排出量予測入門
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 予測プロセスの主な技術的コンポーネントを挙げる。
- Net Zero Cloud の高度な取引先販売予測について説明する。
- データ処理エンジンジョブテンプレートを定義する。
- Net Zero Cloud の予測データフローについて説明する。
Net Zero Cloud の予測について知る
Northern Trail Outfitters (NTO) は気候変動の問題にも取り組む急成長の小売企業で、Safiya Rees はその Salesforce システム管理者を務めています。Sam Rajan は NTO の最高サステナビリティ責任者です。
Safiya が Net Zero Cloud 組織を設定して、サプライチェーン全体の温室効果ガス (GHG) 排出量を追跡、分析、報告できるようにしています。また、Sam が排出量を分析できるように、NTO の Climate Action ダッシュボードも設定しました。
Sam が Net Zero Cloud で、NTO に求められる科学的根拠に基づく目標を設定しましたが、この目標にどのくらい近づいているかを確認する手段が必要です。彼は Net Zero Cloud の予測機能を使用して、正確な予測を生成し追跡したいと考えています。この機能では、計画的な排出削減イニシアチブに基づいて予測を調整することもできます。Sam は Safiya の助けを借りて予測を設定することにします。
このモジュールでは、Safiya が予測プロセスの技術的コンポーネントを調べ、Net Zero Cloud に予測を設定し、予測がどのように計算されるのか学習するところを見ていきます。さらに、Sam が予測結果をどのように読み取って調整するのかも確認します。
Net Zero Cloud の予測プロセスには、主な技術的コンポーネントが 2 つあります。
- 高度な取引先販売予測
- データ処理エンジンジョブテンプレート
Safiya は各コンポーネントについて調べてみることにします。
高度な取引先販売予測
Net Zero Cloud では、Manufacturing Cloud の高度な取引先販売予測コンポーネントが使用されます。予測の基本設定は、デフォルトの予測セットであるサンプル排出量予測セットの標準設定をそのまま利用できます。
では、サンプル排出量予測セットに含まれる主なデータを見てみましょう。
期間グループ: 予測を生成する期間の詳細を定義します。排出量予測のサンプル期間グループは、Net Zero Cloud のデフォルトの期間グループです。この設定では、15 年分の予測と過去 7 年分の履歴データを保存できます。Net Zero Cloud では年単位の予測のみがサポートされています。
ディメンション: 予測を生成する対象を定義します。Net Zero Cloud では、会社全体の排出活動に対する予測が年単位で計算されます。
排出活動には 3 つのレベルがあります。
- 最下位レベルの排出活動には、排出を生成する資産や活動 (スコープ 3 出張など) が該当します。
- 中間レベルは、最下位レベルの排出活動が属するスコープカテゴリ (スコープ 3 など) です。
- 最上位レベルの「すべての排出」は、会社の総排出量を表します。
排出活動は GHG Protocol Guidance (GHG プロトコルガイダンス) に基づいて、排出活動オブジェクトで事前定義されています。新しい排出活動を追加したり、既存の排出活動を変更や削除したりすることはできません。すべての排出活動のリストは、「排出活動と排出量スコープカテゴリ」を参照してください。
基準: 排出量予測に関連する一連の評価指標を定義します。
基準は年間の排出活動ごとに設定できます。次の 5 つの基準種別のいずれかになります。
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ビジネス評価指標: 排出量予測を計算する場合の主な入力係数で、収益や延床面積などがこれに該当します。排出活動はそれぞれビジネス評価指標に関連付けられます。たとえば、出張の予測は収益に基づいて計算されます。また、スコープ 2 商業ビルに関連する排出量の予測は延床面積に基づきます。排出活動ごとにビジネス評価指標の値を指定する必要があります。
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目標: 予測プロセスで、排出削減目標レコードから取得した目標排出量の値が自動入力されます。この例として、目標排出量や目標補正排出量などが挙げられます。排出削減目標レコードは、科学的根拠に基づく目標機能を使用して作成されます。排出活動に目標が定義されていないことがあり、その場合は目標が空白のままになります。
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実際: 予測プロセスで、年間排出インベントリレコードから取得した実際の排出量の値が自動入力されます。この例として、実際の排出量や実際のエネルギー消費量などが挙げられます。年間排出インベントリレコードは、科学的根拠に基づく目標機能を使用して作成されます。予測プロセスでは、前年度の年間排出インベントリレコードの実際の排出量データが使用されます。
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予測: 予測プロセスで計算された予測結果の値が自動入力されます。この例として、予測排出量や予測排出原単位などが挙げられます。一部の予測基準は手動で更新して、予測結果に影響を与えたり、導出された予測を上書きしたりすることができます。予測の例として、計画済み事業排出量削減や予測排出量上書きなどが挙げられます。
