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組織の AI ビジョンを打ち立てる

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • AI 計画の概要とその重要性を定義する。
  • 戦略的関係者を特定し、AI センターオブエクセレンスを新設する。
  • 組織の AI ビジョンを打ち立てる方法について説明する。
  • AI を導入する組織の準備状況を評価する。

ビジネスの新境地

AI はビジネスを根底から覆すもので、すでに多大な影響を及ぼしています。今後数年のうちに私たちの働き方が大きく様変わりすることに疑いの余地はありません。今はまだこのテクノロジー革命の黎明期で、多くの組織がどのように導入するか決めかねています。「どのタイミングで AI に切り替えるべきか?」「適切な AI ユースケースをどのように見極めるのか?」「十分な投資利益が得られるか?」「AI に対応できるほどデータが整っているのか?」「リスクについてはどうか?」「組織をどのように進展させていく必要があるのか?」など、さまざまな疑問が渦巻いています。

Coral Cloud Resorts の事例

Coral Cloud Resorts でビジネスインテリジェンス VP を務める Alex Wu は、こうした疑問を幾度となく反芻し、寝付けなくなることもあるほどです。Coral Cloud は世界有数の観光地で高級リゾート事業を展開するホスピタリティ企業です。Alex は自ら AI を試しながら、どうすればホスピタリティ業界を飛躍的に進展させられるか構想しています。

Coral Cloud Resorts のオフィスで、デスク上のラップトップを見ている Alex Wu。窓の外に海辺の景色が広がっています。

Coral Cloud の AI と言えば、随分前に営業部門とサービス部門に数種の予測 AI ソリューションが導入されました。現在、新規のパイロットプロジェクトの予定はありません。Coral Cloud は概して、新たな AI テクノロジーを検討するものの、どのような形で導入するのがよいのか延々と話し合いを続け、調査段階を脱することがありません。Alex は、Coral Cloud には AI に対するビジョンと方向性が欠けているため、AI 計画を打ち出せば、組織が何を達成しようとしているかが明確になるのではないかと考えます。

AI を活用するための秘訣を学ぶ

Alex は突如として、AI の活用の決め手となるものが何なのかに気が付きました。多くの組織は AI のどの点でつまずいているのでしょうか? 大半の企業はこのテクノロジーそのものに気をとられ、AI の取り組みを実際のビジネス目標に結び付けていません。AI プロジェクトによって価値がもたらされ、収益に影響を与えることを実証できなければ、AI に対する組織の盛り上がりが次第に衰えていきます。AI の推進力が消えてしまったら、その後 AI イニシアティブに対する支持を得ることが極めて難しくなるものと思われます。

AI 計画を定義する

AI 計画を立てることが重要なのはこのためです。基本的に、AI 計画とは組織が AI を使ってビジネス価値を実現していく道筋です。このモジュールでは、Alex がその組織で建設的な話し合いを始め、関係者が AI の方向性を定められるようにするところを見ていきます。その中で Coral Cloud は次のことを行います。

  • AI に対する組織のビジョンを定義する。
  • リスクを検証し、AI ガバナンスを確立する。
  • AI ユースケースを挙げて評価する。

このモジュールの単元 3 で、Coral Cloud がユースケースに優先順位を付け、そのうちの 1 つをパイロットプロジェクトに選んで AI 計画をまとめます。ところで、Coral Cloud はそのパイロットプロジェクトをどのようにして実際に本番環境で稼働させるのでしょうか?

このバッジを修了したら、「AI + データ: プロジェクト計画を作成する」モジュールに進み、Coral Cloud が AI プロジェクトで成果をあげられるように計画を立てる方法を学習してください。また、「Data Cloud を Copilot とプロンプトビルダーに接続する」プロジェクトでは、Coral Cloud のシステム管理者が Salesforce にプロジェクトを実装する手順を一緒に実行します。

データ計画を立てる

組織のデータ計画なしに効果的な AI 計画を立てるのは容易なことではありません。データはあらゆる AI システムの基盤であるためです。

データ計画がまだない場合は、データの品質、管理、インフラストラクチャ、一元化、ガバナンス、スケーラビリティなどに関する組織の実務を確立するロードマップを検討することから着手します。確固たるデータ計画があれば、組織が最終的に AI 投資から最大限の価値を得ることができます。データ計画と準備状況についての詳細は、「リソース」セクションを参照してください。

戦略的関係者を結集する

この時点で、AI 計画の作成に向けたさまざまな取り組みを Coral Cloud は一体どのようにとりまとめるのかと疑問に思っているかもしれません。Coral Cloud が AI を活用していくためには、その場限りの取り組みや単発的なソリューションで終わらないようにする必要があることを Alex は心得ています。ここからは、ビジネスにおける AI の戦略的重要性を認識した包括的なアプローチが求められます。

Alex は Coral Cloud の他の役員と協力して、AI センターオブエクセレンスを新設します (評議会、諮問委員会、委員会などと称することもあります)。この目標は、テクノロジー、データ、部門固有の知識、ビジネスのニーズに関する専門知識を備えた多分野のリーダーシップチームを結成することです。この委員会の構成は組織ごとに異なりますが、一般に次の分野のリーダーシップの参加が求められます。

  • ビジネス部門 (営業、マーケティング、サポートなど)
  • 情報テクノロジー
  • セキュリティ
  • エンジニアリング
  • データサイエンス
  • ビジネスインテリジェンス
  • リーガル
  • 財務
  • オペレーション

