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固定資産の排出量を追跡する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 固定資産排出源レコードの主要な項目を挙げる。
  • 固定資産によるエネルギー使用量レコードの主要項目に値を指定する方法を説明する。
  • 固定資産によるエネルギー使用量レコードで排出量の簡単な計算を行う。

建物の状況を調べる

固定資産排出源は会社に関連付けられたすべての建物とデータセンターを表すために使用されます。NTO について Sam がこれをどのように扱うかを見ていきましょう。NTO のすべての固定資産レコードにはいくつかの主要項目があるため、Sam は NTO 本社のレコードを作成し、主要項目を確認して入力します。

[NTO Headquarters Miami (NTO マイアミ本社)] の詳細が表示されている固定資産排出源レコード。

各項目とそれが表す内容を詳しく見ていきましょう。

項目

説明

計算への影響

炭素排出量スコープの割り当て

さまざまな燃料による排出量の GHG プロトコルスコープを指定するオブジェクト。炭素排出量スコープの割り当て値オブジェクトには各燃料種別に固有のスコープ割り当てレコードがあります。

この項目を使用してユーザーは各燃料の排出量が割り当てられるスコープを指定できます。

冷媒排出係数

固定資産発生源で使用される CFC、HFC、HCFC などの冷媒の地球温暖化係数 (GWP) を保持するオブジェクト。冷媒種別ごとに 1 つのレコードを作成できます。

冷媒漏出による tCO₂e を正しく計算するには、冷媒の GWP に冷媒漏出量を掛けます。

電力排出係数セット

電気から生成されたスコープ 2 排出量の計算に関連するさまざまな情報を保持するオブジェクト。GHG プロトコルにはスコープ 2 排出量を追跡する方法として、マーケット基準の方法とロケーション基準の方法の 2 つがあります。電力排出係数セットにはこの両方の方法に固有の項目があります。

特定の郵便番号地域での電力ベースの排出を正確に計算するために、排出・発電情報統合データベース (eGRID) Web サイトなどのソースから年次データセットをアップロードできます。

その他の排出係数セット

天然ガス、プロパン、現地でのディーゼル使用などによる排出の事前定義された排出量と換算係数を保持するオブジェクト。その他の排出係数レコードでは CH₄ と N₂O の地球温暖化係数値を定義でき、関連するその他の排出係数セット項目レコードではさまざまな燃料種別 (ガソリン、LPG、バイオディーゼルなど) の値を指定できます。

電力グリッドまたはスコープ 3 データ種別に含まれない排出源のすべての個別の排出量と換算係数はその他の排出係数として取得されます。

地域の建物エネルギー原単位

商業建物エネルギー消費量調査 (CBECS) データから建物のエネルギー原単位を参照します。CBECS は米国の商業用建物のエネルギー使用情報を収集する全国標本調査です。このエネルギー使用データは信頼できる一般公開標準として使用でき、Net Zero Cloud に事前に読み込まれています。レコードの国が米国で郵便番号が有効であり、延床面積が入力されていれば、自動的に値が読み込まれます。

NTO は CBECS 建物エネルギー原単位データを使用して商業用建物のデータのエネルギー使用ギャップを補足することができます (詳細は後で説明します)。

固定資産によるエネルギー使用量

NTO の建物と倉庫では電気、補助発電機用のディーゼル、冷却用の冷媒を使用しています。そのそれぞれに個別のエネルギー使用量レコードが必要で、各レコードは同じ固定資産排出源に関連付けられています。 

Net Zero Cloud では、エネルギー使用量データと排出係数に基づいてエネルギー使用量レコード内の多くの項目が自動的に計算されます。

固定資産排出源レコードに関連付けられている 3 つのエネルギー使用量レコード。

主要項目のデータ

Sam は排出量を計算するためのエネルギー使用量レコードの作成に取り組みます。エネルギー使用量レコード内の情報を 1 つずつ見ていきます。

一般情報

固定資産によるエネルギー使用量レコードで、延床面積と占有床面積や、会社が資産を所有しているかどうかなどの情報は計算に役立ちます。また、Sam はエネルギー消費量が記録されている固定資産、エネルギー消費の開始日と終了日、対応する固定資産カーボンフットプリントレコードも指定できます。