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カーボンクレジット関連: 予測プロセスで算定されたカーボンクレジット関連の予測結果の値が自動入力されます。たとえば、必須カーボンクレジットはカーボンクレジット関連基準です。一部のカーボンクレジット関連基準 (計画済みカーボンクレジット、カーボンクレジットコストなど) は手動で更新して、予測されるカーボンクレジットに影響を与えたり、カーボンクレジット投資を計算したりすることができます。
「基準種別」に、使用可能な基準の種別ごとのリストが記載されています。
基準グループ: ユーザーインターフェースで選択した基準を絞り込んで表示する基準のグループを定義します。Net Zero Cloud には 4 つの基準グループが事前定義されています。必要に応じて、追加の基準グループを作成できます (この点は次の単元で詳述します)。
予測結果: 予測の期間や予測ディメンションなどのメタデータを保存します。排出量予測結果は、Net Zero Cloud のデフォルトの予測結果オブジェクトです。
高度な取引先販売予測について理解した Safiya は、データ処理エンジン (DPE) ジョブテンプレートも調べてみます。
データ処理エンジンジョブテンプレート
Net Zero Cloud には 3 つの標準 DPE ジョブテンプレートが用意されています。
- 排出量予測の初期化
- 排出量予測の計算
- 排出量予測の再初期化
テンプレートはデフォルトで無効になっています。DPE ジョブを実行するには、テンプレートをコピーして有効にする必要があります。では、各テンプレートの詳細を見ていきましょう。
排出量予測の初期化
このテンプレートは、サンプル排出量予測セットの設定情報を使用します。このテンプレートを実行すると、排出量予測結果レコードのメタデータまたは構造が作成され、各行に排出活動、年、基準が記載されます。
このテンプレートから次のレコードも作成されます。
- 高度な取引先販売予測セットパートナーレコード。このレコードは [高度な販売予測] ページへのエントリポイントになります。
- 排出量予測結果レコードの構造に基づく、[高度な販売予測] ページの予測グリッド。
このテンプレートでは排出量予測結果レコードのみが初期化されるため、予測グリッドの基準が空白で、予測データはありません。
排出量予測の計算
このテンプレートでは次の処理が実行されます。
- 年間排出インベントリレコードから実際の排出量、前年度の排出削減目標レコードから目標排出量が取得され、予測計算に影響を与えるビジネス評価指標やその他の基準値も取得される。
- 排出量予測とカーボンクレジットが計算され、排出量予測結果レコードの関連する基準が更新される。
- 予測グリッドに目標、実際、予測、カーボンクレジット関連の基準の値が入力される。
Net Zero Cloud の排出量予測計算は原単位に基づきます。
排出量予測の再初期化
このテンプレートを実行すると、既存の排出量予測結果レコードが削除され、新しい排出量予測結果レコードの構造が再作成されます。ユーザーインターフェースの予測グリッドも再初期化されます。
期間グループ定義が変更された場合は、このテンプレートを実行する必要があります。たとえば、予測期間を変更する場合や、前年度の終わりに予測期間をもう 1 年延長する場合は、このテンプレートを実行します。
このテンプレートを実行すると、排出量予測結果レコードの構造に更新後の期間グループ定義が反映されます。
Safiya は、主な技術的コンポーネントについて理解した内容をダイアグラムに表します。
予測プロセスのコンポーネントを確認した Safiya は、続いて Net Zero Cloud の排出量予測のデータフローについて調べることにします。
予測のデータフローを確認する
予測プロセスのデータフローの出発点は、エネルギー使用量レコードです。このレコードで、資産排出源のエネルギー消費量データとその排出量が取得されます。続いて、エネルギー使用量レコードの排出量が、関連するカーボンフットプリントレコードに積み上げ集計されます。
すべてのスコープの 1 年間のカーボンフットプリントレコードが、年間排出インベントリレコードに集計されます。排出量予測の計算 DPE ジョブは、このレコードの排出活動別の実際の排出量データと、排出活動に指定したビジネス評価指標の基準を使用して、排出量を予測します。このジョブでは、調整や上書き基準も考慮されます。予測が、科学的根拠に基づく目標レコードの目標基準と比較されます。さらに、排出量予測結果レコードに、予測とカーボンクレジット関連の基準の値が入力されます。
この単元では、Net Zero Cloud の予測プロセスの技術的コンポーネントと、予測プロセスのデータフローを確認しました。次の単元では、Safiya が排出量予測を設定して生成するところを見ていきます。
リソース
- Trailhead: Net Zero Cloud の基本
- Trailhead: Configure a Net Zero Cloud Org (Net Zero Cloud 組織の設定)
- Trailhead: Net Zero Cloud Analytics の設定
- Trailhead: Net Zero Cloud を使用した資産のカーボンアカウンティング
- Trailhead: Net Zero Cloud を使用したスコープ 3 のカーボンアカウンティング
- Trailhead: Net Zero Cloud を使用した科学的根拠に基づく目標設定と排出量予測
- Trailhead: Manufacturing Cloud による高度な取引先販売予測
- Salesforce ヘルプ: 排出量予測
- 外部: Greenhouse Gas Protocol Guidance (温室効果ガスプロトコルガイダンス)