg) = 2000*2000*0.000342/(1000*1000) = 0.001368
その他の排出係数セットレコードでは、次の地球温暖化係数 (GWP) 値が定義されています。
- CH₄ GWP = 28
- N₂O GWP = 265
貨物運搬排出量の計算は次のようになります。
スコープ 3 排出量 (tCO₂e) = [CO₂ 排出量 (Kg) + CH₄ 排出量 (Kg) * CH₄ GWP +N₂O 排出量 (Kg) * N₂O GWP]/1000
= [57.536+ (0.004656 * 28) + (0.001368 * 265)]/1000
= (57.536 + 0.130368 + 0.36252)/1000
= 0.0580
廃棄物の種類
スコープ 3 排出量を削減するには、廃棄物に伴う排出を管理し、廃棄物処理のアカウンティングを含む包括的な排出インベントリを作成することが必要です。GHG プロトコルスコープ 3 基準に準拠した詳細なスコープ 3 GHG インベントリを完成させるには、廃棄物処理 (カテゴリ 5) と販売した製品の廃棄 (カテゴリ 12) も必要です。そのため、Sam はこれらのカテゴリの GHG 排出量を推定する方法を見つける必要があります。
Net Zero Cloud を使用すれば、Sam は特定の期間の NTO の活動に伴って発生した廃棄物を把握できます。廃棄物排出係数が発生廃棄物レコードの値に適用されて、tCO₂e で表される廃棄物関連の排出量が計算されます。
Net Zero Cloud では、スコープ 3 (上流) 排出量は、原材料の加工などの事業から出る廃棄物を示します。スコープ 3 (下流) 排出量は販売した製品の廃棄やエンドユーザーによる使用などの活動から出る廃棄物を示します。
Net Zero Cloud では廃棄物関連の排出量を追跡、記録し、次のような関連カテゴリにまとめることができます。
排出源 |
処理場種別 |
排出量スコープ |
---|---|---|
固定資産排出源 |
現地 |
スコープ 1 |
オフサイト | スコープ 3 (事業から出る廃棄物) |
|
スコープ 3 排出源 |
オフサイト |
スコープ 3 (販売した製品の廃棄) |
重要なレコード
発生廃棄物レコードはエネルギー使用量レコードのようなものであり、企業が発生した廃棄物を把握するのに役立ちます。このレコードの主要な項目は次のとおりです。
- 廃棄物種別
- 処理種別
- 処理場種別
- 廃棄物処理量
- 廃棄物処理量単位
発生廃棄物レコードを定義するときに、固定資産排出源またはスコープ 3 排出源を指定できます。さまざまな項目や値がスコープ 3 排出量のアカウンティングにどのように影響するかを理解しましょう。
- Sam が固定資産排出源レコードを発生廃棄物レコードに関連付け、[処理場種別] 項目の値に [オフサイト] を指定すると、排出量は [スコープ 3 (上流) 事業から出る廃棄物に伴う排出量 (tCO₂e)] 項目に記録されます。
- Sam が固定資産排出源レコードを発生廃棄物レコードに関連付け、[処理場種別] 項目の値に [現地] を指定すると、排出量は [スコープ 1 排出量 (tCO₂e)] 項目に記録されます。
- Sam がスコープ 3 の排出源レコードを発生廃棄物レコードに関連付け、[処理場種別] 項目の値に [オフサイト] を指定すると、排出量は [スコープ 3 (下流) 販売した製品の廃棄に伴う排出量 (tCO₂e)] 項目に記録されます。
Net Zero Cloud では廃棄物による排出量を計算するために廃棄物処理排出係数レコードに事前に読み込まれているデータが参照されます。計算に使用される主要な値は廃棄物種別と廃棄方法です。廃棄物に伴う排出量は廃棄物の種類 (段ボール、食品廃棄物、プラスチック、アルミニウム缶) と廃棄方法 (焼却、埋立、リサイクル) によって異なります。廃棄物処理排出係数セットには、各廃棄物種別と廃棄方法に 1 つずつ、複数の廃棄物処理排出係数セット項目を含めることができ、具体的な排出係数 (tCO₂e/メートルトン単位) を指定できます。
廃棄物フットプリントレコードはカーボンフットプリントレコードに似ています。Sam は 1 年ごとに 1 つの廃棄物フットプリントレコードを作成し、すべての発生廃棄物レコードを廃棄物フットプリントに関連付けることができます。さらに、各廃棄物フットプリントレコードには子廃棄物フットプリント項目レコードを設定できます。このレコードでは廃棄物種別と処理種別ごとに排出量が集計されます。
廃棄物に伴う排出量を計算する
Sam は発生廃棄物レコードで次の情報を収集します。
- 廃棄物種別: アルミニウム缶
- 処理種別: リサイクル
- 処理場種別: オフサイト
- 廃棄物処理量 (トン): 30.00
[Waste Disposal Factors - EPA 2020 for AluminumCans-Recycled (廃棄物処理係数 - EPA 2020 アルミニウム缶 - リサイクル)] 排出係数セット項目レコードでは、[排出係数値 (tCO₂e/トン廃棄物)] が 0.0661 と定義されています。
[処理場種別] が [オフサイト] であるため、排出量はスコープ 3 排出量として処理されます。さらに、この廃棄物は事業の結果として発生したものです。最終的な排出量は [発生廃棄物] レコードの [スコープ 3 (上流) 事業から出る廃棄物に伴う排出量 (tCO₂e)] 項目で更新されます。
廃棄物関連の排出量を計算する数式は次のとおりです。
スコープ 3 排出量 (tCO₂e) = 廃棄物処理量 (トン) * 排出係数値 (tCO₂e/トン廃棄物)
= 30.00*0.0661 = 1.98300
次の単元では、Sam がバリューチェーン関連または調達活動の排出量を計算する様子を見ていきます。