実装入門
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 一般的な注文管理プロセスの手順を挙げる。
- Salesforce Order Management のメリットを説明する。
- 組織で Order Management を使用可能にするために実行する必要がある手順を挙げる。
- Order Management で個人取引先がどのように機能するか説明する。
- Salesforce B2C Commerce インテグレーションでクライアント ID がどのように機能するか説明する。
- B2C Commerce と Order Management のインテグレーションを可能にする設定について説明する。
注文管理とは?
高級なスニーカーやスポーツウェアのメーカーである Cloud Kicks は、e コマースのストアフロントアプリケーションに B2C Commerce を使用しています。高速性と信頼性に優れ、高度に統合された注文管理システムを必要としていたことから、Salesforce 上に構築された Salesforce Order Management を導入することにしました。
Cloud Kicks のシステム管理者である Linda Rosenberg が、Salesforce 組織に Order Management を実装し、現在稼働中の B2C Commerce 実装と統合する業務を担当します。B2C Commerce は Account Manager や Business Manager などのツールを使用して管理しています。作業を始める前に、注文管理システムの概要、特に Salesforce Order Management 製品の特長を確認しておくことにします。
注文処理は一般に、お客様がストアフロントアプリケーションで何かを注文したときに開始されます。システムで基本データが作成され、在庫をチェックしたうえで支払が処理されます。
その後、注文管理システムがフルフィルメントプロセスを引き継ぎ、お客様に注文品が届けられます。また、商品の返品、苦情への対処、再発送などのサービス業務や、顧客履歴の管理などもこのシステムで実行されます。注文管理システムの典型的な手順は次のとおりです。
-
割り当て: システムによって、注文を履行する場所が決定されます。
-
履行: 担当者またはシステムによって、配送の詳細の確認、請求書の生成、注文商品のピッキング、梱包、配送が行われます。
-
サービス: 必要に応じて、担当者またはシステムによって、注文品目のキャンセル、値引き、返品、再配送、交換が行われます。
Salesforce Order Management
Salesforce Order Management には、注文の割り当て、履行、サービス機能を備えた強力なワークフローが用意されています。注文、注文に対するアクション、注文履歴の単一ビューもあります。Order Management にはフロー、プロセス、Apex クラスをまとめたサンプル履行パッケージが付属し、Linda はこのパッケージを利用してシステムを実装できます。Order Management は以下の Salesforce 製品で機能します。
- B2B Commerce
- B2B2C Commerce
- Salesforce B2C Commerce
- Service Cloud
- Store Fulfillment モバイルアプリケーション
- Omnichannel Inventory
- Salesforce Payments
注文データ
Order Management はオブジェクトを使用して、注文処理ワークフローを進行する各注文の全体像を表します。概要オブジェクトにデータの変更が記録されます。たとえば、お客様が注文から商品を削除しても、元の注文レコードは変更されません。その代わり、変更を保存する変更注文レコードが作成されます。注文概要レコードに、元の注文と、その注文に適用される変更注文のリレーションが維持されます。
Order Management で使用される主なオブジェクトは次のとおりです。
オブジェクト |
説明 |
---|---|
Item と Product |
注文可能な商品を表します。これらは同義語です。API やフローアクションなどの技術的な分野では品目を使用し、ユーザーインターフェースでは商品を使用します。 |
OrderItemSummary |
注文概要の品目の数量を表します。 |
Order |
元の注文または変更注文を表します。 |
OrderAdjustmentGroupSummary |
注文の 1 つ以上の品目に適用される、関連する調整のコレクションを定義します。 |
OrderItemAdjustmentSummary |
注文品目に適用される 1 つ以上の調整です。 |
OrderPaymentSummary |
同じ支払方法を使用し、注文概要に関連付けられている支払、支払承認、返金の一連のレコードをとりまとめます。 |
OrderSummary |
現在の注文データの動的ビューを示します。 |
はじめよう
