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最初から持続可能性を組み込む

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 業界が直面している重要な持続可能性の問題について検討する。
  • 関係者にインタビューする際に、プロジェクトの重要な基準として持続可能性を含める。
  • 持続可能性に関する質問を設計調査に組み込む。
  • 持続可能性を考慮して、ジャーニーマップの範囲を拡大する。

始める前に

このモジュールの各単元を完了する前に、必ず「持続可能な設計」を完了してください。ここでの作業は、そのモジュールで学習した概念に基づいて行います。

持続可能性を中心に据える

持続可能な設計を明確に中心的な目的としてプロジェクトに取り組んでいる設計者は、常にほんの一握りしかいません。多くの設計者は、素材製品や環境と社会への影響とは一見かけ離れているように見えるデジタルエクスペリエンスやサービスを設計しています。そのため、持続可能な設計はまだ到来していない未来のための備えであるかのように思えるかもしれません。 

ですが、今すぐ実行できることが 2 つあります。 

  • 1 つ目は、業界とその影響について学んでください。驚くような情報が得られるかもしれません。
  • 2 つ目は、現在のプロジェクトの設計パラメーターに持続可能性を含めてください。

持続可能性を計画的な設計パラメーターとして追加したり、議論のトピックとして取り上げたりすることは、常にこれに該当します。このモジュールの演習は、これを実現するための実践方法です。まずは、調査の方法から始めましょう。 

業界について知る

クラウドコンピューティングに変化をもたらす持続可能性の問題は、農業、運輸、電子機器などの問題とは異なります。ある業界がもたらす影響とその影響によってもたらされるリスクはさまざまです。持続可能な設計の言語では、これは「マテリアリティ (重要課題)」と呼ばれています。持続可能なソリューションを設計する場合には、どのような問題がビジネスにとって最も重大な影響があり、最も計画上重要であるかを理解することが不可欠です。そのためには、業界における持続可能性に関する重要な問題を理解することが重要です。 

サステナビリティ会計基準審議会 (SASB) は、財務的に重大な影響のある環境、社会、ガバナンスのトピック全般について、業界固有の開示基準を改善することを目的とした国際 NGO です。SASB は、企業の財務業績に直接影響を与える可能性の高い持続可能性の課題を業界別に特定しています。調査を行う際には、SASB の完全にインタラクティブな「Materiality Map™ (マテリアリティマップ™)」を参照してください。以下に主要な点をまとめました。 

影響する領域

自動車

農業

衣料品、アクセサリ、靴

電気公益事業、発電

環境


温室効果ガス (GHG) 排出


エネルギー管理


水と廃水の管理



GHG 排出


大気環境


水と廃水の管理


廃棄物と危険物の管理

社会および人

製品の品質と安全性 


労働慣行

製品の品質と安全性 


従業員の健康と安全性

製品の品質と安全性

アクセスおよび妥当な価格


従業員の健康と安全性

ビジネスモデル

製品設計とライフサイクルの管理


原材料の調達と効率化

サプライチェーン管理


原材料の調達と効率化

サプライチェーン管理


原材料の調達と効率化

ビジネスモデルの回復力

リーダーシップとガバナンス




重大インシデントリスク管理


システミックリスク管理

マテリアリティマップは、特定の業界内における持続可能性を検討するための出発点であり、持続可能性に関する基本的な知識のベースラインを作成することができます。ですが、このトピックに関する経験が浅いチームにとっては、到底理解できないほど複雑に見える場合もあります。このマップでは、「企業の財務状況や業績に影響を与える可能性が高いと合理的に判断され、その結果、投資家にとって最も重要である財務的に重大な問題」のみに焦点を当てているため、経営陣が最も関心を持つ可能性の高い持続可能性のトピックに暗黙的に優先順位を付けることができます。 

プロジェクトを開始する際に、業界に対して重大な影響のある具体的な持続可能性の問題を事前に準備しておくと、単に「どうすればさらに持続可能性を改善できるか?」と言うだけでなく、持続可能性の設計パラメーターを計画上の懸念事項に合わせて調整できるようになります。

メモ

このような重大な問題は、前述の業界が環境や社会的な関係者に与える可能性のある影響をすべて網羅したものではなく、財務的に最も重大な問題だけを取り上げています。

持続可能性について関係者に質問する

関係者のインタビューは今後の作業の土台となります。持続可能性を業務に組み込む簡単な方法の 1 つは、関係者インタビューで持続可能性について質問して、最初から持続可能性を組み込むことです。関係者インタビューでは、プロジェクトの目的と設計する範囲を定義します。 

大手企業は、気候変動のリスクを追跡し、社会への影響を考え、どのようにすればより意味のある方法で周辺のコミュニティとつながることができるかを検討しています。ただし、そのようなリスク評価が本業に有意義に結びついているケースは稀です。関係者インタビューを実施すると、プロジェクト開始直後にそのようなつながりを築くことができます。

