自律型エージェントと信頼関係を確立する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 自律型エージェントの安全策を講じることが重要である理由を説明する。
- 自律型エージェントの安全性と信頼性を確保する 7 つのガードレールを挙げる。
安全を最優先する
自律型エージェントをワークフローに導入すれば大きなメリットが得られますが、安全に稼働し、お客様の信頼を維持することが極めて大切です。では、一般的な例を見てみましょう。
昨今では、医療サービスや患者支援に対する需要が高まっています。患者が助けを必要とするその時にサポートできれば、患者の治療結果と満足感に顕著な変化がもたらされます。自律型エージェントは有用ながら、患者データを管理するときや、医療上のアドバイスを行うときに安全性と信頼性を確保することが不可欠です。
たとえば、患者の予約の取り付けや処方箋の更新を支援する自律型エージェントは、個人の健康情報 (PHI) を守秘し、HIPAA 規制に準拠する必要があります。エージェントが患者の症状に基づいて医師の診察を受けるよう勧めるときは、最新の医療ガイドラインに照らして病状の重症度と緊急度を正確に評価することが求められます。
また、エージェントは、医師の診察に代わるものではないことを患者に理解させるために、その限界を明確に伝えなければなりません。こうした環境では、エージェントが医療上のニーズの対処において正確かつ安全で、信頼できる支援を行えるようにするために、信頼性と安全性が極めて重要になります。
安全で信頼できる自律型エージェントのガードレール
ビジネスに自律型エージェントを使用する場合は、どの業界かに関係なく、安全策を講じることが重要です。以下に、自律型エージェントを構築して統合する際に検討すべき主なガードレールを列挙します。
明確な境界を定める
自律型エージェントができることとできないことの明確な境界を設けます。たとえば、一定の金額を超えた場合はエージェントが金融取引を実行できないようにしたり、明示的な許可なしに個人の機密情報にアクセスできないようにしたりといった制限を定めることが考えられます。境界を明確にすれば、不正使用が阻まれ、エージェントを安全かつ倫理的な範囲内で機能させることができます。
厳格なセキュリティ対策を実施する
自律型エージェントは大量の顧客データを処理するため、セキュリティが極めて重要です。暗号化、安全なデータストレージ、アクセスコントロール、定期的なセキュリティ監査を実施して顧客情報を保護します。お客様の信頼を維持し、法的な問題を回避するために、GDPR や CCPA などデータ保護規制へのエージェントの準拠を周知徹底します。
監視と監査
自律型エージェントのパフォーマンスを定期的に監視し、エージェントのアクションを監査します。こうした対策によってエラーや不適切な動作を早期に検出し、必要な調整を講じることができます。また、監視により、ユーザーからフィードバックを収集して、エージェントのパフォーマンスを継続的に改善することができます。
人間の監視を組み込む
自律型エージェントはさまざまなタスクを独立して処理しますが、複雑なやり取りや機密性の高い取引については人間の監視を実施することが重要です。人間の担当者がいつ、どのように介入すべきかに関する明確なガイドラインを作成します。こうした事前対策がセーフティネットになり、お客様が可能な限り最高のサービスを受けられるようになります。
透明性を確保する
組織が自律型エージェントをどのように使用しているかをお客様に明らかにします。お客様が自律型エージェントとやり取りしているときはそのことを伝え、必要に応じて人間の担当者と話すことを選択できるようにします。透明性によって信頼が築かれ、お客様が安心して AI とやり取りできるようになり、ボット開示規制に遵守することになります。
綿密にテストする
自律型エージェントをリリースする前に、徹底的にテストし、潜在的な問題を特定して対処します。多様なシナリオや例外的な状況を駆使して、エージェントが予期しない状況に整然と対処できるようにします。テストを行うことでバグを発見し、エージェントが期待どおり動作することを確認できます。
継続的な学習と改善
自律型エージェントは継続的に学習して改善していきます。ただし、この学習プロセスを監視および管理して、エージェントが有害な動作に及ばないようにする必要があります。肯定的と否定的な明確なフィードバックを与える強化学習を実施して、エージェントの進化を誘導します。