D2C Commerce について学ぶ
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 従来の B2B を導入しているお客様が、Salesforce コアでデジタル化を進めた場合に得られるメリットを挙げる。
- D2C Commerce の素晴らしいエクスペリエンスの構築に役立つ要素を挙げる。
- D2C Commerce の機能について説明する。
- コマースアプリケーションが Lightning Web スタック上に構築されていることのメリットについて説明する。
- Lightning Web コンポーネントが Experience Cloud やコマースアプリケーションとどのように連携するのか説明する。
B2B に D2C をプラス
Ursa Major Solar は、米国南西部を中心に太陽光発電関連の商品やシステムを提供している企業です。従業員 200 人程度の中小企業ながら、急速な成長を見せています。純度の高いクリーンエネルギーを生成する太陽光発電システムの開発に取り組む Ursa Major では、そのオンライン B2B ビジネスに Salesforce B2B Commerce を使用しています。
Ursa Major のお客様、サードパーティのサプライヤー、設置業者の多くも同様に、環境問題に高い関心を示しています。Ursa Major Solar の CEO である Sita Nagappan-Alvarez はこれまでにも度々、直接販売市場向けの商品を開発しないのかと尋ねられたことがありました。中でも Ray Solar Solutions の Ray は、開発された暁には真っ先に購入するし、ソーラー商品の消費者テストにも協力するとまで言ってくれています。
Ursa Major の B2B ビジネスは堅調ながら、Sita はその一方でお客様と直接つながることも望んでいます。自社の商品をどのような人が使用しているのかという情報 (ファーストパーティデータ) を収集するだけでなく、どのような理由でどのように使用しているのかも知りたいと考えています。こうした情報は、今後の商品構成やサプライチェーン計画などを検討する際に役立ちます。Sita は直接販売という新しい収益源の開拓に期待を寄せています。
あるインテグレーションパートナーから Salesforce D2C Commerce のことを聞いた Sita は、B2B を補完する Direct to Consumer (D2C) はまさに求めているものであると思いました。
COO 兼共同創立者である Roberto Alvarez は概して IT 関連の支出にかなり慎重ですが、この B2B2C Commerce については Salesforce プラットフォーム上にネイティブに構築され、注文の一元的なシステムオブレコードになることを知ってかなり前向きになっています。
Sita はこの製品について詳しく調査するようチームに指示しました。
Salesforce D2C Commerce とは?
チームの調査により、D2C Commerce は Customer 360 Platform 上にネイティブに構築され、次のような多大なメリットがあることがわかりました。
- 短期間で販売開始: B2B ストアフロント用に設定したマスターカタログやビジネスデータを D2C ストアに転用すれば、時間を大幅に節約できます。
- インテリジェントなエクスペリエンス: ドラッグアンドドロップ方式の Commerce Einstein のおすすめや Einstein Search を使用して、パーソナライズされたショッピング体験を実現できます。
- 信頼性の高いプラットフォーム: Salesforce コア上にある 1 つのグローバルプラットフォームを成長に合わせて拡張できます。
- パートナーエコシステム: 多種多様の AppExchange インテグレーションパートナーやシステムインテグレーションパートナーが集うエコシステムを活用してビジネスを躍進させます。
では、Ursa Solar Major の実装チームにはどのようなメリットがあるのでしょうか? チームは、画期的な D2C ショッピングエクスペリエンスの構築に役立つあらゆる要素を活用できます。
- コマース管理アプリケーション: B2B ストアと D2C ストアの作成、設定、メンテナンスを 1 つのアプリケーションで実施します。
- コマースコンポーネント: B2C や D2C のエクスペリエンスを調整するデータアクセス/ビジネスロジックが基本コンポーネントにカプセル化されています。
- コアコマースサービス: エンドツーエンドのコマーストランザクションを管理するためのサービス (検索、おすすめ、インベントリなど) を共有できます。
- データモデルの共有: 正規のエンティティ (商品、価格表、プロモーションなど) を D2C Commerce のすべてのアプリケーションのほか、他のコア製品でも利用できます。
B2B2C Commerce の機能
実装チームは詳細を知りたくてうずうずしています。そこで、各人がプロジェクトの担当分野に関する内容を調べて報告することにしました。
マーチャンダイザーの Taylor Givens はインターフェースの使いやすさを求め、ストアフロントの管理機能に強い関心を抱いています。
機能種別 |
D2C |
エクスペリエンス管理 |
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商品の検索 |
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カタログとマーチャンダイジング |
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システム管理者の Maria Jimenez は、担当する他の運用システムと同様に、ストアをスムーズに立ち上げて稼働させたいと思っています。製品の設定と管理に関して Maria が期待することは次のとおりです。
- コマースアプリケーション (B2B と D2C) の統合
- .csv ファイルを使用したカタログのインポート
- 基本的な注文管理
- 基本的なレポート
機能種別 |
D2C |
ストアフロントページ |
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カートとチェックアウト |
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ストア管理 |
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開発者の Wei Leung はコーディングに興味津々です。カスタマイズの実施時に次の機能を活用できるためです。
