選択肢のアーキテクチャを設計する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

• 選択肢のアーキテクチャを定義する。
• 選択肢のアーキテクチャが強力な行動のてこである理由を説明する。
• 選択肢のアーキテクチャを行動変容に適用する。

どのシャツを着るか? 最初に何をするか? どの椅子に座るか? 私たちの脳は、1 日に何万回もの意思決定を行う必要があります。脳は 1 日に行う必要があるすべての選択に費やされる精神的労力を最小限に抑えるために、近道と反復行動に大きく依存するようになっています。私たちはこのような近道を比較的意識していないにもかかわらず、日々の意思決定とアクションの大部分にその影響を受けています。

こういった精神的な近道を理解すれば、望ましい行動の可能性を高めることができます。たとえば、現状から抜け出して他のオプションやリスクを徹底的に検討することに労力を費やすよりも、デフォルトの選択肢を選んでしまいがちなことを理解しましょう。

意思決定の条件を変えることは行動変容の強力なてこです。選択肢のアーキテクチャとは、そのような選択が行われる状況を変えるということです。

持続可能な選択をデフォルトの選択にする

再生可能な資源を利用したエネルギーを購入することは、気候変動に最も大きな影響を与える 7 つの行動のうちの 1 つです。ですが、コストも高くなります。研究者たちは、ドイツで、選択肢のアーキテクチャを変更すると、人々のエネルギー購入の意思決定にどのような影響があるかを調べるテストを実施しました。研究者たちは、ある新しい顧客セットに対して、より環境に優しく、より高価な種類の再生可能なエネルギー源をデフォルトの選択にしました。サインアッププロセスで、このセットの顧客は、安価なオプションを選択するために、論理的にも道徳的にも、デフォルトをオプトアウトするという作業を行う必要があります。 

その結果、この環境に優しいデフォルトを提示された新しい顧客は、環境に優しいオプションにオプトインしてから選択する必要がある顧客に比べて、約 10 倍の割合でよりコストの高い再生可能な資源を選択しました。 

選択肢のアーキテクチャを設計する

これは、選択肢の構成方法と提示方法を設計するという考え方です。従来どおり倫理的に選択できるようにすると同時に、望ましい行動を選択する際の認知的安らぎを向上させるということです。 

これには次の 4 つの手法があります。

選択肢のアーキテクチャの設計手法	ベストプラクティス
注意を払う。	望ましい行動をデフォルトのオプションにします。または、望ましい行動を最も関連性の高い行動にすることで望ましい行動に注意を向けさせます。たとえば、カーボンオフセットを環境に配慮する消費者だけに売り込むのではなく、すべての顧客の UX のドロップダウンでカーボンオフセットをデフォルトの選択肢とします (選択を解除することも可能)。
メッセージと意思決定をシンプルにする。	複雑な意思決定を合理化し、重要な情報やアクションに焦点を当てます。使用する手順とオプションを可能な限り少なくして、行動のための近道を提供します。たとえば、ユーザーの場所を判断し、オフセットを選択する際に最もローカルなソースを事前に計算します。
タイミングとプロンプトをタイムリーに使用する	移行と習慣形成の瞬間をターゲットに設定します。また、望ましい行動に関するプロンプトやリマインダーも表示します。たとえば、オンラインで電気料金の支払が行われるときに、エネルギー使用量をオフセットするよう促すプロンプトを含めます。
計画と目標設定を奨励する。	望ましい行動を達成するための計画作成をサポートします。将来の意思決定の必要性を確定または制限するために、コミットメントの使用を検討してください。そうすることで、たとえば、オフセットに関する相談をカレンダーに追加できます。

次の単元では、これまで説明してきた行動変容の手法を設計プロセス内にどのように適合させるのかを学習します。