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保管チェーンを管理する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 先進治療管理での保管チェーンの重要性を説明する。
  • 保管チェーンと Life Sciences Cloud の ID の連鎖の違いを説明する。
  • 保管チェーンイベントをカスタマイズする方法を説明する。

整合性と安全性を確保する

これまでの単元では、治療オーケストレーションや複数ステップスケジュールといった強力なツールを使用して患者の先進治療ジャーニーを管理する方法を見てきました。ただし、治療の整合性と安全性を確保するには、効率的な連携だけでは十分ではなく、綿密な追跡と説明責任が必要です。

採取から点滴への複雑なジャーニーにおける貴重な荷物としての患者の細胞について考えてみましょう。すべてのステップは保管チェーン内で綿密に記録する必要があります。保管チェーンは、各患者の固有の生体物質の所在地と処理を示す継続的なレコードです。このプロセスは、透明性、説明責任、さらに最終的には患者の安全を保証するために、世界中の規制機関によって義務付けられています。

先進治療管理では、ライフサイエンス組織がこの重要な要件を満たすための堅牢な保管チェーン機能と ID の連鎖管理が提供されます。保管チェーンには、すべての引き継ぎ、変更、署名が記録され、治療ジャーニーの動かぬ証拠となります。一方、ID の連鎖では、採取した生体試料に一意の ID を割り当てることで、患者に適切な治療を提供できるようにします。システム管理者はどのイベントが保管チェーンの更新をトリガーするかや、必要な電子署名のレベルを設定でき、制御性と柔軟性が高くなっています。

保管チェーンを確保する

先進治療管理で重要な保管チェーンがどのように管理されるかを知るために、もう一度 Charles Green を見てみましょう。現在、彼の CAR T 細胞療法はアフェレシスフェーズにあります。

保管チェーンのデータモデルは非常に単純です。関係する主なオブジェクトを確認しましょう。

保管チェーンオブジェクトとケアプログラムオブジェクトとのリレーション。

オブジェクトの概要を次に示します。

オブジェクト

説明

シナリオ

Custody Item (保管項目) (1)

このオブジェクトは保管チェーン内の項目に関する情報を表します。プロセス全体を通じて一意の ID の連鎖を維持するには、一意の識別子を追加します。

Charles は Oncarta 治療プログラムに登録し、彼のケアプログラム加入者レコードにリンクする一意の識別子が割り当てられます。

この識別子はデジタル指紋として機能し、彼の細胞が他の患者のものと混同されないようにします。

Custody Chain Entry (保管チェーンエントリ) (2, 3, 4)

このオブジェクトは保管チェーンのエントリまたはイベントに関する情報を表します。

アフェレシスフェーズで、StayHealthy チームは Charles の血清学的レポートを作成し、アフェレシス採取を記録し、採取サマリーを生成します。

保管レコードは治療オーケストレーションの一部として自動的に作成できるため、チェーンの複雑さと柔軟性が大幅に高まります。事前作成済みフローを使用すると、治療オーケストレーションと保管チェーンの要件をシームレスにリンクできます。

主なフローと、それが保管チェーンとどのように関係するかを次にまとめました。各フローをクリックすると詳細が表示されます。

保管チェーンイベントをカスタマイズする

すべてのイベントに保管チェーンレコードが必要なわけではありません。先進治療管理チームは、治療オーケストレーションのどのフェーズ、ステップ、ToDo が保管チェーンイベントをトリガーするかを正確に指定できます。このように細かく設定できることで、規制コンプライアンスを維持しつつ、特に重要な情報のみを保管チェーンに取得でき、不必要に煩雑になることがありません。

たとえば、アフェレシスフェーズ中に StayHealthy は 2 つのステップ、[Before Collection (採取前)] と [After Collection (採取後)] を作成します。それぞれのステップには独自の ToDo セットが含まれています。

ステップ

ToDo

保管チェーンイベントか?