- AppExchange パッケージの検索
- 支払、税計算、配送用の AppExchange パッケージ
- D2C の拡張性とパフォーマンスに対応する、付属のコンテンツ配信ネットワーク (CDN)
- サードパーティインテグレーションを使用した PCI 準拠の支払処理
- 参照データとドキュメント
実装に携わるペルソナ
さっそく実装に取り掛かりたいところですが、その前にこの製品の標準的な実装に携わる各ペルソナの担当業務を確認しておきましょう。
ペルソナ |
担当者 |
説明 |
システム管理者 |
Maria、Wei |
D2C Commerce に関連する組織の設定タスクを実施する。 |
コマース管理者 |
Maria、Wei |
ストアの作成やメンバーのストアへの割り当てなど、D2C Commerce に関連する管理タスクを実施する。 |
マーチャンダイザー |
Taylor |
ストアフロントをデザインして管理する。マーチャンダイザーは商品のインポートや検索の設定などを行います。 |
開発者 |
Wei |
ストアフロントのカスタマイズや高度な機能の実装を行う。たとえば、API を使用してサードパーティアプリケーションを統合したり、コードを使用してカスタムコンポーネントを開発したりします。 |
買い物客 |
ストアフロントに登録済みの外部ユーザーで、商品を閲覧して購入できる。 |
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ゲスト買い物客 |
未登録の外部ユーザーも、ストアフロントで商品を閲覧して購入できる。 |
Salesforce エコシステム内で構築する
D2Cが Lightning Web スタック上に構築されていることを知り、Wei はとても喜びました。Wei のような開発者にとっては、最新の Web 標準を使用した最先端のエクスペリエンス上に構築されているということになるためです。
- Web 標準を使用した生産性の向上: Web の最新言語である ES5+、カスタム要素、クラス、モジュール、インポートを使用します。
- オープン、透明性、移植性: 1 つのプラットフォーム上で使い慣れたツールを使用して、モジュール式のビルディングブロックを組み合わせてエクスペリエンスを構築するコードを記述します。
- 組織の規模に合わせて構築: Salesforce が Lightning、コミュニティ、モバイルの拡張に長年使用してきたアーキテクチャを使用します。
B2B2C Commerce に付属する機能D2C Commerce では Lightning Web コンポーネント (LWC)、Experience Cloud、コンテンツ管理システム (CMS) を使用します。詳しく見てみましょう。
Lightning Web スタック
D2C Commerce は Lightning Web スタック上で動作し、Web ランタイム、データサービス、Web コンポーネントや基本コンポーネントがスタックで処理されます。Wei にとっては好都合です。すべて同じ拡張可能な宣言型データモデルにアクセスし、同じ AppExchange からパートナーアプリケーションを入手できるためです。
Lightning Web Runtime (LWR) は、高速性とカスタマイズ可能性を念頭に設計された LWC 専用のアプリケーションフレームワークです。
標準に基づくこのプログラミングモデルでは、開発者リソースを簡単に見つけて活用できます。つまり、JavaScript 開発者であれば誰でも Lightning コンポーネントを構築できるということです。D2C はパフォーマンス重視で設計されているため、スピーディなエクスペリエンスを実現するために、JavaScript 抽象化ではなく、ブラウザーで実行されるコードが多くなっています。
Experience Cloud
D2C Commerce には、Salesforce コアを基盤に構築されたコマースアプリケーションが付属します。Wei はアプリケーションランチャーからこのアプリケーションを選択できます。
まず、Wei がエクスペリエンスビルダーを使用してストアを作成します。ストアが作成されたら、Taylor がエクスペリエンスビルダーを使用して次のタスクを実行します。
- ストアフロントページの土台となるテンプレートを選択する。
- テーマやブランドの設定を変更する。
- ページを作成して設定する。
- コンポーネントを使用してカスタマイズする。
- カスタムコンポーネントを追加して設定する。
一般的なストアは一連のページで構成され、各ページに次の要素が設定されます。
- ブランドやスタイルを設定できるテーマレイアウト
- カスタマイズ可能な一連のコンポーネント
- カスタムコンポーネントを追加する機能
さらなるカスタマイズを実施する
Taylor は Commerce ストアを一歩進めて CSS スタイルを部分的に上書きしたいと考えています。そこで、Wei に協力を依頼します。Wei は、SFDX (Salesforce Developer) 拡張機能を搭載した Visual Studio Code で、新しいコンポーネント、テンプレート、テーマを作成できます。Visual Studio Code は Salesforce 開発者に人気のコードエディターで、Wei もすでに使用しています。このエディターは Windows、Linux、macOS で使用できる無料のオープンソースで、構文の強調表示やコード補完など、簡単にインストールできる拡張機能を備えています。
コンテンツ管理システム (CMS)
Taylor は Salesforce CMS を使用して、コンテンツをドラフトフェーズから、公開してアーカイブするまで管理できます。Salesforce CMS は Lightning Experience のアプリケーションで、Salesforce のあらゆるアプリケーションに対応する統合型の共有サービスです。そのため、D2C Commerce 用に作成したコンテンツを B2B Commerce でも使用でき、その逆も可能です。たとえば、商品の詳細ページに表示する商品画像は CMS に格納されるため、複数のストアフロントで簡単に共有できます。
次のステップ
このモジュールでは D2C Commerce を活用して、B2B のお客様への対応に重点を置きながら、直販市場に参入する方法について詳しく説明します。まずは、製品の機能とアーキテクチャについて学習しました。次は、D2C Commerce のデータモデルが B2B Commerce とどのように異なるのかを見ていきます。