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適切なソリューションを設計する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • Agentforce プロジェクトのデータ計画を定義する。
  • AI エージェントをチャネルに接続するソリューションを開発する。
  • AI から人間のサービス担当に会話をエスカレーションする条件を指定する。
  • Agentforce プロジェクトのセキュリティ権限を計画する。
  • Agentforce の実装に影響を及ぼす可能性がある Salesforce 固有の要因を挙げる。

目標からソリューションへ

前の単元で、Coral Cloud は自律型 AI ユースケースのビジネス目標を定義し、AI エージェントが実行する作業と成すべきジョブを特定しました。目標が設定されたら、Nora がディスカバリープロセスを開始でき、組織はプロジェクトの要件を収集して記録できます。

エージェントの開発に関する注意事項

どのプロジェクトの成功にも綿密な計画が欠かせませんが、AI エージェントの構築は独特で、実践的なアプローチが求められます。従来のソフトウェア開発では事前に広範な計画と調査を行うことが一般的ですが、AI エージェントの開発では、プロトタイプを作成して継続的に改良していくことが求められます。設計書とスプレッドシートのみで AI エージェントの計画を立てることはできません。

プロジェクト要件を定義しながら、Sandbox 環境で AI エージェントを構築してテストします。さまざまなアプローチを試行し、何が機能して何が機能しないかを見極めます。重要なのは、テストと反復処理を指針に計画や開発を進めていくことです。

ユーザージャーニーを検討する

どのようなテクノロジーソリューションを設計する場合でも、重要なのはユーザー中心のアプローチをとることで、Agentforce もその例外ではありません。Nora とそのチームは、エージェントと、そのエージェントにエンゲージするあらゆるユーザーとの高レベルのやり取りを視覚化します。

ユーザーエクスペリエンスを構想すれば、AI エージェントのプロジェクト要件を把握しやすくなります。たとえば、社内ユーザーは概してエージェントに対する問い合わせが複雑で広範に及ぶのに対し、社外ユーザーのニーズは比較的予測可能です。

Nora とそのチームは大まかなジャーニーマップを書き出し、予約管理のユーザーエクスペリエンスのフェーズとタッチポイントをマークします。ジャーニーマッピングの手法がよくわからない場合は、「ジャーニーマッピング」を参照してください。

技術要件を収集する

AI エージェントの望ましいユーザーエクスペリエンスについてじっくり検討した Coral Cloud のチームは、続いて技術要件の収集に着手します。主として次の分野の要件を検討します。

  • データ
  • チャネル
  • ルーティングとエスカレーション
  • セキュリティコントロール
  • Salesforce の考慮事項

データ計画を定義する

前の単元で、Coral Cloud のチームはユースケースの候補ごとにデータの準備状況を評価しました。チームが予約管理ユースケースを選択した理由の 1 つは、既存のデータで対応できるためです。適切なデータがあれば、AI エージェントの正確性と信頼性が大幅に向上するため、この点は極めて重要です。

ここで Nora は、プロジェクトのデータ要件を確立する必要があります。Coral Cloud は、カスタムオブジェクトを伴うデータモデルを使用して、リゾート全体の予約を Salesforce で管理しています。そのため、こうした予約データのほか、関連する外部データやアップロードされたファイルを使用できることがわかっています。そこで、Salesforce で予約データを監査し、完全性、品質、わかりやすさ、カーディナリティ、一意性、アクセス可能性、最新性、セキュリティ、ガバナンスを評価します。続いて、プロジェクトのデータ計画を定義します

AI プロジェクトのデータ計画の作成方法がよくわからない場合は、「AI + データ: プロジェクト計画を作成する」を参照してください。AppExchange の Cuneiform のような無料ツールを使用すれば、データの技術分析で自分の直感を確かめることができます。

チャネルを指定する

Coral Cloud は Agentforce ソリューションの計画を立てるときに、AI エージェントが動作するチャネルも検討する必要があります。「エージェントは社内外のユーザーとどのようにエンゲージするのか?」「エージェントはユーザーにどのように表示されるのか?」「望ましいエクスペリエンスはどのようなものか?」を検討します。