設計者が経営者に企業の持続可能性の目的についてインタビューしている関係者インタビューの画像計画的な設計条件に持続可能性を含めます。関係者インタビューは、プロジェクトの成功条件に持続可能性を追加する絶好の機会です。

 

 

  1. まず、持続可能性、ダイバーシティとインクルージョン、倫理、リスクなどのビジネス機能を重視しているリーダーを関係者インタビューのリストに加えます。クライアントから理由を聞かれたら、価値を提示します。たとえば、次のように提案します。「現在も将来も、イノベーションには、関係者をより広範に定義することが必要です。持続可能性を取り入れている企業では、リスク曝露が減少し、ビジネスやブランドの価値を高める機会が増加しています。」
  2. 前述のリーダーに尋ねる質問
    • 会社がこれまで持続可能性と企業の社会的責任とどのように関わってきたかを一連のフェーズや時代として説明できるとしたら、それはどのようなフェーズや時代ですか? 現在はどのフェーズにありますか? 次に来るフェーズは何ですか? 
    • 気候変動と地球規模の水危機に対して、会社のサプライチェーンやブランドの評価はどの程度の影響を受けていますか? そのようなリスクにどのように対処していますか? 
    • 会社の計画を持続可能性に関連する活動と対応させるために、どのような機会に取り組んでいますか? このプロジェクトをその目標に応じたものにするにはどうすればよいですか? 
    • 顧客や株主以外に、どのような主要な関係者を考慮してこの作業を行う必要がありますか?

ジャーニーマップ: 範囲を広げる

一般的なカスタマージャーニーマップは、購入前から始まり、購入して使用するところで終わります。持続可能性を組み込む方法の 1 つとして、ほんの少しであってもジャーニーの範囲を拡張や拡大することが挙げられます。まずは、より幅広い質問をすることから始めます。

例として、一般的なカスタマーロイヤルティジャーニーを見てみましょう。通常、顧客の認知から始まり、検討、購入、サービス、長期的なロイヤルティという典型的なフェーズを経ていきます。このジャーニーに沿って、顧客タッチポイントとマーケティングチャネルをどのように活用するかを考えます。 

そのジャーニーにフェーズとタッチポイントを拡張して追加し、調達時と製造時だけでなく、通常の商品寿命後にも関与する機会を追加したらどうなるでしょうか?

ブランド認知から検討に至るまでの典型的なカスタマーリレーションジャーニーマップジャーニーマップの拡張: 調達時と製造時、さらに通常の商品寿命後にも関与する機会を追加する

 

他の場合と同様に、このプロセスは適切な質問をすることから始まります。

購入前: 顧客へのジャーニー 

  • 調達: サプライチェーンを管理するビジネスユーザーのためにダッシュボードを設計しているとします。次の質問をします。調達ソフトウェアを使用してサプライチェーンを管理しているビジネスユーザーに対して、調達に関する意思決定がサプライチェーン内にある人々、場所、生態系に与える影響を明らかにすることはできますか? または次の質問をします。ダッシュボードでは財務的コストを明確に把握できます。環境コストや社会的コストも表示することはできますか? さらに次の質問をします。このようなサプライチェーンによって影響を受けるのは誰ですか? 農家ですか? 輸送業者ですか? 製造労働者ですか? このような人々との関係を改善するために、どのようなことを実行できますか?
  • 提供元との接続: また、顧客に対して、コミュニケーションチャネルを使用して顧客と商品の提供元をつなぎ、商品だけでなく、サプライチェーン内のパートナーや場所に対するエンゲージメント、期待感、関心を高めるにはどうすればよいですか?
  • 包装: 包装を最小限にするにはどうすればよいですか?
  • 配送: 荷物を配送先に届けるための最も効率的な方法は何ですか? 責任を持って物流を管理するためには、どのパートナーと連携したらよいですか?

購入: 購入ジャーニー

  • オプトアウト: デフォルト選択として指定できる持続可能性の選択肢はありますか? 顧客は、オプトインするよう求められるのではなく、その選択肢をオプトアウトすることができますか?
  • 透明性: 意思決定プロセスにおいて、商品による環境への影響と利点を明確に理解するには、どうすればよいですか? または、環境への配慮において、栄養表示ラベルに相当するはもの何ですか?

使用後: 顧客ののジャーニー

  • 延長と再利用: 商品の寿命を何らかの方法で延長することができますか? また、再利用できますか?
  • 廃棄: 商品はどのように廃棄されますか? できる限り簡単かつ効果的にリサイクルできるようにするには、どのように設計すればよいですか? または、まったく廃棄されずに、返却されて再生されたり、転用されたりするとしたらどうなりますか?
  • ループの終了: ジャーニーマップのループを閉じて、商品を新しい商品製造の入力としてアップサイクルできますか?

この単元では、設計作業の調査フェーズで実行できるステップを中心に説明しました。次の単元では、思い込みを疑い、影響を考慮して設計する方法について学習します。

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