B2B/B2B2C Commerce ストアを構築する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 実装に携わるペルソナがどのような形でプロジェクトの価値を高めるか説明する。
- エクスペリエンスビルダーの主なタスクを挙げる。
- チームメンバーがストア実装の各面でどのように協力できるか説明する。
- D2C Commerce エクスペリエンスの構築に役立つ要素を挙げる。
コマースストアを構築する
これまで学んできたとおり、B2B/D2C Commerce ストアの構築はチームで取り組みます。このプロセスに大きく関与するのがソリューションアーキテクトです。ストアの立ち上げ後は、アーキテクチャに重要な変更が必要となった場合にのみ関与します。
ストアの作成はほんの始まりにすぎません。ストアを立ち上げた後、ストアのデータを管理し、サイトの安全性、エンゲージメント、適切性を維持することのほうが大変です。ストア全体を成功させるためには、次のロールが重要な役割を果たします。
ペルソナ |
果たす役割 |
---|---|
管理者 |
サイトや権限を設定します。 |
マーチャンダイザー |
ストアフロントをデザインして管理します。商品を表示して販売する最適な方法を実践して管理します。 |
開発者 |
ストアフロントをカスタマイズし、高度な機能を実装します。コマースのエクスペリエンスやアプリケーションを考案して開発します。 |
アーキテクト |
システムを設計します。機能を選択して、ベストプラクティスを提案します。 |
では、各人のタスクを詳しく見ていきましょう。
アーキテクトのタスク
Lakita Scott は Ursa Major Solar のサードパーティソリューションアーキテクトです。プロジェクトを計画して実行しますが、世界でもトップクラスのカスタマーエクスペリエンスを実現し、真のビジネス価値をもたらすデザインシステムを構築するためには、Ursa Major Solar の従業員からなる実装チームの協力が欠かせません。アーキテクトはまた、特定の重要な分野でリーダーシップを発揮します。
ソリューションアーキテクトである Lakita は次の任務を担当します。
- Ursa Major Solar のような企業がマルチクラウドソリューションを構築するプロジェクトを誘導する。
- 競合他社と差別化を図るカスタマーエクスペリエンスを創出する。
- マルチクラウドの実装上の考慮事項について助言する。
- ユースケースの実践に関する知識に基づいてベストプラクティスを推奨する。
- 企業のビジョンや目標に合致するマルチクラウド製品の機能を選択する。
場合によっては、ソリューションアーキテクトが、ビジネスのシステムの細部に関する知識を持ち合わせていないことがあります。Lakita の場合は Salesforce の各種のクラウド、製品、機能に精通し、このすべてのシステムを統合する方法も心得ています。
どの企業もお客様の完全な 360 度ビューを必要としています。ここで出番となるのが Einstein 1 です。このプラットフォームは信頼できる一元的な情報源となると同時に、最高レベルのカスタマーエクスペリエンスを創出可能なため、Ursa Major Solar は最終消費者 (D2C)、他の企業 (B2B)、あるいはその両方 (D2C) など、どのようなお客様とも価値重視の関係を築くことができます。
ソリューションアーキテクトについての詳細は、こちらのクイックルックを参照してください。
管理タスク
Ursa Major Solar で Salesforce 組織を担当するシステム管理者の Maria Jimenez は、B2B/D2C Commerce への投資を統括しています。
Ursa Major Solar では会社の拡張に伴い、製造に使用する原材料の注文方法を合理化したいと考えています。そのため、B2B/D2C Commerce を活用して新しい発注と材料の納入を把握することを望んでいます。D2C コマースにおいては、環境への関心が高いお客様にエンゲージするショッピングエクスペリエンスを実現したいと考えています。
Maria は Salesforce システム管理者としての業務以外に、次の任務も担当しています。
- B2B/D2C Commerce にアクセスする全ユーザーのプロファイルと権限を設定する。
- 組織、Commerce アプリケーション、ストアのセキュリティ設定と組織の共有設定を厳しく管理し、誰がどの情報を参照する必要があるかを把握する。
- ストアを設定する (新しいページレイアウトの作成を含む)。
- 複数の通貨と言語を有効にして、Ursa Major Solar が海外に事業展開できるようにする。
- バイヤーグループを作成し、ストアに関連付ける (B2B の場合)。
- 商品カタログと価格表を作成してストアに対応付ける。
- バイヤーにどの商品と価格を表示するかを定義するエンタイトルメントを設定する (B2B の場合)。
- ストアをプレビューして有効にし、公開する。
- レポートやダッシュボードを作成して、B2B/D2C Commerce のすべての評価指標を把握できるようにする。
- すべてのプラットフォームを常に最新の状態に更新し、ストアに影響が及ばないようにする。
Maria の悩みの種は何でしょうか? 1 つは、B2B/D2C Commerce の設定に関して大勢の関係者間で調整し、全員の認識を一致させる必要があることです。また、ストアアプリケーションにアクセスするすべてのエンドユーザーが自分が何を行っているのか、なぜそれを行っているのかを把握できるようにしなければなりません。
マーチャンダイザーのタスク
上級マーチャンダイザーの Taylor Givens の任務はストアデータとストアフロント上のその表示方法を管理することで、インターフェースが使いやすいことを高く評価しています。Ursa Major Solar のフロントエンド開発はチームで取り組みますが、ストアをどのように見せるかは Taylor が担当します。Taylor は Wei や Maria と協力して次のタスクを遂行します。
- ランディングページ、テンプレート、ユーザーインターフェースをデザインする。
- ワイヤーフレーム、サイトマップ、スタイルシートを作成する。
- カートとチェックアウトのフローを管理する (バックエンド開発者が作成した後)。
- コピーライターや開発者と協力してデジタルアセットを開発する。
Taylor の日常業務の 1 つは、エクスペリエンスビルダーを使用してストアと関連サイトをすばやく作成し、Ursa Major Solar ブランドに合わせてスタイルを設定することです。
エクスペリエンスビルダーでは、ストアの各ページに表示されるコンポーネントやページ自体をカスタマイズできます。つまり、次の点を検討して、ストアのあらゆる場面におけるバイヤーのエクスペリエンスを向上させることが Taylor の仕事です。
- 検索結果ページでバイヤーに何件の商品を表示するか?