Cloud Kicks ではまず、管理職が Order Management ライセンスを購入して有効にします。Developer Edition 組織ではこのライセンスが自動的に使用可能になっています。
Linda は次の一般的な手順を実行して、B2C Commerce に Order Management を実装します。
ステップ |
タスク |
---|---|
1 |
注文管理のために組織を準備する。 |
2 |
配送方法を構成する。 |
3 |
B2C Commerce を Order Management に接続する。 |
4 |
高スケールの Order Management を構成する。 |
5 |
アクセスと権限を設定する。 |
6 |
Order Management のフローを構成する。 |
7 |
税金表示を設定する。 |
8 |
履行を設定する。 |
9 |
支払処理を設定する。 |
10 |
過去の注文データをインポートする。 |
11 |
Order Management を B2C Commerce に統合する。 |
組織を準備する
Linda はまず組織の準備を整えます。
ステップ |
タスク |
---|---|
1 |
組織で Lightning Experience が有効になっていることを確認する。 |
2 |
個人取引先を有効にする。 |
3 |
個人取引先へのアクセス権を付与する。 |
4 |
マルチ通貨を有効にする。 |
5 |
API クライアントを作成する。 |
6 |
管理者設定を有効にする。 |
7 |
組織の共有設定を定義する。 |
Lightning を有効にする
Linda は Lightning インターフェースを使用して Order Management にアクセスする必要があります。Salesforce Classic およびモバイルではサポートされていません。
個人取引先を有効にする
Linda は個人取引先または標準の法人取引先の取引先責任者を使用して、買い物客を表すことができます。ただし、個人取引先を有効にした後で無効にすることはできません。この不可逆的なプロセスによって組織のデータベース構造が変更されるためです。
個人取引先を有効にする前に、サポートケースを作成し、サポートがケースを完了するまでに 5 営業日かかることを許可する必要があります。
このモジュールでは、受講者が B2C Commerce と Salesforce のシステム管理者で、Order Management を実装する適切な許可を有していることを前提としています。ただし、B2C Commerce と Salesforce のシステム管理者でなくても大丈夫です。このまま読み進み、システム管理者が Production (本番) 組織で個人取引先をどのように設定し、その後 B2C Commerce の Staging (ステージング) インスタンスでどのように手順を実行するのか学習してください。Trailhead Playground で以下の手順を実行しないでください。Trailhead Playground では Order Management と B2C Commerce を使用できません。
次の手順に従って個人取引先を有効にします。
- Salesforce 組織を開きます。
- [Setup (設定)] の [Quick Find (クイック検索)] ボックスに
Profiles
(プロファイル) と入力し、[Profiles (プロファイル)] を選択します。
-
[システム管理者] を選択します。
- [レコードタイプの設定] セクションまでスクロールし、[取引先] を見つけて [編集] リンクをクリックします。
- [選択済みのレコードタイプ] セクションで、[--マスター--] を [使用可能なレコードタイプ] ボックスに移動します。
-
[法人取引先] と [個人取引先] を [選択済みのレコードタイプ] ボックスに移動します。
- [デフォルトのレコードタイプ] と [法人取引先デフォルトのレコードタイプ] を [法人取引先] に設定します。
[個人取引先デフォルトのレコードタイプ] を [個人取引先] に設定します。
- [個人取引先デフォルトのレコードタイプ] を [個人取引先] に設定します。
-
[保存] をクリックします。
個人取引先へのアクセス権を付与する
Linda は個人取引先を使用して購入者や買い物客を表したいと考えているため、個人取引先へのアクセス権を適切な権限セットに付与する必要があります。
この手順は次のとおりです。
- [Setup (設定)] から、[Quick Find (クイック検索)] ボックスに
Permission Sets
(権限セット) と入力し、[Permission Sets (権限セット)] を選択します。
- Order Management ユーザーのアクセスを管理する「OM Console (OM コンソール)」という権限セットを選択します。
- [アプリケーション] セクションで、[オブジェクト設定] をクリックします。
-
[取引先] を選択します。
-
[編集] をクリックします。
- [取引先: レコードタイプの割り当て] セクションで、[法人取引先] と [個人取引先] を選択します。
-
[保存] をクリックします。