Web サイトでエンドユーザーとやり取りする AI エージェントを図案化したイラスト

最初の自律型 AI ユースケースで、Coral Cloud はメッセージングチャネル、具体的には会社の Web サイト、WhatsApp、Facebook Messenger から始めることにします。後々電話とメールを追加できます。

Coral Cloud には Experience Cloud の Web サイトがあり、アプリ内および Web のメッセージングを使用しています。アプリ内および Web のメッセージングは、AI エージェントをリリースする予定のすべてのチャネルをサポートしているため、Coral Cloud は Agentforce の実装を順調に進めることができます。

エージェントの設計案をテストしたい場合は、チャネルを設定する前に Sandbox で AI エージェントのプロトタイプを作成できます。ただし、本番環境にリリースする前にチャネル計画を確立し、各チャネルでエージェントのパフォーマンスを綿密にテストする必要があります。

エスカレーションする状況

Nora は、新しい AI エージェントが Coral Cloud の Web サイトやチャットチャネルでお客様とやり取りできるようになることに大きな期待を寄せています。その一方で、状況によっては AI エージェントが人間のサービス担当にエスカレーションしなければならないことも理解しています。サービス担当にエスカレーションする理由として、会社のポリシー、ブランド要件、セキュリティ対策、リスク管理、規制遵守などが挙げられます。

Coral Cloud は計画プロセスで、AI エージェントの作業の途中で人間が判断を下したり監視を行ったりするすべての状況を明らかにします。サービス担当が介入すべき状況とその方法についての明確なガイドラインがあれば、Nora とそのチームがエージェントのプロトタイプを作成するときに、適切なガードレールを設定しやすくなります。(ガードレールについては次の単元で詳述します。)

チャネルルーティング

AI エージェントからサービス担当へのルーティングについて言えば、Coral Cloud は Agentforce プロジェクトがリゾートの現行のチャネルルーティングソリューションにどのような影響を及ぼすかも検討する必要があります。この組織はインテリジェントなルーティングと自動化の目的でオムニチャネルを使用しているため、Nora はすでに、チームが AI エージェントとオムニチャネルのインテグレーションをどのように構築できるか検討しています。

インテグレーションについては、「カスタマーチャネルへのサービスエージェントの接続」ドキュメントの手順に従います。チャネルルーティングソリューションの設定方法は、各自のユースケースや Salesforce 組織の設定によって異なります。

セキュリティコントロールを確立する

ビジネステクノロジー部門の責任者である Nora にとってセキュリティは重要事項で、Coral Cloud が Salesforce Platform 上にテクノロジーソリューションを構築するときは常にセキュリティのベストプラクティスに従います。けれども、これは単なるテクノロジープロジェクトではありません。生成 AI を活用した Agentforce プロジェクトです。

Nora はオンラインで、Agentforce が Einstein Trust Layer をはじめとする Salesforce の堅牢なセキュリティインフラストラクチャをどのように使用しているかについての情報を見つけました。Einstein Trust Layer は、セキュアなゲートウェイを使用し、データ保持ゼロ協定に従って会社のデータを保護します。このことを知って、新しい AI エージェントのセキュリティについての不安が払拭されました。「Agentforce and Einstein Generative AI Security (Agentforce と Einstein 生成 AI のセキュリティ)」ホワイトペーパーをダウンロードして詳細を確認することにします。

続いて Nora は、Coral Cloud の AI エージェントの信頼性を確保するために設定する必要があるセキュリティコントロールを検討します。独自の AI エージェントの計画を立て始めるときは、システム管理者、従業員、お客様、AI エージェント自体の権限やアクセスを検討します。

システム管理者のアクセス

Salesforce で AI エージェントを作成、管理するには、「AIエージェントの管理」ユーザー権限とエージェント種別に必要な権限、または「アプリケーションのカスタマイズ」ユーザー権限が必要です。

従業員のアクセス

社内向けのユースケースで、従業員が Salesforce で AI エージェントとやり取りする場合は、現在ログインしている Salesforce ユーザーのコンテキストでエージェントが実行されます。各ユーザーがアクセスできる内容は、Salesforce の標準のアクセスコントロール (ライセンス、権限、項目レベルセキュリティ、共有設定など) に基づきます。詳細は、「信頼とエージェント」を参照してください。

