出張に伴う排出量を計算する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 旅客航空機排出量を計算する。
- 陸路移動排出量とレンタカー排出量を計算する。
- ホテル宿泊排出量を計算する。
スコープ 3 排出源を作成する
この単元では、Sam が旅客航空機、陸路移動、レンタカー、ホテル宿泊による排出量を計算する手順を見ていきます。このような出張による排出量を把握するために、Sam はスコープ 3 排出源レコードを作成し、次の詳細を設定します。
- 名前:
NTO Scope 3 2021
(NTO スコープ 3 2021) - スコープ 3 排出源種別:
Business Travel
(出張) - 旅客航空機排出係数: Air Travel Factors - US EPA 2018 (旅客航空機係数 - US EPA 2018)
- 陸路移動時の排出係数: Scope 3 Ground Travel - AMER - US EPA 2018 (スコープ 3 陸路移動 - AMER - US EPA 2018)
- レンタカー排出係数: Rental Car - Standard class - US EPA 2020 (レンタカー - 標準クラス - US EPA 2020)
- ホテル宿泊排出係数: United States - DEFRA 2019 (米国 - DEFRA 2019)
Sam はこのスコープ 3 排出源レコードに旅客航空機、陸路移動、レンタカー、ホテル宿泊のエネルギー使用量レコードを関連付けることができます。Sam は Net Zero Cloud には出張用の排出係数が事前に読み込まれており、NTO が独自の排出係数を追加することもできることを知っています。
GHG プロトコルによると、出張はスコープ 3 排出量の主要な要因です。出張に伴って次のものによる排出が発生します。
- 空路での移動
- 電車、バス、その他の移動手段
- レンタカーまたは従業員が所有する車両による出張 (通勤を除く)
- 出張者のホテル宿泊
NTO のようなグローバル企業では、従業員はセールスカンファレンスに参加したり、別のオフィス拠点に出張したり、セミナーに参加したり、ベンダーを訪問したりします。Sam Rajan はそのような出張関連の排出量をすべて把握し、活動データをスコープ 3 排出源レコードに関連付ける必要があります。Sam は NTO の出張データを会社の旅行予約システムから取得し、まずは旅客航空機排出量に取り組みます。
旅客航空機
最初に Sam は旅客航空機排出量の主要な項目と計算を確認します。Sam は旅客航空機エネルギー使用量レコードを作成し、それをスコープ 3 排出源レコードと旅客航空機排出係数レコードに関連付けます。
計算に使用される旅客航空機エネルギー使用量レコードの主要項目は [セグメント距離] と [セグメント距離単位] です。
空路で移動する距離に基づいて、3 種類のフライト距離カテゴリ (輸送距離) があります。旅客航空機排出係数レコードには、各フライト距離カテゴリの排出係数が記録されます。排出係数は通常、旅客キロメートルあたりまたは旅客マイルあたりに排出される温室効果ガス (CO₂、CH₄、N₂O) の単位で表されます。
旅客航空機排出量の計算
Sam は旅客航空機の次のデータを旅客航空機エネルギー使用量レコードに記録します。
- セグメント距離:
1000
- セグメント距離単位: マイル
[Air Travel Factors - US EPA 2018 (旅客航空機係数 - US EPA 2018)] レコードでは、次の主要情報が指定されています。
項目 | 値 |
---|---|
中距離の CO₂/旅客マイル (kg) |
0.136 |
中距離の CH₄/旅客マイル (kg CO₂e) |
0.0000168 |
中距離の N₂O/旅客マイル (kg CO₂e) |
0.0011395 |
中距離最長値 |
2299.9 マイル |
短距離最長値 |
299.9 マイル |
セグメント距離の 1000 マイルは関連付けられた旅客航空機排出係数レコードで短距離と中距離の間の値であるため、自動的に中距離と決定されます。
Net Zero Cloud では次のように空路排出量が自動計算されます。
スコープ 3 排出量 (tCO₂e) = セグメント距離 * {CO₂/旅客マイル (kg) + CH₄/旅客マイル (kg CO₂e) + N₂O/旅客マイル (kg CO₂e)}
= 1000*(0.136+0.0000168+0.0011395) = 0.1372 tCO₂e.
