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実際のビジネスプロセスマッピングを見る

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • ビジネスプロセスマップによってプロセスの微妙な違いまですべて捉えることができるしくみを説明する。
  • ビジネスプロセスマップにどの程度の詳細を含めるべきかを決定する。
  • ビジネスプロセスマッピングワークショップの価値を説明する。

Ursa Major Solar のプロセスマップの概要

Ursa Major Solar が営業、サービス、マーケティングの顧客データを統合するにあたって、社内の Salesforce ソリューションアーキテクト、ビジネスアナリスト、システム管理者は自社のビジネスプロセスをじっくりと見直しています。新しい統合ビジネスプロセスを定義することによって批判的な目で部門間の連携を見つめ、特にカスタマーエクスペリエンスに重点を置きたいと考えています。 

Ursa Major Solar の場合、これはシンプルなビジネスプロセスではありません。ジャーニーからリード、収益、サービスへという流れがあり、多くの手順が含まれ、営業担当からマーケティング担当者や商談チームまでの多くの人が関与しています。では、営業、マーケティング、サービス、業務の各チームが連携してシームレスなカスタマーエクスペリエンスを提供するにはどうすればよいのでしょうか?

これは重大な質問です。そこで威力を発揮するのが Einstein 1 です。

Einstein 1 は Ursa Major Solar の顧客中心のビジネスモデルの鍵となります。というのも、ビジネスにおけるあらゆるリレーションで使用される一元化された情報源を提供できるからです。Ursa Major Solar はつながりのあるビジネスリレーションによって有意義なカスタマーエクスペリエンスを提供できるということを知っています。

次の図はここでマップを作成する Ursa Major Solar のプロセスをマーケティングの観点から見た概要図です。この単元のすべてのプロセス図は UPN 標準を使用して表記されています。  

Marketing Cloud Engagement でのリード作成から Sales Cloud でのリード割り当てと取引開始を経て CPQ での注文管理と更新までのプロセスフローを示す図。

レベル 1: リード-to-収益

このプロセスマップは上記のフローを表しています。この図は最上位、つまりレベル 1 です。この図の活動ボックスが表すステップのほとんどにはさらに詳細レベルが存在することが、各ボックスの左上隅を見ればわかります。下位レベルの図に詳細を記述することで、この最上位レベルの図が読みやすくなっています。

Ursa Major Solar のリード-to-収益プロセスを示す UPN ビジネスプロセスマップ

このプロセスマップは受信したリードから始まります。不完全なデータがある場合にはプロセスは終了します。そうでない場合は次のようになります。 

  1. ボックス 1 — Progress lead (リードを進行させる): アカウントエグゼクティブが Sales Cloud でリードを進行させます。
  2. ボックス 2 — Run campaign (キャンペーンを実行する): リードスコアが十分に高くない場合は、マーケティング管理者が Marketing Cloud Engagement でキャンペーンを実行します。
    1. 会社がリードへのリーチアウトに成功すると、プロセスは終了します。
    2. リードが購読を取り消した場合は、プロセスは [Progress lead (リードを進行させる)] ステップに戻ります。
  1. ボックス 3 — Sell to customer (顧客に販売する): リードスコアが十分高い場合は、Sales Cloud で取引先と取引先責任者が作成され、アカウントエグゼクティブが顧客に販売します。
    1. 商談がない場合は、プロセスは [Progress lead (リードを進行させる)] ステップに戻ります。
  1. ボックス 4 — Forecast revenue (収益を予測する): 商談期日がある場合は、営業 VP が Sales Cloud で収益を予測し、プロセスは終了します。
  2. ボックス 5 — Raise and accept quote (見積を発行して受け入れる): アカウントエグゼクティブが商談を成立させたときに関連商品がある場合は、財務管理者が Revenue Cloud を使用して顧客に見積を発行します。
  3. ボックス 6 — Raise and confirm order (注文を作成して確認する): 顧客が見積を受け入れた場合、顧客は次に注文を確認します。
  4. ボックス 7 — Ship product (商品を発送する): 注文が確認されたら、製造部門が ERP システムを使用して商品を発送します。
  5. ボックス 9 — Raise invoice (請求書を発行する): または、注文が確認されたら、財務管理者が Revenue Cloud を使用して請求書を発行します。
  6. ボックス 8 — Raise Payment (支払を行う): 請求書が受け取られるか商品が発送されたら、顧客が支払を行います。
  7. ボックス 10 — Book Revenue (収益を計上する): 顧客が支払を行い、請求書が完了したら、財務管理者が Revenue Cloud を使用して収益を計上します。

