ビジネスルールエンジンについて知る
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- ビジネスルールエンジンの主なメリットを挙げる。
- ビジネスルールエンジンによって各業種にどのようなメリットがあるか説明する。
- ビジネスルールエンジンの主なツールとその重要な機能を挙げる。
- ビジネスルールエンジンを使用する場合の基本的なプロセスについて説明する。
主なコンポーネント
ビジネスルールエンジンは、高度なロジックを適用して複雑な意思決定を自動化する一連のサービス、コンポーネント、オブジェクトで構成されます。
このエンジンの核となるのが式セット、決定マトリックス、決定表という 3 つのツールです。
各ツールのコア機能が連携して、生産的かつシームレスに機能します。
下表は、各ツールの定義を示しています。
ツール | 説明 |
---|---|
式セット |
式セットは、式セット要素を使用して作成した一連のルールです。式の各要素が 1 つの論理ステップになり、順次実行されます。 式セットは条件を評価して算術演算を実行し、決定表や決定マトリックスを参照して、複数の変換を同時に実行します。 フロー、OmniStudio、サードパーティツールを使用して作成したワークフローに式セットを追加できます。 |
決定マトリックス |
決定マトリックスは入力値をテーブル行と照合し、一致した行の出力値を返します。 決定マトリックスを式セット内で直接コールすることも、スタンドアロンツールとして使用することも可能です。 |
決定表 |
決定表には、一連の入力値に対応する複数の結果が示されます。 決定表は Salesforce オブジェクトからルールを読み込み、オブジェクトの各項目に応じた演算子をサポートします。 |
各ツールには、ビジネスルールエンジンという専用の Salesforce アプリケーションからアクセスできます。
ビジネスユーザーは各ツールのビジュアルデザイナーを使用して、自動決定を設計できます。
この 3 つのコアアプリケーションとその主な機能については、後続の単元で詳しく説明します。
ビジネスルールエンジンを搭載した Developer Edition 組織にサインアップする
このモジュールにはハンズオン Challenge がありませんが、練習のために手順を試してみたい場合は、ビジネスルールエンジンとサンプルデータが搭載された特別な Developer Edition 組織が必要です。通常の Trailhead Playground には、ビジネスルールエンジンやサンプルデータが搭載されていません。次の手順に従って、今すぐ無料の Developer Edition を取得してください。
- ビジネスルールエンジンを搭載した無料の Developer Edition 組織にサインアップします。
- フォームに記入します。
- [Email (メール)] に、有効なメールアドレスを入力します。
- [Username (ユーザー名)] に、メールアドレス形式の一意のユーザー名を入力します。有効なメールアカウントである必要はありません (たとえば、yourname@hc4evah.com でも構いません)。
- [Sign me up (サインアップ)] をクリックします。確認メッセージが表示されます。
- アクティベーションメールを受信したら (数分かかることがあります)、そのメールを開いて [Verify Account (アカウントを確認)] をクリックします。
- パスワードと確認用の質問を設定して、登録を完了します。
ヒント: 後でアクセスしやすいように、自分のユーザー名、パスワード、ログイン URL をメモしておきます。
トライアル組織にログインした状態になります。ビジネスルールエンジンの設定とユーザーの設定についての詳細は、「ビジネスルールエンジンの設定」を参照してください。
デジタルプロセスを飛躍的に向上させる
ビジネスルールエンジンでは、ビジネスユーザーがビジュアルデザイナーを使用して、自動決定をコードなしで直感的に設計できます。
このエンジンがあれば、ほぼすべての業種のプロセスのガイド付きインタラクションやワークフローを強化できます。実際、B2C (対消費者) 規模で稼働するため、何千ものルールを維持し、何百万ものインタラクションを自動化することが可能です。
ビジネスルールエンジンは、さまざまな業種のチームが直面する一般的な問題に対処します。
ここでは、ビジネスルールエンジンによって解決される主な問題点をご紹介します。
課題 | 説明 |
---|---|
技術的な複雑性 |
ビジネスルールの実装に複雑な技術要件がある場合、企業が負担するコストが高額になり、ソリューションの開発に時間がかかります。 |
柔軟性の不足 |
企業が決定を管理し拡張するツールを持ち合わせていなければ、最初のソリューションに留まり、さらに改良し刷新していくことがありません。 |
高度な機能の欠如 |
ソリューションが短絡的で、条件、集計、ルックアップテーブルを処理する機能がない場合は、ビジネスの高度なニーズに対処できません。 |
インテグレーションの限界 |
ルールを既存のビジネスプロセスに統合する十分なオプションがなければ、ルールの実装に苦心します。 |
透明性の欠如 |
お客様がルール処理の内情を知ることはほとんどありません。たいていは、申請や商品選択などの処理がなぜうまくいかないのかよくわからずに困惑します。 |
パフォーマンス上の問題 |
B2C のケースが大量に発生し、パフォーマンスや信頼性に深刻な問題が生じることがよくあります。 |
こうした一般的な問題の解決こそが、ビジネスルールエンジンの得意とするところです。このエンジンを利用すれば、各種のデジタルプロセスに対する手動介入が目に見えて減少します。
ビジネスルールエンジンには主として次のようなメリットがあります。
メリット | 説明 |
---|---|
直感的 |
コード不要のビルダーを使用して自動化プロセスを設計できるため、時間やコストを節約できます。 ビジネスエキスパートが自らルールを管理できるため、開発者チームに依頼する必要がありません。 |
アジャイル |
決定を管理して拡張できます。 バージョン管理、モジュール式、再利用性などの機能により、プロセスの継続的な刷新や改良を簡単に実施できます。 |
機能 |
条件、ルックアップテーブル、サブルール、集計など、豊富かつ複雑な計算機能を使用できます。 |
柔軟性 |