部門の枠を超えたチームを編成するメリットの 1 つは、コラボレーションが促進されることです。こうした体制を整えれば、個々の部門が作業の重複、インテグレーション、スケーラビリティ、ガバナンス、セキュリティなど、会社全体の懸念事項を考慮せず、独自の断片的な AI ソリューションを推進する可能性が低くなります。さらに、AI ソリューションを開発するテクノロジーチームと、具体的なビジネス目標の達成を目指す部門間の断絶を防ぐことができます。

委員会の責任を明確にする

新たに結成された AI ドリームチームの次のステップは、そのチャーター (趣意書) を定めることです。このチームはどのような責任を担うのでしょうか? 長い議論の末、次の責務を果たすことを取り決めました。

  • 組織の AI ビジョンを定義する
  • 役員の賛同を取り付ける
  • 戦略上の障壁を特定する
  • AI ガバナンスを確立する
  • ユースケースの候補を検討して AI ロードマップを作成する
  • AI とデータのコア機能に関する決定を行う
  • リソースを割り当てる
  • 規模や組織変更を計画する
  • 採用を推進する
  • 成果を確認して計画を進展させる

あなたのセンターオブエクセレンスは Coral Cloud と異なるかもしれませんが、優れたビジネス成果を達成して AI に対する期待を実現するという最終目標は同じです。AI センターオブエクセレンスの新設についての詳細は、「リソース」セクションを参照してください。

集権的な AI 委員会の設置がイノベーションの妨げにならないようにします。そのため、AI 計画に対しては二面的なアプローチを採ることをお勧めします。

  • ボトムアップ: AI へのアクセスについては民主的になり、従業員が AI を試行できるようにします。こうした試行から、テクノロジーに対する関心が高まり、親近感が生まれ、ユースケースの候補を思い付く可能性があります。優れたアイデアを 1 か所にまとめて広めることができます。
  • トップダウン: 全体的な AI 計画を定義し、ビジョンを価値に変えることについては、リーダーシップから指示を出します。

AI ビジョンを定義する

センターオブエクセレンスが設置されたら、Alex は戦略的関係者の全員で AI に対する共通ビジョンを確立するよう働きかけます。グループ全体でビジネス目標を設定し、AI に対する野心についての認識を一致させます。

ビジネス目標を設定する

AI の優先順位がビジネスの優先順位に準じることを認識している Alex は、関係者に今後数年間 Coral Cloud で特に重視されるビジネス目標を見直し、AI を活用できると思われる分野を検討するよう促します。最重要目標は次のとおりです。

  • ゲストの満足度を 15% 向上させる。
  • ホテルの稼働率を 20% 上昇させる。
  • 運用コストを 5% 削減する。
  • クロスセルのコンバージョン率を 15% 高める。
  • 前年より 10% 増の収益成長を達成する。

AI ユースケースに優先順位を付ける際に重要なことは、ビジネスに最大の価値をもたらすのはどのプロジェクトか戦略的にとらえることです。ユースケースの見つけ方と優先順位の付け方についての詳細は、後続の単元で詳しく学習します。

オフィスのコンピューター画面に表示されているカラフルな折れ線グラフと円グラフ

AI に対する野心についての認識を一致させる

次は野心について検討します。「ローマは一日にして成らず」と言いますが、AI ポートフォリオも同じです。Coral Cloud のリーダーシップチームは、AI トランスフォーメーションに対して段階的なアプローチを採ることにします。

  • 短期: 手始めに、生産性を高め、従業員の満足度を向上させる社内のパイロットプロジェクトに取り組みます。既存のワークフローに簡単に統合できる標準の AI ソリューションをカスタマイズして、すぐに試してみます。AI に対する社内の支持を固め、AI ソリューションの採用を促進し、実践を通して学んでからお客様にリリースします。
  • 中期: 従業員やお客様向けに、さらなる作業と AI の成熟度を要するターンキーとカスタムの両方の AI ソリューションを実装します。従業員向けのソリューションでは、フロントオフィスとバックオフィスのユースケースに重点的に取り組むことが考えられます。お客様向けのソリューションでは、パーソナライズや AI エージェントなどを活用することが考えられます。
  • 長期: 研究開発や商品開発に AI を組み込んで、AI が搭載された商品やサービスを構築します。こうしたプロジェクトは膨大な時間と労力を要しますが、うまく行けば形勢を一変させ、競争上の優位性がもたらされる可能性があります。

Coral Cloud では短期的なプロジェクトに過度に注力して、新たな収益機会や業界の現況を打破するイノベーション、新たなビジネスモデルを逃すようなことはしたくないと考えています。そこで、短期的な成果をあげていくと同時に、画期的な変化をもたらす長期計画も立てることにします。

AI を導入する組織の準備状況を確認する

この時点で、Coral Cloud は AI ビジョンを定義していますが、野心的な目標を達成するための適切な人材、プロセス、テクノロジーは揃っているのでしょうか? 組織の AI 成熟度はどうでしょうか?

Alex は MITRE の「AI maturity model and organizational assessment tool guide (AI の成熟度モデルと組織の評価ツールガイド)」(PDF) を参考に、Coral Cloud の AI 成熟度を評価します。その結果、成熟度の面ではまだまだやるべきことがあることが判明しましたが、AI を活用するために組織にどのような変更が必要かを知るうえでこの評価は有益であったと Alex は実感しています。必ず組織の評価を実施して、AI 成熟度の各段階の説明に目を通します。

次の単元では Coral Cloud が、AI の大きな懸念事項であるリスクとその緩和策について検討します。

リソース

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