会社の収益とアカウントエグゼクティブの手数料でプロセスは終了します。  

簡単にするために、このプロセスとそれに関する引継ぎについては、いくつかのことを仮定しています。実際には、プロセスの各ステップはライブのワークショップで関係者によって検証されます。 

低いレベルのマップを作成することで、プロセスマップ全体がさらに明確になり、最上位レベルの図で行った仮定について説明できます。下位レベルの図の範囲は、ドリルダウン元のボックスの入力と出力によって決まります。つまり、ドリルダウンすると入力と出力がより詳細になります。

レベル 2: リード-to-収益 → [Progress lead (リードを進行させる)]

最上位レベルの [Progress lead (リードを進行させる)] ボックスをドリルダウンするとレベル 2 の [Progress lead (リードを進行させる)] が表示されます。このマップはリードを作成して評価し、進行させる手順を示します。 

Ursa Major Solar のリード-to-収益プロセスの [Progress lead (リードを進行させる)] 活動ボックスの詳細レベルである [Progress lead (リードを進行させる)] プロセスを示すマップ。 

このプロセスは受信したリードから始まります。このプロセス全体は Sales Cloud で実行されます。 

  1. ボックス 1 — Create lead (リードを作成する): マーケティング管理者がリードを作成します。
  2. ボックス 2 — Dedupe lead (リードの重複を排除する): マーケティング管理者が新しいリードとプライバシーレコードを作成した後に、リードの重複を削除します。
  3. ボックス 3 — Qualify and maintain lead (リードを評価し、管理する): リードを統合した後に、マーケティング管理者がリードを評価し、管理します。
  4. ボックス 4 — Assign lead (リードを割り当てる): リードスコアが 8 以上の場合、営業管理者がリードを割り当てます。
  5. ボックス 5 — Convert lead to account (リードを取引先に変換する): リードがテリトリーに割り当てられたら、営業管理者がリードを取引先に変換します。

このプロセスは Sales Cloud での取引先と関連取引先責任者の作成によって終了します。 

ただし、作業がまだ残っています。このプロセスにはさらに詳細なレベルが必要です。まだ不足している情報があるためです。例としてボックス 1 の [Create lead (リードを作成する)] に注目します。未解決の質問が 2 つあります。 

  • リードを作成する手順はどのようなものか? Web フォーム、メール、インポートリスト、マーケティングパートナーのどれからリードを受信するかによって手順が異なるか?
  • GDPR、CCPA、その他の該当するプライバシー規制を満たすには、プライバシーレコードの取得や作成をどのように行うか?

さらに補足情報も必要です。前述したように、各ボックスには添付ファイルによってコンテキストを追加できます。補足情報には主に次の 2 つの種類があります。 

  • 実装アセット: 要件、ユーザーストーリー、Salesforce メタデータ、エンティティリレーションダイアグラム (ERD)
  • 業務アセット: メモ、標準業務手順書 (SOP)、ヘルプトピック、メトリクス、アプリケーションへのリンク

レベル 3: リード-to-収益 → [Progress lead (リードを進行させる)] → [Create Lead (リードを作成する)]

最終となる次のレベルを見てみましょう。このマップはリードの作成方法を示します。 

Ursa Major Solar の [Progress lead (リードを進行させる)] プロセスの [Create Lead (リードを作成する)] ボックスの詳細レベルである [Create Lead (リードを作成する)] プロセスを示すマップ。このプロセスは Web、メール、スプレッドシート、パートナーのいずれかから取得されたリードによって始まります。

  1. ボックス 1 — Process web to lead (Web-to-リードを処理する): リードを Web から取得する場合、マーケティング管理者が Marketing Cloud Engagement でリードを処理します。
  2. ボックス 2 — Process email to lead (メール-to-リード) を処理する: リードをメールから取得する場合、マーケティング管理者が Marketing Cloud Engagement でリードを処理します。
  3. ボックス 3 — Prepare data (データを準備する): リードをスプレッドシートから取得する場合、マーケティング管理者がスプレッドシートでデータを準備します。
  4. ボックス 4 — Import leads (リードをインポートする): データファイルを準備した後に、マーケティング管理者が Marketing Cloud Engagement にリードをインポートします。
  5. ボックス 5 — Prepare marketing partner lead data (マーケティングパートナーのリードデータを準備する): リードをパートナーから取得する場合、マーケティング管理者がスプレッドシートでマーケティングパートナーリードデータを準備します。
  6. ボックス 6 — Import leads and link to partner (リードをインポートし、パートナーにリンクする): データファイルを準備した後に、マーケティング管理者が Marketing Cloud Engagement にリードをインポートし、パートナーへのリンクを追加します。
  7. ボックス 7 — Add data privacy record (データプライバシーレコードを追加する): Marketing Cloud Engagement にデータを取得した後に、マーケティング管理者がデータプライバシーレコードを追加します。

このプロセスは Marketing Cloud Engagement での新しいリードとプライバシーレコードの出力によって終了します。 

ドリルダウンの適切なレベル数は?