わずか数回のクリック操作で、ルールをデジタルインタラクションやプロセスに直接組み込むことができます。 |
透明性 |
決定事項がユーザーに示されるため、ユーザーが常に最新情報を把握して、ガイド付きプロセスにエンゲージします。 |
パフォーマンス |
何千ものルールを管理し、何百万ものインタラクションを自動化できるため、膨大なケースが発生する B2C のニーズに対処できます。 |
あらゆる業種のあらゆるユーザーに役立つソリューション
ビジネスルールエンジンは、あらゆる業種に役立つソリューションです。
次は、それぞれの業種がビジネスルールエンジンを使用して価値を実現する具体的な方法をご紹介します。
業種 | ユースケース |
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金融サービス |
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ヘルスケア |
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保険 |
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通信 |
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公共セクター |
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製造業 |
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ビジネスルールエンジンは、各業種に固有のプロセスに対応するソリューションとなるだけでなく、各組織のさまざまなユーザーの個別のニーズにも対処します。
下表は、ビジネスルールエンジンによってさまざまなユーザーの業務やタスクがどのように促進されるかを示しています。
ユーザー | 実施するタスク |
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お客様 |
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ビジネスアナリスト |
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カスタマーサービス担当者 |
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Salesforce 開発者 |
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ルールの簡単なデプロイ
ビジネスルールエンジンの主なメリットとコンポーネントがわかったところで、次は、実際のビジネスプロセスにデプロイする方法を見ていきましょう。
まず、式セットビルダーを使用してルールを作成します。
前述のとおり、有効な決定マトリックスや決定表を任意の式セットに直接追加できます。
次に、OmniScript やフローを使用して、選択したガイド付きエクスペリエンスにルールを組み込みます。
下図は、Salesforce フローでローンの割引を計算する式セットをコールする方法を示しています。
最後に、ガイド付きエクスペリエンスをデプロイすれば完了です! デジタルインタラクションを使用するエンドユーザーに自動決定が実行されます。
嬉しいことに、ビジネスルールエンジンには大がかりな設定もコーディングも必要ありません。
ビジネスルールの結果を説明する
優れたユーザーエクスペリエンスの基盤となるのが透明性と使いやすさです。Decision Explainer は、ビジネスルールで特定の結果が生成される理由に関するインサイトを示すサービスです。
ビジネスルールエンジンを使用してルールを作成し、Decision Explainer を使用して結果の根拠を説明します。そのため、ルールが実行される理由をユーザーが簡単に理解できるため、不可解な点がなくなります。
説明可能性メッセージテンプレートを使用して、式セットのステップ結果のメッセージを保存できます。詳細は、「ビジネスルールエンジンの Decision Explainer」を参照してください。
Zercovana の窮状
このモジュールの後続の単元では、Zercovana という架空のマイクロ国家のシナリオを通して、ビジネスルールエンジンの詳細を見ていきます。
Zercovana は現在、公共サービスの実施方法について国民から強い批判を浴びています。デジタルソリューションに十分な投資を行ってこなかったため、国民の手続きが面倒で不快なものになっています。Zercovana の国民は日頃からお役所仕事に対する不満を口にしており、公共サービスのあらゆる手続きが停滞しているように思われます。
国民のこうした不満に対処するために、Zercovana は「Ease of Doing Business (ビジネス関連手続きの簡便化)」というイニシアチブを立ち上げました。この取り組みの主軸として、ライセンスや許可、検査の管理プロセスを大幅に効率化する目的で Salesforce Government Cloud を導入しました。Zercovana ではパイロットプロジェクトとして、ビジネスルールエンジンを使用してビジネスライセンスの申請プロセスを簡素化したいと考えています。
この申請プロセスでは、ガイド付きインタラクションを使用して、申請者が各自のライセンス申請料を判断します。ビジネスルールエンジンによってインタラクションの申請料が自動的に計算されます。
ここで、このガイド付きプロセスを設定して使用する主な人物をご紹介しましょう。
プログラムマネージャーの Jessica Morales は、ライセンス申請料を決定するルックアップテーブルと式セットの作成を担当します。
Zercovana のテクニカルスタッフである Alex Park は、この申請のガイド付きフローを構築します。このプロセスが、Jessica の式セットを呼び出して申請料を決定します。
Zercovana の国民で、小規模ビジネスのオーナーでもある Donisha Smith は、完成したガイド付きフローを使用して自身のビジネスライセンスの申請料を判断します。
後続の単元で、Zercovana がビジネスルールエンジンを使用して、ビジネスライセンスの申請プロセスを自動化する方法を見ていきます。