お客様のアクセス

エージェントを Web サイトなどの外部チャネルにリリースするときは、お客様が認証されている場合を除き、AI エージェントがお客様の代わりに特定のアクションを実行しないようにすることがあります。たとえば、Web サイトにアクセスした人は誰でもエージェントに商品について質問することができます。その一方で、注文に関してサポートが必要な人は、まず認証を受ける必要があります。

Agentforce の認証ソリューションをどのように設計するかは、特定のユースケースのセキュリティ要件や ID 要件によって異なります。詳細は、「Maintain Trust with Agentforce Actions (Agentforce アクションを使用した信頼の維持)」を参照してください。

エージェントのアクセス

セキュリティの最後の要素はエージェントユーザーです。サービスエージェントなど一部の AI エージェントはエージェントユーザーとして機能するため、Salesforce にはエージェントユーザー専用のユーザープロファイルとロールが用意されています。AI エージェントが実行可能なアクションは、割り当てられた権限によって異なります。

デフォルトでは、エージェントユーザーに限定的な権限セットが付与されます。セキュリティの観点から言えば、これは最小権限の原則に従っているため好ましいことです。その一方で、AI エージェントを設定するときに、エージェントが作業を実行するために必要なすべての権限を特定して付与しなければなりません。さもないと、エージェントが正常に機能しないためです。AI エージェントが実行可能な内容と AI エージェントがアクセスできるデータを制御する方法を確認するには、「エージェントユーザー権限のベストプラクティス」を参照してください。

Salesforce でエージェントの権限を設定する場合、初めから適切に設定できる可能性は低いため、エージェントのプロトタイプを作成するときに Sandbox でセキュリティコントロールをテストします。「Set Up Agent Permissions (エージェント権限の設定)」動画 (6 分 03 秒) で、エージェントのアクセスに関するデモをご覧いただけます。

Salesforce の考慮事項

Salesforce の既存のお客様については、孤立した AI エージェントを構築するわけではありません。AI エージェントは、Salesforce の現在の設定やアーキテクチャと共存する必要があります。以下は、Agentforce の実装に影響を及ぼす可能性がある Salesforce 固有の要因です。

ライセンスとプロビジョニング

Agentforce プロジェクトはそれぞれ異なるため、各自のプロジェクトに必要な Salesforce 製品や機能もユースケースごとに異なります。構築する AI エージェントに固有のライセンス要件について、Salesforce のアカウントエグゼクティブに確認することをお勧めします。

請求と使用量

Agentforce はコンサンプションベースの料金体系を採用しています。使用量に応じた請求方法についての詳細は、「リソース」セクションにリンクされているドキュメントを参照してください。また、契約書を参照するか、アカウントエグゼクティブに問い合わせることもできます。

要件

Agentforce を使用する場合は、Salesforce 組織で以下の製品や機能が有効になっている必要があります。

  • Lightning Experience
  • Einstein 生成 AI
  • Data Cloud

組織と環境

組織と環境については、次の点を考慮します。

  • いくつの Salesforce 組織がこの Agentforce プロジェクトの影響を受けるか?
  • Sandbox 環境で Data Cloud が有効になっているか?
  • AI エージェントをメッセージングやアプリ内チャネルにリリースする場合、現行のチャットソリューションは何か?
  • エージェントの開発を Sandbox と本番環境のどちらで開始するか? 通常は、最初に Sandbox で作成してテストするとコストを削減できます。

Einstein ボット

Salesforce 組織に Einstein ボットを実装している場合は、次の点を検討します。

  • 現在、ボットをどのように使用しているか?
  • パフォーマンスをどのように測定しているか?
  • 生成 AI で改善したいと思っている具体的なビジネス成果はあるか?
  • ボットを AI エージェントに置き換えることを検討しているか?

既存の自動化

Agentforce では、AI エージェントが特定のタスクを遂行するためにエージェントアクションをツールとして使用します。こうしたエージェントアクションは、フロー、Apex、プロンプトテンプレートなど、既存の Salesforce Platform テクノロジーを基盤に構築されています。各自のユースケースに関連する既存の自動化のうち、AI エージェントで再利用できる可能性があるものをカタログにまとめます。

Nora は、Coral Cloud の新しい AI サービスエージェントの要件を綿密に検証しました。次は、組織でプロジェクトに付随するリスクを評価し、ガードレールとガバナンスを検討します。

リソース

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