すべての場合にあてはまる万能な答えはありません。上記の例には 3 つのレベルがありますが、最上位レベルプロセスの別の部分のレベル数はそれよりも多かったり少なかったりします。 

プロセスを表すのに必要なレベル数を決定するには 3 つの要素があります。

  • 複雑さ: あいまいさを完全に排除するのに必要なレベルの詳細を追加する必要があります。詳細を追加するかどうか迷う場合には、追加します。ビジネスプロセスマップにあいまいさの余地があると、開発者とエンドユーザーの両方の時間と労力が無駄になります。
  • 規制要件: プロセスにコンプライアンス義務がある場合は、一貫して厳密に従っていることを証明できるように、非常に具体的に記述し、バージョン管理を行う必要があります。
  • ユーザーの専門知識: 新しいプロセスに従うスタッフの経験が浅いほど、プロセスを具体的に指示する必要があります。プロセスの各ステップに補足コンテンツをリンクする必要もあります。プロセスを実行する頻度が低い場合には、より多くのドキュメントが必要です。プロセスをセルフサービスのヘルプリソースだと考えてください。

2 つの例について考えてみましょう。営業のプレゼンテーションを行うプロセスのマップを作成する場合、すべてのステップや微妙な違いを詳しく記述する必要はありません。ただし、このプロセス (プレゼンテーションの実行) には標準営業デッキへのリンク、反論に対処するためのアクセラレーターとメモ、コアオブジェクトやオートメーションへのリンクなどを含めることが考えられます。 

では、スプレッドシートからリードをインポートしてデータプライバシー権限を追加するプロセスはどうでしょうか? この場合、状況が少し違います。毎回正確に実行できるように、細かいところまでドキュメント化された複数のステップが必要です。ステップにはスプレッドシートを操作するための手順、サンプルの空白スプレッドシート、データローダーページ設定のスクリーンショットなどを含めます。

実際のプロセスマッピング

ライブのワークショップを行ってビジネスプロセスマップを作成することは、関係者にアンケートを記入してもらったり、個別の面談を実施するよりもはるかに効果的です。対面であれ仮想であれ、ライブのワークショップを行うのは手間がかかるように思われますが、大きなメリットがあります。そのいくつかを挙げると、次のものがあります。

  • ライブのワークショップではグループの総意をまとめ、アイデアを生み出し、すぐに効果があることを見つけられる。
  • ワークショップのその場でプロセス図を作成しているため、自分の席に戻ってプロセス図を作成するためにメモやホワイトボードの写真を解釈する必要がない。
  • 参加者が作成の過程を見て、意見を言う機会があることで、全員の同意や承認を得やすい。

これによって相当な時間を節約でき、最初から余分な時間があることには大きな価値があります。 

このプロセスには関係者が不可欠です。入力から結果までに関与するすべての関係者がマッピングセッションに参加するようにします。誰かが欠けるとワークショップの意味がなくなってしまいます。プロセスマッピングの効果はプロセスのドキュメント化ではなくプロセスのコラボレーションと解決にあるためです。低いレベルの図にドリルダウンすると、範囲が狭くなり、関係者が少なくなります。さらに、範囲が狭くなれば、ワークショップの進行が速くなります。 

ワークショップではエンドツーエンドプロセスの所有者が場面を設定し、基本ルールを説明し、適切なプロセスについての意見の相違を解決し、次のステップを割り当てます。

実世界でのプロセスマッピング

ここまでで、ビジネスプロセスマッピングとは何か、なぜ役に立つのかを学び、Ursa Major Solar の例でその価値を確認しました。ビジネスプロセスマップは Salesforce 実装をサポートするドキュメントの重要な部分です。適切なプロセスマップを含め、徹底したビジネス分析を行うことによって、全員が同じ情報を共有し、チームの俊敏性を高め、より良いソリューションアーキテクチャを得ることができます。 

会社でプロセスマッピングを広めようとしている場合は、簡単に効果が出やすい小規模なプロセスから始めます。また、日常生活で気付いた実際のプロセス (スーパーに行く、自転車のタイヤに空気を入れるなど) のマップを作成することでいつでも練習できるということも忘れないでください。

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