マルチ通貨を有効にする
Linda のサイトではマルチ通貨をサポートしているため、Order Management でもマルチ通貨を使用したいと考えています。次の手順に従ってこの機能を有効にします。
- [Setup (設定)] から、[Quick Find (クイック検索)] ボックスに
Company Information
(組織情報) と入力し、[Company Information (組織情報)] を選択します。
-
[編集] をクリックします。
- 選択されている通貨のロケールが、使用するデフォルト通貨であることを確認します。
-
[マルチ通貨の有効化] を有効にします。
- 変更を保存します。
API クライアントを作成する
B2C Commerce 実装と統合するためには API クライアント ID が必要なため、Linda はこの ID を作成します。ここで重要な点は、このインテグレーション専用のクライアント ID を作成し、他の機能と共有しないことです。各クライアント ID にどのアクションが関連付けられているかを把握していれば、問題のトラブルシューティングや評価指標の収集を簡単に実行できます。
Linda は Account Manager という B2C Commerce のツールを使用して API クライアントを作成します。Account Manager (または Business Manager) にアクセスするには、B2C Commerce 実装が必要です。
Linda は次の手順に従って、クライアント API を作成します。
- Web ブラウザーで、https://account.demandware.com/ に移動します。(Account Manager のアカウントが必要です。)
- ユーザー名 (通常は各自のメールアドレス) を入力します。
-
[ログイン] をクリックします。
-
[API クライアント] をクリックします。
-
[API クライアントを追加] をクリックします。
- [表示名] フィールドにわかりやすい名前を入力します。
-
[追加] をクリックします。
システム管理者設定を有効にする
Linda は組織に戻り、Order Management に必要な管理者設定を構成します。
- [Setup (設定)] から、[Quick Find (クイック検索)] ボックスに
Order Settings
(注文の設定) と入力し、[Order Settings (注文の設定)] を選択します。
- 次の機能のチェックボックスをオンにします。
-
注文を有効化
-
負の数量を有効化
-
数量 0 を有効化
-
拡張コマース注文を有効化。
-
注文の省略可能な価格表を有効化。
- 設定を保存します。
- 組織からログアウトして再度ログインするか、ページを更新します。
- [Setup (設定)] から、[Quick Find (クイック検索)] ボックスに
Order Management
(注文管理) と入力し、[Order Management (注文管理)] を選択します。
-
[Order Management] 切り替えを有効にします。
Order Management が有効になるまで数分かかることがあります。アプリケーションランチャーに注文管理アプリケーションが表示されない場合は、数分待ってからページを更新してください。
-
[B2C Commerce 接続] の切り替えボタンをオンにします。
- 個人取引先を使用して個人の買い物客を表す場合は、[買い物客用個人取引先] の切り替えボタンをオンにします。
キャッシュの方法によってはこの設定のアクティブ化/非アクティブ化に最大 1 時間かかることがあります。
組織の共有設定を定義する
B2C インテグレーションのサービスユーザーは、Salesforce の内部ユーザーでもあります。そのため Linda は、インテグレーションでアクセスする必要があるすべてのオブジェクトに対する内部組織の共有設定を [公開/参照・更新可能] に設定します。
次のステップ
この単元では、注文管理について学び、Salesforce Order Management の基本を詳しく確認しました。また、Order Management を実装する組織の準備にも着手しました。次は、B2C Commerce の Order Management を構成します。
リソース
- Salesforce: B2C Commerce の Salesforce Order Management 実装ガイド
- Salesforce ヘルプ: 概要オブジェクトと変更オブジェクト
- Salesforce ヘルプ: 個人取引先を使用した B2B ストアのバイヤーの作成
- Salesforce ヘルプ: 通貨の有効化
- Salesforce ヘルプ: マルチ通貨の管理
- Salesforce ヘルプ: 削減注文
- Salesforce ヘルプ: レコードタイプを使用したユーザーごとのビジネスプロセスの調整
- Salesforce ヘルプ: 価格表のない注文の有効化
- Salesforce ヘルプ: 組織の共有設定
- Salesforce Developers: 注文データのインポート