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AI ユースケースを挙げる

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 適切な AI ユースケースの条件について説明する。
  • 優先順位が付いた AI バックログを作成する。
  • 最初の AI プロジェクトを選ぶ。

ビジネスに AI を導入する

AI には、営業、サービス、マーケティング、リーガル、人事、財務、情報テクノロジー、商品開発、オペレーションなど、企業のあらゆる分野を一新する威力があります。ただし、AI プログラムを成功させるには、ビジネスに適したユースケースを選ぶ必要があります。適切なユースケースとは、組織の目標と合致し、実際的な価値をもたらすものです。AI プロジェクトを慎重に選択しなければ、望ましい成果が得られないことや、場合によっては実装されないことがあります。

では、前出の Coral Cloud が、ユースケースに優先順位を付けた AI バックログをどのように作成するのか見てみましょう。

ユースケースのアイデアを募る

Coral Cloud の AI 委員会はまず、創造力を発揮してユースケースの候補を洗い出したいと考えています。

  • 社内のクラウドソーシング: 従業員に AI のさまざまな用途を試し、アイデアを提出してもらいます。ハッカソンやワークショップを開催する、アンケートを実施する、アイデア交換サイトを立ち上げる、コミュニティ (Slack チャンネルなど) を開設するといった方法で、知識の探求や共有を促進することが考えられます。
  • ビジネスプロセスのレビュー: すべてのビジネスプロセスの詳細な分析を実施して、非効率性、問題点、自動化や AI によって大きな効果が見込まれる箇所を見つけ出します。
  • ユーザー調査: アイデア創出フェーズでユーザー調査チームに参加してもらい、AI ユースケースの候補によってユーザーの実際の問題が解決されることを確認します。
  • データ分析: データエキスパートはパターンを評価してデータを読み解き、AI ユースケースの候補を見い出すことができます。
  • 市場のトレンドとリサーチ: 市場調査を実施してギャップや機会を見つけ、変化する購入者行動を予測して市場のリスクを調査します。競合分析を実施して、競合他社が AI をどのように利用しているか認識すれば、独自の AI ロードマップの長所と短所を評価できます。

多様なユースケース候補を表すカラフルなアイコンに囲まれた電球。アイコンには、チャットの吹き出し、メガホン、虫眼鏡、値札、歯車とレンチ、上向き親指などが示されています。

Coral Cloud の AI リーダーシップチームは、上記の手法を用いてアイデア創出プロセスを開始し、幅広いアイデアを募ります。

Coral Cloud のユースケース

社内全体の包括的かつ協力的なアプローチにより、Coral Cloud は選り抜きの AI ユースケースのリストを作成することができました。その数例を見てみましょう。

部署

AI ユースケース

ビジネス価値

営業

プロスペクティングの自動化: 営業担当の代わりにパイプラインの新規作成、リードのエンゲージや評価、ミーティングの予約などを行って営業担当の業務を補佐する AI エージェントを実装する。

収益が増大する。

売上予測ガイダンス: AI を使用して、売上予測期間の終了時点の営業チームの販売額を予測する。

収益が増大する。

カスタマーエクスペリエンス

センチメント分析: さまざまなチャネル全体のゲストのレビューやフィードバックを分析する AI を実装して、改善点を速やかに認識し、お客様が不満を抱いている場合はアクションを実行する。

ゲストの満足度が向上する。

AI サービスエージェント: リゾートの Web サイトとモバイルアプリケーションに AI エージェントをリリースし、よくある質問や問題に迅速に対処する。

コストが削減され、ゲストの満足度が向上する。

スムーズなチェックイン: AI を使用してゲスト情報を事前に取得して時間を節約し、チェックインプロセスをパーソナライズしてゲストが好みそうなアクティビティや追加サービスを推奨する。

クロスセルのコンバージョン率が上昇し、ゲストの満足度が向上する。

マーケティング

商品のおすすめ: AI を使用してゲストの好みや過去の行動を分析し、リゾートのイベントやアクティビティに関するパーソナライズされたプロモーションや情報を送信する。

