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お客様に重点を置く

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • カスタマーサクセスを定義する。
  • カスタマーサクセスの主な機能を説明する。
  • 賢明な SaaS ビジネスがカスタマーサクセスに投資する理由を説明する。

顧客ライフサイクル

これまでに、アプリケーションを構築し、マーケティングを行い、AppExchange で販売しました。達成したことを振り返り、Salesforce プラットフォームでのソリューションを出荷したことで自分をほめてあげましょう。AppExchange パートナーとしてのジャーニーで大きく前進しました。

ただし、アプリケーションをお客様に販売するのは、このジャーニーの最初の部分に過ぎません。顧客ライフサイクルを見てみましょう。この図は、販売元との関係において、お客様が通過するさまざまなフェーズを表しています。

お客様の成功のフェーズを定義する顧客ライフサイクル。フェーズには、認知、育成、欲求、購入、サポート、ロイヤルティ、支持、更新があります。

すでに、サイクルの前半部分である「取引開始」は完了しました。この部分には次のステップが含まれます。

  • 認知 — 製品を AppExchange で公開し、情報を広め、製品が対象者に知られるようにしました。
  • 育成 — 見込み客に多くの情報を共有し、見込み客がアプリケーションによって問題をどのように解決できるかを理解できるようにしました。
  • 欲求 — 無料トライアルを提供し、見込み客がアプリケーションを実際に使用することで、アプリケーションの必要性を実感できるようにしました。
  • 購入 — 見込み客から契約への同意をもらい、見込み客が購入客へと変わりました。

ライフサイクルの残りの部分である「成功」では、お客様との関係を発展させます。この部分には次のステップが含まれます。

  • サポート — お客様がソリューションを効果的に使用するにはどうすればよいでしょうか? オンボーディングやトレーニングを行い、お客様がアプリケーションをビジネスに導入するのを支援します。
  • ロイヤルティ — お客様が投資の価値を最大化して目標を達成するのを支援することによって、あなたが協力者であり、お客様とあなたは大きなチームの一員であることをお客様に理解してもらいます。
  • 支持 — 成功は熱意につながります。お客様を支援することで、お客様は支持者となり、お客様のネットワークで評判が広がります。紹介によって、大きく成長するチャンスとなります。
  • 更新 — お客様がライセンスを更新します。お客様の成功が自分の成功につながります。

これまでに、お客様と共にジャーニーの前半部分を進んできました。ここから、残りの部分にお客様を誘導しましょう。ビジネスのやり方を変革するような体験をしたお客様は、一生のお客様になるでしょう。

それがカスタマーサクセスの要点です。つまり、お客様に価値を提供し、可能な限り生産性を高めることで、お客様が離れることがなくなります。お客様の成功は、すべてのサブスクリプションベースのビジネスが目指すものです。お客様は、あなたが味方だと知れば、いつまでも関係を維持するでしょう。

お客様の成功を準備する方法

始めたばかりの会社でも、長く続いている会社でも、自社が提供するソリューションを最大限に活用する方法については、他の誰よりも良く知っているでしょう。カスタマーサクセスの主な目的には次のものがあります。

  1. プロアクティブな取引先管理 — お客様から尋ねられるのをただ待つのではなく、お客様のニーズを予測します。
  2. 製品採用の促進 — ソリューションの開発に時間と費用を費やしたのですから、ユーザーに使ってもらいましょう。
  3. 継続的なサポートとトレーニング — お客様は製品がメンテナンスされていることを知り、どこに行けば支援が得られるかを知ります。
  4. お客様の満足、成長、更新 — 収益の大半は既存のお客様によるものです。既存のお客様を維持しましょう。

実際のカスタマーサクセス戦略

適切なカスタマーサクセス戦略の利点は説明するまでもありませんが、実際の戦略はどのようなものになるのでしょうか? 詳細は、会社によって大きく異なります。カスタマーサクセス戦略を計画、実施する最高顧客責任者を採用する組織もあれば、もう少し段階的な手法を取る組織もあります。

最終的には、お客様、商品、ビジネスにとって何が最適かを決めるのはあなたです。Salesforce が提供するベストプラクティスや最新の調査も参考にして、ビジネスにとって最適の戦略を作成してください。

カスタマーサクセスへの投資

Salesforce およびそのパートナーは、製品やサービスをサブスクリプションで販売しています。サブスクリプションビジネスでは、長期的にどれだけの収益を得られるかが重要です。新しいビジネスを獲得するだけでは十分ではありません。お客様を維持して、流れが途切れないようにする必要があります。お客様が満足していれば、お客様からの紹介や推薦によって新しいビジネスが得られます。