- 商品の詳細ページにどの程度細かな情報を記載するか?
- 特定のページに商品を何列で表示するか?
- 商品列間のスペースを広くするか狭くするか?
Taylor はバイヤーのユーザーエクスペリエンスを設計するときに、こうしたさまざまなことを検討する必要があります。
Taylor がエクスペリエンスビルダーで作業するときは次のようなユーザーインターフェースが表示されます。
Taylor はストアで販売する商品の見せ方を工夫します。Ursa Major Solar の商品に洒落た説明が付けられ、お客様をサイトに引き込む詳細情報が記されているのも Taylor の努力の賜物です。Taylor の主なタスクは次のとおりです。
- 商品情報について関係者と打ち合わせ、随時更新する。
- 商品カテゴリ、商品の組み合わせ、配置の設定と変更を行う。
- Maria と協力して商品検索を最適化する。
- 商品の発売を管理する。
- マーケティングマネージャーと連携してプロモーションを立ち上げる。
- 商品に関する分析を追跡する。
Taylor の主な関心事は世間一般のマーチャンダイザーと同様、次の 3 点に集約されます。
- 商品について正しいメッセージを伝えるために全員の認識を一致させること
- 上層部に評価指標を報告するための適切なデータを入手すること
- 大量のデータに基づいて確固たる判断を下すこと
Taylor が Salesforce にログインすると、次のような Commerce アプリケーションが表示されます。
Taylor はこの画面から、マーチャンダイザーのあらゆるタスクを実行できるほか、助けが必要な場合には Maria に連絡することもできます。
開発者のタスク
開発者の Wei Leung は、常にあれこれ考えています。普段は社内のビジネスプロセスを調べ、Ursa Major Solar の各種のロールのためにカスタムソリューションを作成する業務に追われています。
Ursa Major Solar が B2B/D2C Commerce に投資したとき、Wei はこの新たな投資を役立てるために自分が何をすべきかいろいろ検討しました。開発者である Wei は次のタスクを実行します。
- 外部システムから Salesforce に商品データをアップロードする (特にインテグレーションを設定する必要がある場合)。
- Flow Builder を使用してチェックアウトフローを設定してカスタマイズする。
- 外部システムとのインテグレーションを設定する (商品データ、税計算、注文管理データ、支払認証のインテグレーションなど)。Apex と管理パッケージを使用してインテグレーションを設定できます。
Taylor は CSS スタイルを部分的に上書きして Commerce ストアをさらに向上させたいと考え、Wei に協力を依頼します。Wei は、SFDX (Salesforce Developer) 拡張機能を搭載した Visual Studio Code で、新しいコンポーネント、テンプレート、テーマを作成できます。Visual Studio Code は Salesforce 開発者に人気のコードエディターで、Wei もすでに使用しています。このエディターは Windows、Linux、macOS で使用できる無料のオープンソースで、構文の強調表示やコード補完など、簡単にインストールできる拡張機能を備えています。
まとめ
このモジュールでは、Salesforce プラットフォームで B2B/D2C Commerce がどのように実行されるかを学習しました。また、ペルソナや権限のほか、ストアの安全性、エンゲージメント、適切性を維持するために各ペルソナが特定のタスクをどのように実行するかも習得しました。最後にテストを受けて、輝かしいバッジを獲得してください。
リソース
- Trailhead: Salesforce B2B Commerce および D2C Commerce の基本
- Salesforce ヘルプ: 主要概念
- Trailhead: Salesforce CMS の基本