ビジネスプロセスマップを作成する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- マップを作成するプロセスの範囲を定義する。
- ビジネスプロセスを入力と結果によって定義する。
- ビジネスプロセスマップを作成するための適切な質問をする。
Ursa Major Solar の背景
Ursa Major Solar はソーラーエネルギー業界の大手メーカーです。対象とする市場は他の製造企業と個人消費者で、売れ筋商品はソーラーパネル、モニター、バッテリー、保証などです。
製造業界でも当然のようにデジタルトランスフォーメーションが進行しています。ソーラー技術の進歩と大きく変化した顧客の期待によって、Ursa Major Solar の営業チーム、サービスチーム、マーケティングチームに求められる水準が高くなっています。
顧客からの期待の高まりに応えるために Ursa Major Solar は 360 度の顧客情報を把握することに取り組んでいます。Ursa Major Solar のチームはすべての情報を Einstein 1 内に置くことにしました。Ursa Major Solar では Sales Cloud、Marketing Cloud Engagement、Service Cloud を使用しています。目指しているのは、営業、マーケティング、サービスのシステムを統一することにより、収益を増やし、プロセスのボトルネックを排除することです。
マルチクラウドジャーニー
システム間を接続することに加えて、Ursa Major Solar のチームはビジネスプロセスを批判的な目で見直すことで可能な限り効率的かつ効果的に業務を行えるようにしたいと考えています。
Ursa Major のビジネスにとって Salesforce は重要な役割を果たしていますが、プロセスは Salesforce に関するものだけではないことを忘れてはいけません。いくつものアプリケーションや手作業によって会社の日々の業務が行われているため、Salesforce の画面だけでプロセス全体に対応できるわけではありません。
使用されているアプリケーションではなく、入力と結果という観点からビジネスプロセスを考えることをお勧めします。次にいくつかの例を示します。
プロセス名 |
入力 |
結果 |
---|---|---|
リード-to-収益 |
マーケティングによって評価されたリード |
売掛金勘定に計上された収益 |
見積-to-収益 |
顧客から要求された見積 |
売掛金勘定に計上された収益 |
アイデア-to-製品 |
Salesforce IdeaExchange に投稿されたアイデア |
Salesforce Platform で正式リリースされた機能 |
採用-to-退職 |
組織で募集中の職務 |
従業員が組織に勤務する最終日 |
ここに挙げたのは概要レベルでの例です。ただし、最上位レベルだけからプロセスを見る必要はありません。この考え方をより狭い範囲のプロセスにも適用できます。
プロセス名 |
入力 |
結果 |
---|---|---|
リード-to-商談 |
マーケティングチームによって評価されたリード |
営業チームによって評価された商談 |
問い合わせ-to-ケースクローズ |
顧客のサポートケースがオープンされる |
ケースがクローズされる |
見積-to-注文 |
顧客が見積を要求する |
顧客によって注文が確認される |
採用-to-初日 |
新しい従業員が採用される |
新しい従業員が会社での初日を完了する |
設計の目的はより良いアプリケーションだけではなく、ビジネスでのより良い結果を得ることです。幅広いエンドツーエンドのプロセスを常に考慮する必要があります。
この考え方を実際の小規模なプロセスに適用してみましょう。次のテストは理解できたことを簡単に確認するためのもので、採点の対象ではありません。質問を読み、正しいと思う解答をクリックしてください。[送信] をクリックすると、フィードバックとして選択した解答が正解か不正解かと、その理由が表示されます。
定義し、エンゲージし、特定する
プロセスの入力と結果が何であるかについて同意を得るには時間がかかることが多く、上位レベルのプロセス図ではなおさらです。ただし、入力と結果が決まると、それによってそれ以下のすべての詳細レベルの範囲が定義されます。活動ボックスからドリルダウンすると、次のレベルのマップはそのボックスの入力と結果によって制約されます。
たとえば、上記のリード-to-収益プロセスでは関係者が次のような質問をします。
- リードとは何か? 何かを購入しようとしている人か (営業チームによるリード)? それとも、イベントに登録した人か (マーケティングチームによるリード)?