いずれにしても、戦略は新規の純売上高と顧客維持のバランスが取れたものにする必要があります。どのようにすればこのバランスが取れるでしょうか? 次の 2 つのメトリクスを使用すれば、収益の流れを評価できます。

  • 顧客生涯価値 (Customer Lifetime Value: CLV) — CLV は、ビジネスがある特定の顧客から得る収益です。これによって、その顧客の財務的価値を理解することができます。すべての顧客について CLV を測定すると、支出、顧客獲得、および既存顧客のビジネス拡大の計画に役立ちます。
  • 年間経常収益 (Annual recurring revenue: ARR) — ARR は、何も変更がなかった場合にインストールベースから毎年見込むことができる収益額です。この数字単独で、サブスクリプションベースのビジネスの健全性を表すことができます。さらに、このメトリクスを月間経常収益 (MRR) の観点からも見ることがベストプラクティスです。

サブスクリプションビジネスでは、ARR の成長に重点を置きます。

離脱の回避

サブスクリプションベースのビジネスで最も避けたいのは顧客の離脱、つまり更新しない顧客や、金額を減らして更新する顧客です。離脱は、顧客数または収益の低下によって測定します。

更新率が 90%、85%、80% の場合の数年間の収益を示したグラフ。最初の年の収益はすべて同じですが、更新率が低くなるほど急速に後の年の収益が低下します。

このグラフが示すように、サブスクリプションの失効は、その年の収益に影響を及ぼすとは限りませんが、ARR が急速に低下することになります。一般に、離脱率が高いほど、収支が合うまでに長い時間がかかります。

好むと好まざるとにかかわらず、新規の純売上高だけに重点を置く時代は終わったのです。幸いなことに、あなたは SaaS の業界リーダーと提携しています。

社内のカスタマーサクセス部門の構築

Salesforce のサクセス組織は、1999 年の小さいものから始まって、毎年成長してきました。

Salesforce の 1999 年から現在までのカスタマーサクセス戦略のタイムライン

現在では、さまざまな機能が充実していますが、当初はカスタマーサクセスマネージャーのチームがあるだけでした。Salesforce が世界中で増え続けるお客様のニーズを満たすために進化するのに合わせて、Salesforce のカスタマーサクセス組織も発展してきました。

目標の設定と組織の意思統一

Salesforce は、推測が当たって今の状態になったわけではありません。カスタマーサクセスの目標を設定し、それらの目標を達成するために組織を拡張してきました。会社がどのフェーズにあっても、独自のカスタマーサクセス目標を設定することで利点が得られます。

カスタマーサクセスに関してどのようなビジョンを持っていますか? それをどのように実現しますか?

Salesforce では、V2MOM を作成しています。V2MOM は、Salesforce のビジョンとそれを達成するための戦略を明確に示すドキュメントです。V2MOM は次の頭文字です。

  • Vision (ビジョン): 何を達成しようとしているか、そして、それが会社、従業員、お役様、コミュニティに及ぼす影響
  • Values (価値): ビジョンを特徴づけ、その指針となる最も重要な価値
  • Methods (メソッド): ビジョンを達成するために実行する必要があるアクション
  • Obstacle (障害): 方法を実行するうえで克服しなければならない課題
  • Measures (基準): 計画をどの程度適切に実行できているかを知るメトリクス

Salesforce では、協力的で可視性の高い全社規模のプロセスで V2MOM を実施しています。役員、部署、そして従業員個人が、互いに連携する V2MOM の要素を採用します。この方法では、基準によって、変更が必要な場合が明確になるため、Salesforce 内での責任が生まれます。

V2MOM の作成方法に関心がある場合は、「組織内の意思統一 (V2MOM)」モジュールを参照してください。

顧客中心文化の形成

お客様の成功は、どれか 1 つのチームや部署に属するものではありません。営業、マーケティング、製品、プロフェッショナルサービス、カスタマーサクセスの各チームがそれぞれ、お客様の成功を実現するための役割を果たします。自社について、次のことを確認しましょう。

  • 適切な種類のリードを引き付けているか?
  • 適切なビジネスの問題を解決するために自社を位置付け、関連製品を販売しているか?
  • 製品を最大限に活用できるようにお客様へのトレーニングを提供しているか?
  • お客様は、必要なときに必要な支援を得られているか?