クロスセルのコンバージョン率が上昇する。

オペレーション

動的な価格設定: AI を使用して、市場の需要、競合他社の価格、履歴データを分析し、リアルタイムで客室料金を調整する。

収益が増大し、稼働率が向上する。

予測メンテナンス: AI を実装して、リゾートの設備や施設にメンテナンスが必要になる時期を予測する。

コストが削減され、ゲストの満足度が向上する。

上記は Coral Cloud が思い付いた AI の潜在的な用途のほんの一部です。他のアイデアも確認したい場合は、「Salesforce AI Use Case Library (Salesforce AI ユースケースライブラリ)」に職務別の具体例が示されています。

ユースケースを評価する

ここから難関に差しかかります。Coral Cloud は多種多様なアイデアの中から、実際に実装するユースケースをどのように選定するのでしょうか? ビジネスインテリジェンス VP の Alex は、組織の AI 委員会に検討材料について説明します。

ビジネス価値

前述のとおり、理想的なユースケースとは、組織の戦略目標と合致し、具体的なビジネス価値をもたらすものです。この価値は、内部利益率または正味現在価値分析、ROI、回収期間評価、シナリオモデリング、機会費用評価など、各自の組織に適した評価方法で計算できます。必ず各ユースケースの短期的な利益と長期的な利益の両方を考慮します。さらに、既存の投資を活用することを検討します。たとえば、組織に AI ツールが組み込まれたソフトウェアプラットフォームが存在する場合、まずそのプラットフォームに数種のユースケースを実装すれば、ROI が増大するものと思われます。

プロジェクトの成否の測定に使用するメトリクスや KPI を定義することも極めて大切です。プロジェクトによってビジネス成果が向上したことを実証できなければ、将来の AI イニシアティブの推進力を維持することが難しくなります。

実装の容易さ

組織はビジネス価値の計算のほか、AI プロジェクトを実装する難易度も評価します。実装作業を評価するときは、次の点に留意します。

  • 技術的な実現可能性: プロジェクトの複雑性、おおよそのタイムライン、スケーラビリティ、技術要件を考慮します。技術要件には、テクノロジー、インフラストラクチャ、システムインテグレーション、サイバーセキュリティのガードレールなどが該当します。
  • 実務面の準備状況: ユースケースごとに、実装に求められる AI の成熟度や専門知識のレベルが異なります。また、プロジェクトを立ち上げるための変更管理プロセスのコストを見積もり、プロジェクトの規模やスコープ、必要なトレーニングの量、変更に対する抵抗の度合、ビジネスオペレーションが中断する可能性などの要素を比較検討します。
  • データの準備状況: 必要なデータが利用可能かつ高品質で、一元化され、適切に管理されている状態にするために要する労力を評価します。また、ユースケースによっては、データストレージ機能やデータインフラストラクチャのアップグレードが必要になる場合があります。同じデータセットを活用する可能性があるユースケースがあれば、忘れずにメモします。こうしたユースケースを優先すれば、データへの投資からより多くの利益を得ることができます。
  • リスク: AI の初心者である場合は、リスクが低く、影響が大きいユースケースから開始します。ただし、短期に成果をあげることと、リスクは高くても AI トランスフォーメーションやより堅牢で倫理的な AI 実務につながる可能性がある機会のバランスを取るようにします。
  • 役員の賛同: 通常、リーダーシップがユースケースを強く支持している場合は、実装がスムーズに運びます。

Alex と Coral Cloud の AI リーダーシップチームは、すべての AI ユースケースを慎重に評価して、実装する価値があるものを判断します。場合によっては、各プロジェクトが計画フェーズに進んだときに、詳細な調査やデューデリジェンスが実施されることがあります。委員会が AI 計画を立てるときは、各ユースケースの価値とそれに要する労力を見積もるための十分な作業を行います。

優先順位が付いた AI バックログを作成する

Coral Cloud の AI 委員会はユースケースを評価するごとに、それぞれをプロジェクト管理ツールに追加しました。そのため、AI ユースケースの候補がすべて記載されたバックログでプロジェクトを追跡できます。次のステップは、このバックログに優先順位を付けることです。