Before Collection (採取前)

Serology Report (血清学的レポート)

はい

Print Documents (ドキュメントを印刷)

いいえ

During Collection (採取中)

Collection Start (採取開始)

はい

Collection End (採取終了)

はい

Collection Checklist (採取チェックリスト)

はい

Collection Summary (採取サマリー)

はい

[Before Collection (採取前)] ステップには 2 つの ToDo が含まれていますが、保管チェーンが必要なのは [Serology Report (血清学的レポート)] ToDo のみです。[During Collection (採取中)] ステップには 4 つの ToDo が含まれています。ただし、[Start (開始)]、[End (終了)]、[Checklist (チェックリスト)] ToDo は 1 つの保管チェーンエントリにまとめられ、[Collection Summary (採取サマリー)] ToDo には固有の保管レコードが必要です。

さらにフローと決定表をカスタマイズすれば、保管チェーンの検証に署名が必要なシナリオに対応できます。保管項目に検証が必要な作業指示、作業指示手順、ToDo のそれぞれに対してデジタル検証設定を作成します。このレコードは署名履歴として機能し、必要な署名数を設定すると共に指定検証者が特定の順序でレコードに署名する必要があるかどうかを決定します。たとえば、次のスクリーンショットは、アフェレシス採取中に Charles の ID を確認する設定を示しています。

患者の ID を確認するデジタル検証設定

アフェレシス採取を記録するために、StayHealthy はデュアル署名を必要とする並列検証を設定します。この場合、2 つの署名が必要であり、その署名は特定の順序で署名される必要があります。

次に、保管検証種別の上書きレコードを作成します。このレコードによって署名履歴が適切な作業種別の詳細にリンクされ、その延長として保管チェーンエントリにもリンクされます。たとえば、StayHealthy はアフェレシス採取を記録するための上書きレコードを作成します。

患者 ID の確認に対して指定されている [Custody Verification Type Override (保管検証種別の上書き)] レコード。

このレコードはアフェレシスを記録するための検証設定レコードにリンクされます。また、ToDo に関連する適切な作業手順、作業種別、作業種別設定にもリンクされます。看護師と治療センターの医師がアフェレシス採取を検証すると、専用の保管チェーンエントリにその検証に関するすべての詳細が保存されます。

署名種別が追加されたアフェレシスフェーズの 2 つのステップの保管チェーン設定の例を次に示します。

ステップ

ToDo

署名種別

署名者 1

署名者 2

Before Collection (採取前)

Serology Report (血清学的レポート)

単一

アフェレシス看護師

Print Documents (ドキュメントを印刷)

During Collection (採取中)

Collection Start (採取開始)

デュアル

アフェレシス看護師

治療センター医師

Collection End (採取終了)

デュアル

アフェレシス看護師

治療センター医師

Collection Checklist (採取チェックリスト)

デュアル

アフェレシス看護師

治療センター医師

Collection Summary (採取サマリー)

デュアル

アフェレシス看護師

治療センター医師

各 ToDo の署名設定に注目してください。

  • [Serology Report (血清学的レポート)] に必要な署名は 1 つだけで、アフェレシス看護師に割り当てられています。
  • [Print Documents (ドキュメントを印刷)] ToDo には署名は必要ありません。
  • 3 つの採取 ToDo は 1 つの保管チェーンイベントにまとめられ、アフェレシス看護師と治療センター医師の両方からのデュアル署名が必要です。
  • [Collection Summary (採取サマリー)] ToDo にも看護師と医師からのデュアル署名が必要です。

別のワークフローを必要とせずに現地の規制を満たすために、組織は保管チェーンイベントと署名の要件に国固有の上書きを指定することもできます。たとえば、表示ラベル検証フェーズに、ある国ではデュアル署名が必要で、別の国では保管チェーンイベントすら必要ないということがあります。決定表を簡単にカスタマイズしてこのようなルールを管理できます。

コンプライアンスとレポートについて知る

最後に、コンプライアンスと監査に確実に対応するために、先進治療管理では、患者の詳細な保管チェーンレポートを生成できます。このレポートは、すべての保管チェーンレコードをまとめた治療ジャーニー全体の包括的な概要となっています。カスタマイズ可能なレポートオプションを使用すれば、具体的な規制要件や内部のニーズに合わせて表示する情報を変えることができます。

まとめ

細胞を採取した瞬間から最後の点滴に至るまで、Charles の CAR T 細胞療法のジャーニーは綿密に追跡、検証されました。治療オーケストレーションはシームレスに連携し、複雑な治療計画が効率的にスケジュールされ、保管チェーンが正確に文書化されたことで、Charles の命を救う治療が安全かつ効果的に提供されました。

とぎれがなく適応性が高い保管チェーンを維持することで、先進治療管理の透明性を確保し、信頼を高めることができます。患者の治療のすべてのステップが綿密に文書化されていること、すべての引継ぎが確実に行われていること、治療の整合性が損なわれることがないことが保証されます。

このバッジでは、協働的治療を理解してから、治療オーケストレーションフレームワーク、複数ステップスケジュール、保管チェーンと多くの内容を学習しました。さらに具体的な設定と実装についての詳細は「リソース」セクションを参照してください。

リソース

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