- 収益とは何か? 署名済みの契約か? 発行済みの請求書か? それとも、銀行口座に実際に入金された収益か?
リード-to-収益は、最初に取り組むには難しいプロセスかもしれません。ビジネスにとってのコアプロセスであるため、多くの関係者がいて、社内政治が関わってくることもあります。さらに、プロセスマッピングというアイデア自体に反対される可能性もあります。(最初の単元の「そんな時間はない」を覚えていますか?)
シンプルなプロセスから始めることでプロセスマッピングの価値を示すことを検討してください。リスクが低く影響が大きいプロセスであれば理想的です。たとえば、上記の採用-to-退職プロセスから始めるのはどうでしょうか? 採用-to-初日から始めるのはさらにお勧めです。このプロセスは範囲が狭く、関係者が少なく、メトリクスが明確です。さらに、このプロセスを改善すれば、すべての新しい従業員のオンボーディングプロセスを改善することになります。まさに大きな勝利と言えます。
最初のプロセスマップを作成する準備をする
プロセスマッピングを開始するにあたって、ベストプラクティスや原則を確認して、マッピングプロセスとマップ自体から最大限の価値を得られるようにしましょう。
練習
ビジネスプロセスのマッピングを開始する前に、練習として仕事以外のことをマッピングしてみましょう。プロセスは至る所にあります。朝食の準備、誕生日カードの郵送、コミュニティの資金集め活動の計画はすべてプロセスです。かならず小さなものから始めましょう。最初から組織のコアプロセスのマップを作成しようとしないでください。最初はオンボーディングプロセスのようなリスクが低いものを選択してください。
ブランド設定と標準
見た目の良いプロセス図の価値を侮ってはいけません。ユーザーにとってプロセスを変更するのは大変なことです。改善されたプロセスを利用するようにエンドユーザーを説得しやすくするために、プロセスマップのデザインを会社のブランド標準に合わせます。プロジェクトに印象的な名前を付け、プロセスマップでは組織内の既存の用語 (既存の役割名など) を使用します。
ガバナンス
プロセスマップは重要なアセットであり、バージョン設定のあるリリースサイクルによって管理する必要があります。誰かが各図を承認し、マッピング標準に従っていることを確認する必要があります。変更は慎重に管理します。次のような質問を自問してみてください。
- 改善と変更のメカニズムはどうなっているか?
- コンテンツを所有しているのは誰か?
- ビジネスでの変更を支援しているのは誰か?
練習のマップを作成し、会社のブランド標準を確認し、ガバナンス要件を特定することが成功につながります。しっかりとプロセスマッピングの準備をすることで、パフォーマンスが低くなるのを防ぐことができます。
適切な質問をする
プロセスマップを作成するときには次の 3 つの重要な質問について考慮します。各質問によって、立ち止まってプロセスについてさらに詳しく考えることができます。
1.マップの利用者は誰で、範囲はどこか?
この質問は、いくつかの同じように重要なフォローアップ質問につながります。
- 目的は何か?
- マップは方針を設定するためのものか、それとも顧客やスタッフの認識を統一するための実務的なドキュメントとして使用するのに十分な詳細が必要か?
- 利用者は誰か?
- 社内で使用するものか、それとも顧客と共有するものか?
- どの程度の詳細が必要か?
- 利用者の経歴、トレーニング、経験はどのようなものか? プロセスはどこで開始してどこで終了するか?
2.各ステップに動詞が含まれ、明確な入力と出力があるようにするにはどうすればよいか?
説明は明確ですか? プロセスがいつ完了するかを明示することで図をできるだけ正確なものにします。また、フレーズに動詞を含めます (プロのヒント: 「管理する」という動詞は避けます)。
3.このステップに関与するリソース (人、システム、その他) は何か?
活動の責任が誰にあるかを考えるときには、RACI について考慮します。その人は実行責任者、説明責任者、協業先、報告先のどれでしょうか? (チームで RASCI モデルを使用している場合は誰が活動をサポートしているかも示すことができます。)