エネルギー使用量レコードの一般情報。建物の詳細、報告期間、関連する資産やカーボンフットプリントへの参照など。

消費

エネルギー使用量レコードの対象の燃料種別に応じて、このセクションで Sam は次のことを定義できます。

  • 燃料種別: 電力、ディーゼル、天然ガス、プロパンなど、エネルギー消費量を入力できる燃料種別が複数あります。
  • 燃料消費量単位: Net Zero Cloud では、サポート対象のさまざまな燃料種別に応じて複数の測定単位がネイティブにサポートされています。

固定資産によるエネルギー使用量レコードの燃料消費情報。

排出係数 

固定資産排出源で排出係数が指定されている場合は、関連するエネルギー使用量レコードに自動的に継承されます。Net Zero Cloud は柔軟であるため、Sam は必要に応じて各エネルギー使用量レコードの値を上書きすることもできます。

固定資産によるエネルギー使用量レコードの電力、燃料、冷媒に関連付けられた排出係数。

追加排出量

Sam は各スコープの追加排出量を指定することで、必要に応じて排出量を手動で調整できます。これは合計排出量の計算で使用されます。

固定資産によるエネルギー使用量レコードの追加排出量情報。

グリッドミックス

エネルギー使用量レコードのグリッドミックスの値は関連する電力排出係数セットレコードで指定されたグリッドミックス率に基づいて計算されます。必要な場合には、Sam は特定の郵便番号地域にある NTO の建物のサプライヤーから入手した情報に基づいて、電力排出係数セットレコードのロケーション基準のグリッドミックスとマーケット基準のグリッドミックスの値を上書きできます。

  • マーケット基準のグリッドミックスは組織が特定のサプライヤーから購入することを選択した電力に基づき、サプライヤー固有の排出率が考慮されます。
  • ロケーション基準のグリッドミックスは電力が使用される現地のグリッド地域の排出原単位に基づきます。

固定資産によるエネルギー使用量レコードのロケーション基準のグリッドミックスとマーケット基準のグリッドミックスの情報。

Renewable Energy (再生可能エネルギー)

[Renewable Energy (再生可能エネルギー)] には再生可能エネルギー源から生成された電力量が表示されます。Sam は [再生可能エネルギー種別] 項目と [割り当て済み再生可能エネルギー] 項目で、再生可能エネルギー源から生成された電力を具体的に割り当てることができます。再生可能エネルギー計算の基本となるのは、エネルギー使用量レコードに入力された割り当て済み再生可能エネルギー値と電力排出係数レコードのマーケット基準のグリッドミックス率です。

固定資産によるエネルギー使用量レコードの再生可能エネルギー情報。

Emissions (排出量)

このセクションには、固定資産によるエネルギー使用量レコードに入力された量に対応してスコープ別に自動計算された排出量が tCO₂e 単位で表示されます。

固定資産によるエネルギー使用量レコードの自動計算された温室効果ガス排出量の値。

いくつかの計算の説明

これで Sam は固定資産によるエネルギー使用量レコードの主要な情報を理解したため、次に排出量がどのように計算されるかを学習します。Sam は [NTO Office Headquarters Miami (NTO マイアミ本社)] 固定資産排出源レコードに次のようなエネルギー使用量レコードを作成します。

固定資産排出源

固定資産によるエネルギー使用量

燃料種別

燃料消費量の詳細

NTO Headquarters Miami (NTO マイアミ本社)

Monthly Electricity Bill Jan (月間電力請求書 1 月)

Electricity (電力)

1000 kWh

NTO Headquarters Miami (NTO マイアミ本社)

