D2C Commerce データモデルについて知る
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- Salesforce B2B Commerce と D2C Commerce のデータモデルの違いを説明する。
- D2C コマースで買い物客の登録がどのように機能するのか説明する。
- D2C Commerce の標準オブジェクトを挙げる。
- D2C データモデルでストアオブジェクトが他のオブジェクトとどのように関連するのか説明する。
D2C Commerce データ
Ursa Major Solar の管理者である Maria Jimenez は、D2C Commerce データモデルの詳細を調べてみることにします。D2C データモデルが B2B データモデルとよく似ていることを知って安心しますが、両者の販売モデルを反映した違いもあります。2 つのモデルは次の点が異なります。
要素 |
相違点 |
買い物客 |
B2B ではバイヤー、D2C では買い物客という。 |
ゲストのチェックアウト |
認証済みの買い物客も未認証の買い物客もチェックアウトを実行できる。セルフ登録は買い物客が自身を登録できるもので、D2C では主要な機能である。B2B コマースでは、ゲストのチェックアウトはかなり稀である。 |
バイヤーグループ |
D2C Commerce では 1 つのバイヤーグループのみを使用し、すべての買い物客が同じ商品にアクセスする。B2B Commerce では複数のバイヤーグループがサポートされる。 |
国際市場 |
D2C は、Salesforce プラットフォームでサポートされるすべての国でご利用いただけます。 |
ストアのデフォルト |
D2C Commerce では、ストアのデフォルトのカタログ、エンタイトルメントポリシー、バイヤーグループを使用する。 |
価格表 |
D2C Commerce ではストアに割り当てられた価格表を使用するのに対し、B2B Commerce ではバイヤーグループに割り当てられた価格表を使用する。 |
登録データ
B2B Commerce では、バイヤーへの販売に終始します。Ursa Major Solar のような企業は各バイヤーと良好な関係を築いています。バイヤーは登録され、その連絡先情報も収集されます。B2B に匿名のバイヤーは存在しません。
他方、D2C の場合はバイヤーではなく買い物客といい、敢えてアカウントを作成しない人も大勢います。Ursa Major Solar の上級マーチャンダイザーである Taylor Givens は次のように述べています。「私たち全員が買い物客です。マーチャントが把握している買い物客もいれば、把握していない買い物客もいます。自ら登録した買い物客は簡単にチェックアウトでき、特別割引の対象になり、商品レビューを投稿できます。未登録のゲストは匿名で処理されます。」
Salesforce には、プライバシーの保護や一般データ保護規則 (GDPR) への遵守を管理するための広範な機能が搭載されています。
D2C データモデル
データモデルとは、データがどのように整理され、各データが他のデータあるいは全体とどのように関連しているかを説明するものです。データはスプレッドシートなどのテーブルとしてとらえることができます。D2C Commerce 組織のデータの一部をスプレッドシート形式で表すと次のようになります。
ストア名 |
説明 |
デフォルトの言語 |
サポートされる言語 |
デフォルトの通貨 |
サポートされる通貨 |
Ursa Major Solar |
D2C ストア |
英語 |
英語 |
ドル |
ドル |
このテーブル全体がオブジェクト (この場合はストアオブジェクト) で、各列が項目です。各行はレコードを表します。この場合は Ursa Major Solar というストアです。ただし、Salesforce アプリケーションにデータがこのように表示されるわけではありません。実際には、レコードページなどが表示され、そのページの項目に情報が示されます。
D2C Commerce には、組織で使用する一連の標準オブジェクトが用意されています。
- ストア
- カタログ
- カテゴリ
- エンタイトルメントポリシー
- 商品
- 価格表
- 価格表エントリ
- バイヤーアカウント*
- バイヤーグループ*
- バイヤーグループメンバー*
* この 3 つのオブジェクトも設定する必要がありますが、主として B2B Commerce で使用します。
後ほど、Ursa Major Solar のデータモデルでこうしたオブジェクトがどのように関連し合うのかを見ていきます。
ストアオブジェクト
ストアは D2C Commerce データモデルの重要なオブジェクトです。全体のハブとなり、ここにさまざまなスポークを追加していきます。このフレームワークにより、Maria はビジネス要件に応じて必要なものを極めて柔軟に追加することができます。ストアにはデフォルトで次のデータが関連付けられており、Maria はここに足りないオブジェクトを関連付けることができます。
- ストアエクスペリエンス
- デフォルトの言語とサポートされる言語
- デフォルトの通貨とサポートされる通貨
ストアを立ち上げると、このストアがカタログ、カテゴリ、価格表、商品といったコマースデータのコンテナになります。B2B Commerce の場合と同様、D2C Commerce ストアもフロントエンドの購入手続きに Experience Cloud サイトを使用します。Experience Cloud 上のストアでは、商品を表示し、買い物客の情報を取り扱い、注文を処理できます。Maria は複数のストアを作成して、異なる事業分野や地域に対応させることができます。