タクシー、電車、リムジン、バス
次に Sam は陸路移動などのその他の移動手段による排出量に注目します。
電車、タクシー、バス、地下鉄、個人所有車、リムジンによる移動について、Sam は陸路移動時のエネルギー使用量レコードを作成し、移動のコストと費用通貨を指定します。Net Zero Cloud は企業がこのような移動に関してデータを取得するさまざまな方法を念頭に置いて設計されています。従業員はリムジン、タクシー、バス、電車で移動した場合は支払った価格をメモし、個人所有車の場合は移動距離を記録します。
陸路移動時の排出係数レコードでは、電車、個人所有車、リムジン、またはタクシーでの移動で測定された 1 キロメートルあたりの CO₂ 換算キログラムが参照されます。このレコードの [費用種別] 項目では、計算でどの排出係数が使用されるかを指定します。
陸路移動排出量の計算
Sam はエネルギー使用量レコードで陸路移動に関する次のデータを収集します。
- 交通費:
200
- 通貨コード: USD
- 費用種別: Taxi
Sam はこの計算に [Scope 3 Ground Travel - US EPA 2018 (スコープ 3 陸路移動 - US EPA 2018)] レコードを使用します。このレコードでは次の値が指定されています。
- タクシー料金 (コスト/距離単位):
2.00
- 距離単位: マイル
- タクシー排出量 (kg CO₂e/距離単位): 0.43300
まず、交通費 200 米ドルが、排出係数レコードのタクシー料金 2.00 米ドル/マイルを使用してマイルに換算されます。この係数から算出されたマイル数は 100 マイルです。これに排出係数レコードのタクシー排出量 (kg CO₂e/距離単位) の値 0.433 が乗算されます。
Net Zero Cloud では次のように陸路排出量が自動計算されます。
(交通費/距離単位あたりのタクシー料金) * タクシー排出量 (Kg CO₂e/距離単位)
= (200/2) * 0.433 = 43.30.
次にこの値が 1000 で除算されて、二酸化炭素排出メートルトン (tCO₂e) が求められます。
スコープ 3 排出量 (tCO₂e) = 43.30/1000 = 0.0433 tCO₂e
電車移動とバス移動についても類似する計算が実行されます。個人所有車の場合、通常、移動したマイル数またはキロメートル数を使用してエネルギー使用量レコードを作成します。それに陸路移動時の排出係数レコードの自家用乗用車排出量係数が乗算されます。
レンタカー
Sam はレンタカーでの移動に関連する炭素排出量についても把握する必要があります。レンタカーエネルギー使用量レコードを作成するときに、Sam は車両の平均燃費、移動距離、距離単位を追加します。レンタカー事業者から温室効果ガス排出量を tCO₂e メートルトンの集計値として入手した場合は、その値を [ベンダー提供排出量 (tCO₂e)] 項目に直接入力できます。
Net Zero Cloud のレンタカー排出係数には、5 種類のレンタカーサイズカテゴリのデータを指定する 5 つのレコードが用意されています。そのため Sam は NTO 固有のレンタカー移動カテゴリも追加できます。
レンタカー排出係数ではその他の排出係数セットレコードを使用して、使用された燃料の排出係数が決定されます。
Net Zero Cloud では、まず合計燃料消費量 (US ガロン) と距離 (キロメートル) が計算されます。次に、燃料消費量が関連排出量に換算されます。これは関連燃料種別のその他の排出係数セット項目レコードを参照することで実行されます。このレコードでは CO₂、N₂O、CH₄ の排出係数が定義されています。
Net Zero Cloud では CH₄、CO₂、N₂O の排出量がキログラムで計算されます。次に、CH₄ と N₂O の地球温暖化係数が適用されて、排出量が tCO₂e に換算されます。非常に簡単です。
ホテル宿泊
最後に Sam はホテル宿泊による排出量に取り組みます。ホテル宿泊の影響は 1 泊あたりの CO₂e 排出量 (キログラム) で評価されます。
ホテル宿泊排出係数レコードには、国ごとの平均排出量値が事前定義されています。
この計算に使用されるホテル宿泊エネルギー使用量レコードの項目は [宿泊数] と [部屋数] です。
ホテル宿泊排出量の計算
Sam は次のデータをホテル宿泊エネルギー使用量レコードに記録します。
- 部屋数:
2
- 宿泊数:
5
[United States - DEFRA 2019 (米国 - DEFRA 2019)] 排出係数では、ホテル宿泊排出 (kg CO₂e/1 泊) が 21.40 となっています。
合計排出量は 21.4 * 5 * 2 = 214 kg CO₂e と計算されます。これを 1000 で除算すると二酸化炭素排出メートルトン (tCO₂e) を求められます。
スコープ 3 排出量 (tCO₂e) = 214/1000 = 0.2140 tCO₂e
Sam はついに出張による排出量の計算を完了しました。次の単元では、貨物運搬、廃棄物管理、調達活動による排出量について学習します。
リソース
- Salesforce ヘルプ: スコープ 3 排出源レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: 旅客航空機エネルギー使用量レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: 陸路移動時のエネルギー使用量レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: レンタカーエネルギー使用量レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: ホテル宿泊エネルギー使用量レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: 旅客航空機排出係数レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: 陸路移動時の排出係数レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: レンタカー排出係数レコードの作成
- Salesforce ヘルプ: その他の排出係数セットレコードの作成
- Salesforce ヘルプ: ホテル宿泊排出係数レコードの作成
- 開発者ガイド: Net Zero Cloud Calculations (Net Zero Cloud の計算)