Monthly Fuel Bill Jan (月間燃料請求書 1 月)

Diesel (ディーゼル)

1000 リットル

NTO Headquarters Miami (NTO マイアミ本社)

Q1 Refrigerant Bill (第 1 四半期冷媒請求書)

Refrigerant (冷媒)

10 kg

電力関連排出量の計算

[nited States - US-TX - electricityMap 2019 (米国 US-TX electricityMap 2019)] 排出係数レコードでは次の値が定められています。

  • ロケーション基準排出係数の CO₂e 排出係数 = 396.78 g/kWh
  • ロケーション基準の石炭ミックス率: 20%
  • ロケーション基準のガスミックス率: 47%
  • ロケーション基準の原子力ミックス率: 11%

電力排出係数セットレコードの排出係数の詳細。

固定資産によるエネルギー使用量レコード [Monthly Electricity Bill Jan (月間電力請求書 1 月)] で、エネルギー値がどのように計算されるかを見てみましょう。

スコープ 2 ロケーション基準排出量 (tCO₂e) = 電力消費量 (in kWh) * 排出係数 (g/kWh) / 10^6 (tCO₂e 換算係数) 

                                                                       = 1000*396.78/1000000 = 0.3968 tCO₂e

さらに、ロケーション基準のグリッドミックスは次のように計算されます。

  • ロケーション基準石炭由来の電力 (kWh): 1000 kWh の 20% = 200 kWh
  • ロケーション基準ガス由来の電力 (kWh): 1000 kWh の 47% = 470 kWh
  • ロケーション基準原子力由来の電力 (kWh): 1000 kWh の 11% = 110 kWh

電力の固定資産によるエネルギー使用量レコードの温室効果ガス排出量の結果とグリッドミックスデータ。

マーケット基準の電力排出量もマーケット基準のグリッドミックス率を参照して同様に計算されます。

ディーゼル関連排出量の計算

[Fuel Conversion Factors - DEFRA EPA 2018 (燃料換算係数 - DEFRA EPA 2018)] 係数セットレコードでは、地球温暖化係数 (GWP) の値が定められています。

  • CH₄ の GWP: 28
  • N₂O の GWP: 265

[OEFSI-0000006] 係数セット項目レコードでは次のように定められています。

燃料種別

発熱量

提供された tCO₂e 排出係数

CH₄ 排出係数

CO₂ 排出係数

N₂O 排出係数

ディーゼル

15 kWh/L

12.45 トン/mWh

3.00

73.96

0.06

まず、発熱量 15 kWh/L を使用してディーゼルの消費 (1000 リットル) を kWh 相当量に換算します。 

合計燃料消費量 = 15000 kWh (1000*15)

次に、この値に提供された tCO₂e 排出係数を掛け、換算係数で割ります。

スコープ 1 排出量 (tCO₂e) = 提供された tCO₂e 排出係数 * 合計燃料消費量/1000 

                                               = (12.45*15000/1000) = 186.75

固定資産によるエネルギー使用量レコードで自動的に計算されたスコープ 1 排出量 (tCO2e) の値。

冷媒関連排出量の計算

最後に、燃料種別が冷媒の場合に排出量がどのように計算されるかを確認しましょう。[Sulphur hexafluoride (SF6) - IPCC AR4 2007 (六フッ化硫黄 (SF6) - IPCC AR4 2007)] 冷媒排出係数レコードでは地球温暖化係数が 22,800 と定められています。

排出量の計算は次のようになります。

スコープ 1 排出量 (tCO₂e) = GWP * 燃料消費 (kg)/1000 

                                             = 22,800*10/1000 = 228

冷媒の固定資産によるエネルギー使用量レコードでの温室効果ガス排出量の結果。

次の単元では、Sam はこの固定資産のカーボンフットプリントを作成し、計算について詳しく学習します。一緒に見ていきましょう。

リソース

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