商品オブジェクト
ストアで商品を販売します。この商品もデータモデルの一部です (Salesforce では Product2
オブジェクト)。Maria は外部システムから商品データをインポートしたり、手動で入力したりすることができます。ソーラーパネルなど Ursa Major Solar の商品は Product2
オブジェクトに保存され、商品ごとに SKU (在庫管理単位) 番号が指定されます。商品レコードには、商品説明、仕様、商品メディアへのリンクなどの他のデータも含まれます。
D2C Commerce では、カタログ、エンタイトルメントポリシー、バイヤーグループなど、ストアのデフォルトの概念を使用します。Maria がデータインポーター機能を使用してデータを組織にインポートすると、デフォルトのカタログ、エンタイトルメントポリシー、バイヤーグループが自動的に作成されます。
価格表の接続
B2B Commerce では、各商品がリスト価格を記録する価格表レコードに結び付けられます。他方、D2C Commerce では、価格表が webstorepricebook
オブジェクトのストアに関連付けられます。
カタログをストアに関連付ける
Maria は 1 つ目のストアと数種の商品を設定して嬉々としています。設定した商品をストアに表示するためには、カタログが必要です。カタログにカテゴリやサブカテゴリが関連付けられます。
では、カタログの説明から始めましょう。カタログは商品をストアで販売できるようにする基本的な分類方式で、次のルールが存在します。
- 1 つのカタログに、最大 5 レベルのカテゴリとサブカテゴリを設定できる。
- ストアにカタログを 1 つのみ関連付けることができる。
ストアを設定したら、カタログを関連付けることができます。インポートツールを実行する場合は、インポート先のストアにデフォルトのカタログが自動的に作成されます。組織に複数のストアが設定されている場合、同じカタログを複数のストアに関連付けることができます。
Taylor は、通常のオンラインストアと、特別セール用のデジタルポップアップストアを必要としています。どちらのストアでも同じ商品を扱う予定ですが、ポップアップには人目を引くグラフィックやコンテンツを使用し、価格表も異なります。買い物客が通常のストアにアクセスした場合も、ポップアップストアと同じ商品が表示されます。
この場合は、2 つのストアと、カテゴリを設定した 1 つのカタログが存在します。ところで、ストアごとに異なる商品を表示する必要がある場合はどうすればよいでしょうか? その場合は、Maria が 2 種類のカタログを作成して、それぞれを異なるストアに関連付けます。次のようになります。
この例では、ストアごとにエクスペリエンスや価格設定が異なるだけでなく、それぞれが独自の商品カタログを使用します。D2C Commerce データモデルの長所はその柔軟性で、各自のビジネスニーズに応じて自在に設定することができます。たとえば、複数のストアを設定して、同一のカタログとカテゴリセットを参照するようにすることも可能です。
バイヤーアカウントとバイヤーユーザーを有効にする
ここで Maria は誰にデータへのアクセス権を付与するかを決める必要があります。B2B Commerce の場合は、バイヤーごとに価格設定が異なる可能性があるため、バイヤーに基づいてアカウントが設定されます。他方、D2C Commerce では、すべての買い物客に 1 つのバイヤーグループを使用します。このステップは必須ですが、主として B2B に関連します。
D2C Commerce の場合は、B2B Commerce のようにバイヤーをデータ構造のデータ要素として使用することがほとんどありません。B2B2C の場合、バイヤーとはサイトのすべての買い物客を意味し、サイトに関連付けられているすべての商品と価格を閲覧できます。エンタイトルメントポリシーも同じです。ちなみにエンタイトルメントポリシーとは、バイヤーグループのメンバーシップに基づいて、バイヤー (B2B2C の場合はすべての買い物客) がどの商品を閲覧できるか定義するものです。
スキーマビルダー
Maria はこうしたデータモデルを掘り下げて、そのオブジェクトや、オブジェクト間のリレーションについて詳しく調べることにします。
- ストア
- バイヤーアカウント、バイヤーグループ、エンタイトルメント
- 商品、商品カタログ、価格設定
- 商品メディア
- カート
- 注文と注文概要
ここで役立つのがスキーマビルダーです。
このモジュールでは、受講者が D2C Commerce 管理者で、さまざまなタスクを実行する適切な権限を有するものと想定しています。ただし、D2C Commerce の管理者でなくても問題ありません。このまま読み進み、本番組織でシステム管理者が手順をどのように実行するかを学んでください。Trailhead Playground でも以下の手順を実行できます。
スキーマビルダーでデータモデルを表示する手順は次のとおりです。
- 組織を開きます。
- [設定] の [クイック検索] ボックスに、
Schema Builder
(スキーマビルダー) と入力します。 - [スキーマビルダー] をクリックします。
-
[オブジェクト] をクリックします。
- B2B Commerce の各部のリレーションを確認するには、標準オブジェクトを絞り込みます。
- オブジェクトの API 参照名を表示するには、[ビューオプション] で [要素名を表示] を選択します。
次のステップ
この単元では、D2C Commerce データモデルと B2B Commerce がどのように異なるかを学習しました。次は、D2C Commerce ストアフロントのリリースに必要な一般的な手順について説明します。