Salesforce コマーシャル営業およびグローバル戦略部門の Brian Millham は次のように説明しています。

「お客様の成功にまず重点を置くことが成長への道であることは間違いありません。今日獲得した 1 ドルが 12 ~ 24 か月後には 2 倍にも 3 倍にもなります。」

長期的な視点を持ちましょう。異なる部署間での意思統一と透明性を推進しましょう。お客様の成功を喜びましょう。

そして何より、期待を管理しましょう。つまり、約束は控えめにして、期待以上の成果を出し、十分過ぎるほどのコミュニケーションを行いましょう。

カスタマーサクセスチームの編成

お客様の成功によって、あなたの会社の収益が保護され、大きくなるため、既存のお客様を減らすことなくビジネスを拡大できます。経験豊富なカスタマーサクセスリーダーを採用することで、長期的な成長に対する多くの障害を取り除くことができます。AppExchange にアプリケーションがあり、1 人でもお客様がいる場合、そのような専門のメンバーを採用する余裕があれば、それは優れた投資です。最初の数件のお客様には、CEO、営業スタッフ、サポートスタッフが対応することもできますが、最終的には、その人たちの時間は他のことに費やす方が効果的です。

スタッフの追加

会社によってカスタマーサクセスを実装する方法は異なるため、カスタマーサクセスチームも多少異なります。次に示すのは、カスタマーサクセスチームに含まれる可能性がある役割の一覧です。小さい規模から始めて、ビジネスの成長に合わせてチームを大きくしていくことができます。

役割

責務

カスタマーサクセスマネージャー (CSM)

  • お客様にとってのビジネス価値を促進する
  • お客様を支援し、お客様に助言する
  • 業界および製品についての専門知識を提供する
  • 販売後のお客様との関係を管理する

カスタマーサクセスマネージャー — 拡張プログラム

  • 拡張性の高いマルチチャネルプログラムを設計し、メール、Web、コミュニティ、営業、その他のタッチポイント全体でのエンゲージメント活動を通じてカスタマーエクスペリエンスを最適化する

カスタマーサポートエージェント

  • お客様のケース解決を管理し、必要に応じて関係者やスタッフと連携する
  • 複数のお客様で問題が発生していることを示すトレンドを特定する
  • 技術チームや製品チームの優先順位付けを支援するために、重大な問題やトレンドについて連絡する
  • カスタマーセルフサービス、ケースデフレクション、迅速な解決に役立つ解決策コンテンツを作成する

サクセスアーキテクト

  • ソリューションのアーキテクチャおよび設計、パフォーマンス調整、環境管理を提供する
  • 技術的なベストプラクティスアドバイザーの役割を果たす
  • 製品およびリリースに関する認知と計画を管理する

サクセス業務マネージャー

  • カスタマーサクセスチームに適切なデータ、ツール、システム、拡張性のあるプロセスを提供する

更新マネージャー

  • お客様の更新イベントを管理する
  • お客様の離脱を分析および予測する
  • スタッフと協力してお客様の減少に対応する
  • 更新時に収益の増加を促進する
  • お客様と協力して、好ましい支払条件を決定する

カスタマーサクセスマネージャーがすべての業務の中心になります。ただし、何人必要なのでしょうか? 最適な CSM:ARR 比率の答えはありません。チームの規模は、お客様の数と種類や、カスタマーサクセス目標を達成するために必要な作業量によって異なります。

まず、1 人の CSM から始めましょう。定期的に顧客離脱率、収益、顧客数、およびその他のパフォーマンスメトリクスを確認して、リソースの追加を計画します。これをしばらく行うと、収益の何パーセントをカスタマーサクセスに投資するのが適切であるかを見極めることができます。

適切な人材の採用

カスタマーサクセスに関しては、態度がすべてです。どのようなチームを編成する場合でも、採用する人材には次のような資質を求めましょう。

  • お客様の成功達成を支援することへの熱意
  • エスカレーションされたお客様の問題に対応し、プレッシャーがかかる状態で業務を行った経験
  • 戦略的に考え、評価し、分析する能力
  • プロジェクト管理スキル: 組織力、細部への注意力、優先順位を付ける能力
  • チームでの業務と単独での業務の実績
  • エグゼクティブレベルでの優れたコミュニケーションスキルと、大きな組織に対応する能力
  • コンテンツ開発スキル

社内でカスタマーサクセスの基盤を築くには、時間、エネルギー、費用を要します。ただし、最初に行った投資によって、お客様の成功の道のりを支援することが容易になります。その道のりについては、次の単元で説明します。

リソース

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