プロジェクトの優先順位付けにはさまざまな方法がありますが、簡単な方法の 1 つは、ビジネス価値と実装の容易さを比較する影響対労力マトリックスを使用することです。

では、このマトリックスをシンプルなグラフで表した場合に、Coral Cloud のユースケースがどの位置にくるか見てみましょう。

  • 短期的な成果: 四分割図の右上には、少ない労力で高い価値が得られるユースケースが示されます。AI にまだ慣れていない場合は、ここに位置するパイロットプロジェクトから開始します。
  • 容易な成果: 右下には、労力が少なく、価値も低いユースケースが示されます。重要なプロジェクトが完了した後や、障害が解消するまで待機している間にこうしたケースに取り組みます。
  • 大きな賭け: 左上に位置するのは大規模なトランスフォーメーションにつながる可能性があるユースケースで、多大な労力を要し、リスクも高まります。
  • 金食い虫: 左下に位置するのは、労力を要するのに価値が低いユースケースで、実装する価値はありません。

Coral Cloud の 8 つのユースケースを、ビジネスへの影響と実装の容易さという 2 つの軸のグラフにプロットした図

影響対労力マトリックスが各自の組織に適していない場合は、「リソース」セクションに記載されている各種の優先順位付けフレームワークの詳細を確認してください。

最初の AI プロジェクトを選ぶ

優先順位付けの作業を終えた Coral Cloud の AI リーダーシップチームは、数件のプロジェクトは短期間で成果が得られ、価値も高いため、実装に適していると考えました。最初にどのプロジェクトを選択すべきでしょうか?

Coral Cloud は、次の点を念頭にパイロットプロジェクトを選定します。

  • サイズとスピード: 既製の AI ソリューションを使用して 6 か月以内に実装でき、データのクリーンアップやインテグレーションもほとんど必要ない 3 つのプロジェクトに絞り込みます。
  • リスクと成功: リスクが低く、成功の可能性が高いプロジェクトを選択します。測定可能なビジネス成果を示すことができれば、AI プログラムへの支持が高まります。
  • 組織への適合性: 組織の現在の機能やリソースと合致しているのはどのプロジェクトかを検討します。
  • 採用の容易性: ユーザーが AI プロジェクトをどのくらい簡単に採用できるか、どの程度の変更管理を要するかを検討します。
  • スケーラビリティ: 他のビジネスユニットや地域に拡大される可能性があるのはどのユースケースかを検討します。
  • 学習機会: データの処理やインテグレーションなど、AI リリースのさまざまな面の貴重な学習機会となる可能性があるプロジェクトはどれかを検討します。

長い協議の末、AI 委員会は最終的にカスタマーエクスペリエンスチームが提案したチェックインプロセスの合理化を勝者に選びました。Coral Cloud はこの決定を経て、AI トランスフォーメーションへの道を順調に前進していきます。

このバッジを修了したら、「AI + データ: プロジェクト計画を作成する」に進み、Coral Cloud が AI を活用してチェックイン機能を強化するパイロットプロジェクトを計画するために実行した手順を確認します。

AI 計画を進展させる

AI パイロットプロジェクトを実施するメリットの 1 つは、こうした試行で各自の AI 計画をテストし、結果を基に改良できることです。Alex をはじめとする Coral Cloud の AI 委員会のメンバーは、AI プロジェクトを立ち上げた後に必ずその計画を再検討し、四半期ごとに新しいアイデア、目標や要件の変更、AI テクノロジーの進歩に基づいて再評価して優先順位を付け直します。さらにコンプライアンスの目的で、AI をリリースするたびに、AI インベントリを必ず更新しています。

次はあなたの番です! このモジュールで学んだことを活かして、組織が独自の AI 計画を立てられるようにすれば、このテクノロジーの転換期を乗り切り、各自の AI 機能を徐々に進化させるロードマップを作成して、AI で具体的な価値をもたらすことができるようになります。独自性のある AI 計画を作成すれば、AI トランスフォーメーションに一歩近づきます。

リソース

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